最後の声
夏は暑すぎて嫌になる。
私は学校に行くために駅で電車を待っているところだ。じわじわ、じわじわ、と汗をかき、服の裾でパタパタとしながら電車を待つ。
「暑くて嫌になるね〜」
ふと声が聞こえてそちらを向く。暑さに集中していたせいで気づいていなかったが、真理子がそばにいた。ごめん、気づかなかった。と声をかけると頬を膨らまし可愛らしい声で怒ってくる。
「もぉ〜、ほんとひどいんだから。手ぇ振っても一向に見てくれなくて泣くかと思った!」
怒っている顔も可愛いなんてさすが美少女だな。なんて思いながら、ヘラヘラ笑って謝る。
電車まだかな〜なんて他愛もない話をしながら暑さを耐えていた。
しばらくすると、ホームにアナウンスが響いた。
やっとこの暑さから開放されると気を抜いていると、体がふわっと浮く感覚がした。咄嗟に目を閉じるとドサッと言う音と同時に体の痛みを感じる。目を開けると線路内にいた。何が起こったのか、理解できなかった。ただ、分かったのは「終わった」ということだけだった。ホーム内を見ると人がこちらを見てなにか叫んでいたり、スマホを向けたり、顔を背けたり…それぞれがそれぞれの反応を示していた。
ただ、1人、真理子だけは静かに佇んでいた。そう、ただ静かに口元に笑みを称えながらこちらを見つめているだけだった。
私は気づいた。あぁ、してやられた。
真理子はこちらの視線に気づくと綻ぶように笑った。変わらないあどけなく可愛らしい笑顔。目の前に電車が迫っている。
うるさいはずのホームなのに聞こえた、真理子が鈴のような可愛い声で笑うのが。
最後に聞こえたのは自分の間抜けな声だった。
「あ」
6/26/2025, 10:27:43 AM