ミヤ

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1/26/2025, 2:39:00 PM

"わぁ!"

自分が写っている写真が嫌いだ。
原因は分からない。
引き取られた先で祖父母に延々とあの子に似ていると言われ続けたからかもしれないし、単純に自分が嫌いだからかもしれない。写っている姿が得体の知れないナニカに見えて、気持ち悪い。
作り笑いでも無表情でも、自分が写っていると思うと、"わぁ!"と叫び出したくなる。
学生時代の卒業アルバムは貰ったその日に捨ててしまった。
でも、自分のいない写真は好きだし、写真を撮るのも好きだ。だから手持ちのアルバムは、ほぼ貴女の写真集と化している。

本棚の整理をしていると、昔のアルバムを見つけた。懐かしくなってパラパラめくっていると、最後のページに撮った覚えのない写真が挟まっていた。
以前貴女を待っている時に、いきなり写真を撮られたことがあった。僕に見せないなら、という条件で、渋々残すことを了承したやつだと思う。
手を伸ばした状態で、悪戯っぽく笑ってカメラ目線の貴女と。驚いた顔をして画面に納まる僕が、一緒に写っていた。

どうしようか迷って、結局そのままにしてアルバムを閉じる。
ずるい。
貴女との写真を、僕が捨てられるはずがないじゃないか。

1/25/2025, 12:04:42 PM

"終わらない物語"

"終わらない物語"という言葉を考えていたら、
"一条(ひとくだり)の物語"という言葉が浮かんできた。
あまり使わない言い回しだから古典か近代文学辺りだと思うんだけど、読んだか聞いたかした話のタイトルが思い出せない。
いつしか自分自身がひとくだりの物語になっていた、みたいな感じの文章だった気がする。
今は凝った文章を書く人も多いから、意外と最近の作品なのかも。漫画や朗読の可能性も否定できない。
検索しても出てこないし、何だったかなぁ。

たまにこういう事がある。
なにかの拍子にふと言葉や音が浮かんできて、ひたすら頭の中をぐるぐる巡って占拠するから堪らない。
思い出すか、もう一度忘れるまでひたすらもどかしい思いをすることになる。
まぁこうやって考える機会があるなら、読み終えた物語であっても自分の中では終わらない物語と言えるのかもしれないな。

追記
思い出した。
泉鏡花『夜叉ヶ池』だ。
晃の台詞で、「ところが、自身…僕、そのものが一条の物語になった訳だ。(中略)…君もここへ来たばかりで、もの語の中の人になったろう…僕はもう一層、その上を、物語、そのものになったんだ。」
という文章があった。
文豪の作品は印象的な台詞回しが多くて、部分的にでも記憶に残るんだよな。

1/24/2025, 11:56:25 AM

"やさしい嘘"

いつかの貴女は冗談っぽく、
もしわたしが先に逝ったらあの世からずっと君を見守ってあげる、と言っていた。
だから浮気は駄目だし、あんまり早く逢いに来ようとしたら追い返すからね、と笑っていたっけ。

ごめんね。
天国も地獄も信じていないけど。
もう少しだけ、貴女のやさしい嘘に溺れていたいんだ。

1/23/2025, 12:12:05 PM

"瞳をとじて"

瞳をとじて、神に祈る。
居もしない神に縋る気持ちは分からない。
だけど、
死を選ぶ程の絶望は、きっと、理解できる気がした。

最期まで誰かの手を煩わせるなんて、御伽話と違って現実は世知辛い。泡のように綺麗に消え去ることなんて、出来やしないんだ。
冷たくなっていく彼女の隣で、窓越しの空が徐々に白んでいくのを、ぼうっと眺めていた。

1/22/2025, 2:51:52 PM

"あなたへの贈り物"

記念日や誕生日等、贈り物をする機会は沢山あった。けれど、贈り物を選ぶ時はいつも、これじゃないという感覚が拭いきれなかった。

なにか特別で、ワクワクして、綺麗で、繊細で。
思いがけないほど不思議な、魔法みたいに素敵な何かを貴女に贈りたくて。
百貨店やデパートを何軒も見て回り、こんなにも沢山の品物があるのに貴女に贈りたい物が見つからない、と焦りが募る。
何ヶ月も前からリサーチしていても、もっと相応しいものがあるんじゃないかと迷って、結局ギリギリまで悩むことが多かった。

貴女がくれるものはいつも僕を喜ばせてくれるのに、僕は貴女が何を渡せば一番喜んでくれるのか分からない。
きっと、貴女は好みの物じゃなくても笑って受け取ってくれるだろう。
でも、僕自身が納得できるものを選びたかったんだ。

相手のことを想って贈り物を考える。
それ自体が幸せだったと、今ならそう思える。

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