「……ぁ、あなた、だれですか?」
首が絞まってそのままちぎれちゃったのかと思った。
何より大切な人にこれまでの思い出を否定されたら、こんなに苦しいものなんだ。
もうなんでなんでって情けなく泣いて怒鳴ってしまいたかったけど、終いにしたかったけど! あたしは知ってる。あんたが生きてなかったら、あの事件から奇跡的に助かっていなかったら、きっともっと痛かった。
「あんたの、味方だ。」
きょとんとしながら「僕の……?」と躊躇いがちに返すあんたは、もうすっかりあたしのことを知らないあんただった。ならば、それならば。
「ね、またさ。友達になろうよ。」
「ともだち」
「うん。」
あんたは長考の末、あたしが差し出した手を取る。この苦しみが無くなる日は案外近いだろう。
あなたは誰
「こっちだ」
お兄ちゃんの声が聞こえた気がした。
私は走り出す。
お兄ちゃんが最後に目撃された森の中は鬱蒼としていて、気味が悪くって、頑張って捜索を続けていたけどもう今日は帰ろうだなんて弱気になっていた時にその声は聞こえた。
「おっ、おにいちゃん、どこ、どこなの!」
ガサガサと茂みを掻き分けて声の出処を探す。葉っぱが手にちくちくと刺さって痛かったけれど気にならなかった。お兄ちゃんが居なくなってからお母さんが笑わなくなったことの方がずっと痛かった。
絶対にお兄ちゃんを見つけるんだ、私はぐっと決意を固めて、茂みの奥へ飛び出して──!
真っ逆さまに落ちていった。
「……?」
そらがみえる。
どうして……? 何がどうなったの……? なんだか………………………………いたい……………………………………。
「おにいちゃあ……どこに、いるの……」
どこに
どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、ど
「こっちだ」
君の声がする
「みんながいてくれて良かった。あのね、──。」
いちばん努力したのも、誰より傷ついたのも、得たものと同じくらい失ったのもあんたのに。
なのに、あんたがそんな顔でそんなことを言うのはずるいだろ。
あぁ、もう……
「こっちのセリフだっっっ、バーーーーーーーーーカ!!!!!!!!!!!」
ありがとう
よく晴れてて気持ちのいい風が吹いていた。気温も低くも高くもなく、ちょうどいいあたたかさ。外を見れば真っ白な雲がゆったりと散歩をしているけれど、お日様は僕達を優しく照らしてくれていた。今日は洗濯物がよく乾きそうだ。
そう、今日は何もかもが心地よくて……なんというか、気持ちが良かった。満たされていた。
これで横にあの子がいてくれたりしたら堪らないほど幸せなのだけど、なんということだろう。どういった奇跡か、僕の隣には既にあの子が擦り寄ってきている。ふわふわの毛並みを僕に一生懸命押し付けて、「撫でろ」と全身で伝えてきていて。
背中をなぞる様に撫でてやれば、ごろんと転がりお腹を見せて、ぐいっと伸びをする。
その姿を見て満たされたものが溢れた時に、ポロッと出てきた幸せを、僕はどうせならかわいいこの子に送ることにしたんだ。
「……あいしてる」
そっと伝えたい
希望を届けよう、光を届けよう。
きっと大丈夫だって伝えるよ、きっと夢は叶うって抱きしめるよ。
こけてしまったってかまわない、辛くたってかまわない。
もっと、もっと、もっともっと高くまで、遠くまで……
遠いところにいるきみのところまで、私が照らしてみせるから!
遠く....