ミヤ

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2/23/2025, 1:45:35 PM

"魔法"

ふわりふわりと。
空から雪の欠片が舞い降りる。
無数の雪片は、まるで星が降るようで。
無心で、いつまでも眺めていられる。
吐き出した吐息は白く、指先はかじかみ赤くなっていたが、陽が落ちて辺りが暗くなるまで雪を鑑賞していた。

静まり返った廊下に自分の足音だけが鈍く反響する。
回廊の電灯は既に消え、しかし、差し込む月光によって意外なほどに明るい。
青く滲むような夜にはらはらと降る雪の影が混ざる様子は、一幅の絵を想起させた。

トン、トン、と音を立てて階段を降りる。
普段は自分の音は最小限にすることが癖になっているけれど、たまに大きな音を立てたくなる。
一歩を踏み出す毎に広がる色の波を見ると、自分がまだちゃんとこの世界に存在しているのだと実感できるから。
最後の一段は軽くジャンプ。
ざらりとした地面の感触を音で認識する。
色と、音に満ちた視界は狂っているのかもしれない。
窓から落ちる月の光を踏めば、まるで降り続ける雪の中に立っているような、魔法のように不思議な感覚に囚われた。

久しぶりに勝ち取った連休は、思いがけず雪見の一日となった。たまにのんびり過ごすのも悪くない。
悪くないどころか、むしろもっと休みたい。
休みを下さい。

2/22/2025, 1:15:03 PM

"君と見た虹"

よく晴れた日の昼下がり、玄関の覗き穴に陽が射すと円形の綺麗な虹ができる。
わざわざ電気を消して。
そっと手を翳して。
虹の欠片を手に入れたと、嬉しそうに口元を綻ばせる貴女を見るのが好きだった。

虹の袂にはレプラコーンの宝物があるという。
どんなに素晴らしいお宝であっても、虹をその手に握りしめる貴女には敵わないだろう。

2/21/2025, 3:35:09 PM

"夜空を駆ける"

空一面の星を見た。
パチリと瞬くたびに景色が入れ替わる。
春夏秋冬。
赤く、青く、白く燃える、昔々の星の光。
冷たく冴え冴えとした音がドーム型の会場を幾度も跳ね返り、それ自体が意思を持って夜空を駆け回っているようだった。

やがて公演時間が終わり、明るくなったプラネタリウムはただただ無機質で。
あの静かで騒がしい、不思議な時間が終わってしまったことが惜しく思えた。

2/20/2025, 2:43:15 PM

"ひそかな想い"

目の前で泣くのを我慢している人を見て思う。

とっても可哀想だね。
悲しいね。
でも、僕にはいらないや。
誰か他の優しい人に慰めてもらえたらいいね。

2/19/2025, 2:02:21 PM

"あなたは誰"

車窓に映る自分を見て、すぐに視線を逸らす。
押し込めた色が溢れて無様に顔を塗り潰す、のっぺらぼうの自分。
あぁ、本当に気持ち悪い。

こんな自分になりたかったわけじゃない。
けれど、こんな自分にしかなれなかった。

物語の主人公だとか、英雄だとか、そんな大層なものじゃなくていい。
それでも
自らを削り落とす過酷の中で、
誰かのために微笑えるような
誰かのしあわせを願えるような
そんな誰かさんになってみたかったなぁ。

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