君が見た景色
君が最後に見た景色はどんな景色だったんだろうか。
機械音の中静かにベッドで寝ている君に見て思う。
医者が言うには今は機械で一時的に生かしているが止めたら死ぬ、と。
彼女がこうなったのは交通事故のせいだった。信号無視の車にぶつかられたせいらしい。
車を運転していたやつも運び込まれたらしいが、手遅れだったと警察が言っていた。
こんなドラマみたいなことが自分の身近に起こるとは思わなかった。
実感が湧かないせいか、適当に返事をして流してしまった気もする。
こうして見ると、ただ眠っているように感じる。今にも飛び起きて、ドッキリだったと伝えてきそうだ。
しかし、そんな優しい世界ではないため、ただ、静かに時間が流れていく。
君の手を握ってみたが、いつものように暖かくはなく、少し冷たい気がした。それに、握り返してはくれない。
いくら話しかけてもこの冷たい機械音が響く部屋に自分の声が、自分の声だけが反響していた。
こんなことならもっと話しておけばよかった。やら、もっと愛してるといえばよかった。など、後悔の波がおしよせてきている。
どうして君なんだ…。
どうして、どうしてこんな酷いこと…。
今日ほど神を恨んだことは無いだろう。
もう一度笑ってるところが見たかった。もう一度、生きてるうちに会いたかった。抱きしめて、キスをして…。
考えても意味の無いことで頭の中がいっぱいだった。
君が最後に見たのはどんな景色だったんだろう。
どんな景色を見ながら意識を失っていったのか。
君が見た景色を全部自分に共有できたら…。
気づいたら目の前が涙で滲んでいた。
ここに来てから初めて泣いた気がする。1度泣いたら止まらなかった。大の男が一人でおいおい泣いてしまった。きっと廊下に響いてしまっているのではないだろうか。優しさなのか、気づいていないのか、誰も来なかった。
君が目を覚まさなくて良かった。
だって、君にはこんな情けない姿見せたくないから。君の景色の中の最後の僕はかっこよくあって欲しいから。
「こぼれたアイスクリーム」
ベシャっと音を立てて地面に落ち、白い水たまりを作った。
「あーあ。」
口ではそういいながらも、特に残念には感じていない。
暑くムシムシとする夏の日。顔を上げて奥を見ると、遠くがゆらゆらとして、地面には水たまりのようなものが見える。
「あ、逃げ水。」
不意に声が聞こえた。横を見つめると少年がたっている。楽しそうに奥の水たまりを見つめている。
少年は不意に走り出した。私も弾かれたように追いかけて走り出した。
何故かあの水たまりに追いつこうと思った。
途中で転んだがそんなことはどうでもよかった。ただ、あの水たまりに追いついてみたかった。
最後の声
夏は暑すぎて嫌になる。
私は学校に行くために駅で電車を待っているところだ。じわじわ、じわじわ、と汗をかき、服の裾でパタパタとしながら電車を待つ。
「暑くて嫌になるね〜」
ふと声が聞こえてそちらを向く。暑さに集中していたせいで気づいていなかったが、真理子がそばにいた。ごめん、気づかなかった。と声をかけると頬を膨らまし可愛らしい声で怒ってくる。
「もぉ〜、ほんとひどいんだから。手ぇ振っても一向に見てくれなくて泣くかと思った!」
怒っている顔も可愛いなんてさすが美少女だな。なんて思いながら、ヘラヘラ笑って謝る。
電車まだかな〜なんて他愛もない話をしながら暑さを耐えていた。
しばらくすると、ホームにアナウンスが響いた。
やっとこの暑さから開放されると気を抜いていると、体がふわっと浮く感覚がした。咄嗟に目を閉じるとドサッと言う音と同時に体の痛みを感じる。目を開けると線路内にいた。何が起こったのか、理解できなかった。ただ、分かったのは「終わった」ということだけだった。ホーム内を見ると人がこちらを見てなにか叫んでいたり、スマホを向けたり、顔を背けたり…それぞれがそれぞれの反応を示していた。
ただ、1人、真理子だけは静かに佇んでいた。そう、ただ静かに口元に笑みを称えながらこちらを見つめているだけだった。
私は気づいた。あぁ、してやられた。
真理子はこちらの視線に気づくと綻ぶように笑った。変わらないあどけなく可愛らしい笑顔。目の前に電車が迫っている。
うるさいはずのホームなのに聞こえた、真理子が鈴のような可愛い声で笑うのが。
最後に聞こえたのは自分の間抜けな声だった。
「あ」
朝が来て、起きて、着替えて、ご飯を食べて、出かけるために家から出る。ふと空を見る。
今日の空は一段と濃くて、雲のない青空が広がってるなー、なんて思いながら車へ乗り込む。
こんなにも青い空だと鳥になって飛べたらどんな気分だろうかと想像しながらエンジンをかけた。さぁ、今日も頑張るか。
『空はこんなにも』
どこにも行かないで
「待って、 だめ…! 」
そう叫んで飛び起きる。汗でぐっしょりとしたパジャマが今起きたことは現実ではないことを物語っていた。
「夢、かぁ…」
夢であったことに少しホッとすると同時になぜそんなに焦っていのか思い出せないことに気づく。
(あ、れ、私なんで…あんなに焦って…)
寝起きで働かない頭を使おうとすればするほど、その記憶は曖昧になっていく。なんだか途端に馬鹿らしくなり考えるのをやめた。
とても生々しい夢だったことはわかる。大切な事な気もする。しかし、なんだったかは忘れてしまった。考えるほど分からなくなっていく。
「あーもー!やめ、やめ!」
また考えてヒートしかけた頭に止まれと司令を出し、着替えを始めた。
着替えが終わり、下へ降りると母が朝食を作っていた。
「あ、おはよう。綾音。ご飯もうすぐできるから待ってて」
母にそう促され、席へと着く。朝食のいい匂いが辺りにたちこめている。
疲れたんでやめます(ノ_ _)ノ😵💫