《巡り逢うその先に》
第2章 ⑨
主な登場人物
金城小夜子
(きんじょうさよこ)
玲央 (れお)
真央 (まお)
綾乃 (母 あやの)
椎名友子 (しいなともこ)
若宮園子 (わかみやそのこ)
大吉 (だいきち)
東山純 (ひがしやまじゅん)
向井加寿磨 (むかいかずま)
ユカリ (母)
秀一 (義父)
桜井華 (さくらいはな)
高峰桔梗(たかみねききょう)
樹 (いつき)
柳田剛志 (やなぎだたかし)
横山雅 (よこやまみやび)
京町琴美(きょうまちことみ)
倉敷響 (くらしきひびき)
葛城晴美 (かつらぎはるみ)
犬塚刑事 (いぬづか)
足立 (あだち)
黒鉄銀次 (くろがねぎんじ)
やっとカズ君に会える。
小夜子は飛び跳ねたい気持ちを抑えながら閉店の準備をしていた。
そこに、園子と大吉が血相を変えて現れた。
「小夜子、大変だよ」
「田中の野郎がよ...」
「詐欺にあって、倒産したって、この2号店も差押えられるって」
小夜子は目の前が真っ暗になり、その場に崩れ落ちた。
救急車で病院に運ばれ、医師の診断によると、過労だろうということであった。が、次の日の昼になっても目を覚さない。
そのため、頭のCT検査をすることになった。しかし異常はなかった。原因がわからないまま、3日が過ぎた。
「ねぇ響、眠り姫のこと聞いた?あの子って、以前にも病院で会ってるよね?」
この時、響と琴美は響の叔父のいる病院に研修に来ていた。
「うん琴美も覚えてたか。おばあさんが運び込まれた時だったな」
「あの子、なんで目が覚めないんだろうね?」
「たぶん精神的なものじゃないかな?」
「やっぱりそう思う?私ちょっとお母さんに話し聞いてくるね」
「琴美は医者じゃないんだからあんまり首突っ込むなよ」
「ちょっと聞くだけよ」
琴美はまず母親から話しを聞き、倒れた時にそばにいた園子さんに聞き、バイトのジュンにも話しを聞いて大体のことはわかった。
それを響に話した。
「そうか、そうなると、特効薬はその加寿磨君ってことだな。でも彼がどこにいるかはわからないということか」
「東京のK大に通ってるようだから、会えるかもよ」
「俺たちと一緒じゃないか、何学部だ」
「法学部だってさ」
「戻ったら、探してみるか」
そして次の日、病室のドアが勢いよく開かれて椎名友子が入ってきた。
「おばさん、小夜子は無事なの」
「友子ちゃん、わざわざ来てくれたの、あなた沖縄にいたんじゃなかったかしら?」
「バイト先の社長さんに連れて来てもらったの」
「お久しぶりです綾乃さん」
「まぁ、お義父さん、どうして」
「友子君が血相を変えて、福島に行きたいからお金を貸して欲しいって言ってきたので、どうしたのか聞いてみたら、友達が倒れたからお見舞いに行きたいって、その友達の名前を聞いて孫だとわかったよ。金城小夜子なんてそういないからね」
「すいませんお義父さん、私が至らないばかりに心配をおかけしました」
「綾乃さん、小夜子や玲央真央は私の孫だ。心配ぐらいさせてくれないか。それに、綾乃さんは私の義娘なんだから遠慮なく頼ってほしい」
「ありがとうございますお義父さん」
「小夜子そばにいてあげられなくてゴメンね。小夜子が目を覚ますまで、そばにいるからね」
そこに、琴美が近づいてきた。
「私、病院の関係者なんですけど眠り姫の原因究明のために、お話し伺ってもいいですか?」
そして、お互いの知っていることを話しあった。
「カズ君がK大に。名前が向井に変わった」
確かあの崖っぷちの家に越してきたのが向井だったような、そうだ間違いない。カズ君は崖っぷちの家に帰ってきたんだ。
「小夜子、あんた呑気に寝てる場合じゃないよ。カズ君のいる場所がわかったよ。早く起きて、起きるのよ。起きない!起きろって言ってるだろ‼️」
バシーン!
友子は小夜子のホッペタをビンタした。
さすがの琴美も驚いた。
「あなた、患者さんになんて事するんですか」
「痛ーい。???ここどこ?。あれっ、なんで友子がいるの?あんた沖縄じゃなかったの?」
「おはよう小夜子」
「凄い、眠り姫が起きた。先生呼んでくるね」と琴美が病室を出て行った。
「小夜子さん、あなたは4日間眠り続けていたんですよ。気分はどうですか?どこか痛い所はありませんか?」と先生に聞かれ
「はい、気分はいいのですが、左のホッペタが痛いんです」
「小夜子それは、目覚ましだからきにしないで」と友子が言う。
「まぁともかく、あと2〜3日様子を診ましょう」
友子は加寿磨が崖っぷちの家に戻っていることを話した。
「退院したら会いに行こうね。私も一緒に行くからね」
「でも、友子は沖縄でバイトがあるんでしょ?」
「それが、偶然にもバイト先の社長が小夜子のおじいちゃんだったのよ。だから大丈夫」
「久しぶりだね小夜子、覚えているかね。最後に会ったのは小夜子が小学3年生だったかな」
「はい、覚えています。会えて嬉しいです」
次の日、玲央・真央と剛志・雅がお見舞いに来てくれた。
そして、もうひとり。
「はじめまして、私、高知県警から来た...」
「犬塚じゃないか」
声を掛けたのは剛志だった。
「どうして高知県警のお前がここにいるんだ」
つづく
《巡り逢うその先に》
第2章 ⑧
主な登場人物
金城小夜子
(きんじょうさよこ)
玲央 (れお)
真央 (まお)
椎名友子 (しいなともこ)
若宮園子 (わかみやそのこ)
東山純 (ひがしやまじゅん)
向井加寿磨 (むかいかずま)
ユカリ (母)
秀一 (義父)
桜井華 (さくらいはな)
高峰桔梗(たかみねききょう)
樹 (いつき)
柳田剛志 (やなぎだたかし)
横山雅 (よこやまみやび)
京町琴美(きょうまちことみ)
倉敷響 (くらしきひびき)
葛城晴美 (かつらぎはるみ)
犬塚刑事 (いぬづか)
足立 (あだち)
黒鉄銀次 (くろがねぎんじ)
3日後ジュンの地元の友達から連絡がきた。
「ジュン、向井の通う大学がわかったぞ。東京K大の法学部だ」
「ありがとう、早速小夜子さんに教えてあげるよ」
「ジュン、本当にそれでいいのか?」
「何がだ?」
「お前、本当は小夜子さんのこと好きなんじゃないのか?」
「何言ってんだよ、そんな訳..」
「ないって言い切れるのか?今晩じっくり考えてみたらどうだ」
「わかった、考えてみるよ」
ジュンはベッドの中で小夜子のことをいろいろと考えてみた。
小夜子さんと一緒にいると気兼ねする事なく落ち着けるし、相性的にもいいと思うけど、これが恋なのか?わからない。
それにしても、小夜子さんと向井はどうゆう関係なんだろう。と考えているうちに眠ってしまい目覚まし時計の音で目が覚めた。
「小夜子さん、おはようございます」
「ジュンさん、おはようございます。今日もよろしくお願いします」
「あの小夜子さん、ひとつ聞いてもいいですか?」
「はい、なんでしょう」
「小夜子さんと向井は、どういう関係なんですか?」
小夜子は一瞬考えた。この人にカズ君とのことを話しても大丈夫だろうか?いや、ジュンさんならば協力してくれるかもしれない。
「カズ君とは幼稚園が一緒だったの。でも、ある日わたしの習い事に行く途中で父がカズ君とカズ君のお父さんを車で轢いてしまい、カズ君のお父さんは亡くなり、カズ君は歩けなくなりそして記憶を失くしました。その後、何度も謝りに行ったのですが、会ってはもらえませんでした。私のことも忘れていたんです。それ以来会ってませんでした。そして、あの紙飛行機が届いたのですが、翌日私達はここに引っ越して来ました。カズ君も家の事情で引っ越してしまったので、どうやって探そうか悩んでいたのです。ジュンさんに会えたのも奇跡だと思ってます。だから私達は必ず会えると信じています」
話しを聞いて、このふたりの間には入り込めないと、ジュンは確信した。
「わかりました。話してくれてありがとうございます。僕も協力します。昨日地元の友達から連絡がありました。東京K大の法学部です」
「ありがとうジュンさん。私会いに行って来ます」
つづく
《巡り逢うその先に》
第2章 ⑦
主な登場人物
金城小夜子
(きんじょうさよこ)
玲央 (れお)
真央 (まお)
椎名友子 (しいなともこ)
若宮園子 (わかみやそのこ)
東山純 (ひがしやまじゅん)
向井加寿磨 (むかいかずま)
ユカリ (母)
秀一 (義父)
桜井華 (さくらいはな)
高峰桔梗(たかみねききょう)
樹 (いつき)
柳田剛志 (やなぎだたかし)
横山雅 (よこやまみやび)
京町琴美(きょうまちことみ)
倉敷響 (くらしきひびき)
葛城晴美 (かつらぎはるみ)
犬塚刑事 (いぬづか)
足立 (あだち)
黒鉄銀次 (くろがねぎんじ)
急な坂道を300m程登ると屋敷が見えてきた。
外壁を塗り直し、玄関周りはサイディングを施し花を植え明るく迎えてくれる。
大きめの玄関ドアを開けるとタイル貼りの床に左側はシューズインクローゼット、右隅には観葉植物がある。
1階には20畳のLDKに8畳の和室6畳の書斎にトイレ洗面所バスルームがあり、2階には3ツの洋室があり、その一室が僕 向井加寿磨の部屋だ。
崖っぷちに建っている僕の部屋からは街の全てが見渡せる。
4年ぶりに見る景色は以前のままだった。
加寿磨は都内の大学の法学部へ入学が決まり、この崖っぷちの家に戻ってきたのだ。母は2年前に向井秀一と再婚し、秀一の仕事の都合で都内に引っ越すこととなったので、ユカリはこの崖っぷちの家に戻りたいと頼んだのだ。
加寿磨は初めてできた友達と別れたくなかったので、高校を卒業するまでは祖父の家で暮らすことにした。
そして今日、崖っぷちの家に戻ってきた。
その頃、高峰樹は引っ越しの荷造りをしていた。
樹は、小学生の時に両親を殺害され、その時に知り合った桜井華(警察官)の家に、姉の桔梗と共に暮らしていた。
「樹、お姉ちゃん達と離れて寂しくないの?」
「姉ちゃん、俺18だよ。それに加寿磨と一緒なんだから大丈夫だよ」
「明日お姉ちゃんも一緒に付いて行ってあげようか?」
「姉ちゃん明日仕事でしょ。警察官がそんなことで休んじゃダメでしょ」
「だって、加寿磨君の家でお世話になるんだからご両親にちゃんとごあいさつしなきゃいけないでしょう」
「いいよ、もう子供じゃないんだから」
そして華が帰ってきた。
「桔梗、明日の有給休暇OKだ」
「ありがとう華さん」
「姉ちゃん、マジで付いてくるのか」
「樹、私も一緒だ」
「華さんも一緒!警察ってそんなに暇なの?」
「そうじゃないさ、私達は樹の親代わりだからな、当然の有給休暇が認められただけさ」
翌日3人はほとんど遠足気分で加寿磨の家に向かった。
「いらっしゃい。まぁ皆さんご一緒で、どうぞお上がりください」
「お久しぶりですユカリさん。これから樹のこと、よろしくお願いします。言うこと聞かなかったら遠慮なく叱って下さい」
「樹君は加寿磨にとって大切なお友達ですから、一緒に居てもらえるなんて感謝しているんですよ」
「そう言っていただけると嬉しいです。ちょっと樹のお部屋を見させていただきますね」
「はい、遠慮なくどうぞ」
2階に上がると樹は加寿磨の部屋にいた。
「加寿磨は、ここから紙飛行機を飛ばしたのか、中学校は?」
「あそこだよ」加寿磨は左前方を指差した。
「凄いな、300mくらいあるんじゃないか?、あそこまで飛ぶなんて、それだけでも奇跡だよ」
桔梗と華はふたりの話しを聞いて窓に近づいた。
「どれどれ、本当だあんなに遠くまで、しかも、それを彼女が見つけるなんて宝くじレベルだよね」
桔梗と華は窓から街並みをながめていた。
「これからどうやって彼女を探すんだ加寿磨?」樹が加寿磨に問いかけた。
「あの時、彼女に連絡をとってくれた椎名友子さんを探す」
「その子の住所はわかるのか?」
「いや、わからない。でも椎名さんもあの中学校出身だから、近くに住んでるはずだ」
「わかった、俺も手伝うよ。写真はあるのかい?」
「いや、ない。僕も4年前に2回会っただけなんだ」
「そんなんで、本当に探せるのか?」
「大丈夫、奇跡は必ず起きる」
加寿磨の意志は揺らがない。
そう、それが加寿磨なのだ。
桔梗と華は次の日が仕事なので、早々に帰って行った。
一方、金城小夜子はサイクルショップ田中2号店の経営も安定してきたので、アルバイトを雇うことになった。
小夜子より2才年上の大学生で東山純だ。ふたつ上だが、今年大学に合格して、高知からここ福島に単身で越してきた。
「よろしくお願いしますね、東山さん」
「こちらこそよろしくお願いします金城店長さん」
「小夜子でいいですよ」
「じゃあ、ボクのことはジュンと呼んでください」
ふたりはとても相性がよく、1週間もすると自分のことをいろいろ話すようになっていた。
「ボクは高校2年生になってすぐに病気になって1年間休学していたんです。友達がお見舞いに来てくれた時に言っていたのですが、球技大会の卓球で足の悪い1年坊主が、卓球部員を負かして優勝したらしいんです。ソイツは1年ほど前まで歩けなかったみたいで、おまけに卓球を初めてやったらしいんですよ。
ボクは見てないので、どこまで本当なんだかわかりませんけど。
そんなことがあったので、学校ではちょっと有名人になったみたいで、噂によると高校入学前に引っ越して来たらしいです。
それにどうやら、小・中学校には行ってなかったらしいです。
それなのに成績は学年トップなんですよ。
世の中には凄い奴がいるもんですよね。
小夜子さんと同じ歳ですよ。
小夜子はその話しを聞いて、もしかしたらカズ君じゃないかと思った。
年齢も引っ越した時期も学校に行ってなかったことも一致する。
「ジュンさん、その人の名前はわかる?」
「向井だよ」
小夜子の祈りは一瞬で打ち砕かれた。
「どうしたんですか、知り合いだと思ったんですか?」
「うん、でもそんな偶然ある訳ないよね。あったら奇跡だよね」
「奇跡と言えば、もうひとつ話しがあるんですよ。でも、さすがにこれはデマだと思いますけど。なんでも引っ越してくる前の場所でラブレターを書いて紙飛行機にして飛ばしたら...?どうしたんですか小夜子さん、急に泣き出したりして、大丈夫ですか?」
「それ、私なの」
「何がですか?」
「その手紙受け取ったの私なの」
「えっ!マジですか?」
「でも、名前が違うのはおかしいわよね」
「それは、向井が1年生の時にお母さんが、再婚したからですよ。旧姓は何て言ったかなぁ珍しい名前だったんだけど?」
「鬼龍院」
「そう、そうです鬼龍院です。って、この話しって本当だったんですか?しかも、相手が小夜子さんなんですか?」
小夜子は溢れる涙を止めることができなかった。
やっとカズ君を見つけた。
「ジュンさんはカズ君の住所は知っているの?」
「残念ながらボクにはわかりません。帰ったら地元の友達に聞いてみます」
「お願いします」
そしてその夜、ジュンから電話がきた。
「小夜子さん、すいません。向井のヤツ地元ではない大学に受かって引っ越してしまったようなんですよ」
「どこの大学だかわからない?」
「そこまでは知らないようなので別の友達に聞いて、連絡くれるって言ってました」
「ありがとう。連絡がきたら教えてね」
やっと手にした細い糸。必ず手繰り寄せてみせる。
つづく
《巡り逢うその先に》
第2章 ⑥
主な登場人物
金城小夜子
(きんじょうさよこ)
玲央 (れお)
真央 (まお)
椎名友子 (しいなともこ)
若宮園子 (わかみやそのこ)
向井加寿磨 (むかいかずま)
ユカリ (母)
秀一 (義父)
桜井華 (さくらいはな)
高峰桔梗(たかみねききょう)
樹 (いつき)
柳田剛志 (やなぎだたかし)
横山雅 (よこやまみやび)
京町琴美(きょうまちことみ)
倉敷響 (くらしきひびき)
葛城晴美 (かつらぎはるみ)
犬塚刑事 (いぬづか)
足立 (あだち)
黒鉄銀次 (くろがねぎんじ)
【星空】
高峰桔梗と葛城晴美は無事に警察学校を卒業し晴れて警察官になった。
しかも、桔梗は授業と実習で、晴美は実技でトップだった。
おまけに、晴美の二輪走行の腕は群を抜いていた。
桜井華はふたりの卒業を祝ってくれた。
「凄いじゃないか、ふたりとも私と同じ警察署に配属されたから、署内では君達の話題でもちきりだよ。桔梗は警察官に向いているとは思ったが、まさかこれ程迄とはさすがに思わなかったよ。葛城君も特にバイクの腕前は教官以上だったらしいな、驚いたよ。これからは、同じ警察署員として一緒に市民の安全を守っていこう」
やっと華さんと一緒に仕事ができるんだ。そして、黒鉄銀次を逮捕するんだ。
緊張の中初出勤を迎えた。桔梗は華の先輩でもある高見巡査と駐車違反の取り締まりなどを行った。
一方、葛城晴美は白バイ隊員の訓練生として、養成所で訓練を受けることとなった。大抜擢である。
そして一年後、星空のキレイな夜に事件が起きた。
桔梗は高見巡査と、華は3年目の若い巡査と警ら中、猛スピードで大通りを走り抜ける車がいると連絡が入った。
車は桔梗達のいる方へ向かっているようだ。
さらに入った連絡によると、暴走車は銀行強盗の容疑者が逃走中なのだとわかった。
「高見先輩、桜井です。私達もそちらに向かってます。港に誘導して逃げ道を塞ぎましょう」
「了解、絶対に捕まえるぞ」
地元の道を熟知している華達にとってはそれ程難しい事ではなかったが、車両2台では、難しいと言わざるを得ない。
「しまった。この先の交差点で左側を塞いで右折させなければ逃げられてしまう」
その時、後方から白バイが猛スピードで華たちを追い抜いて行き、左側にプレッシャーをかけ右折させた。
「よし、これで奴等は袋のネズミだ。応援のパトカーも合流してきた。華、慎重にな」
「了解です。桔梗の事お願いします高見先輩」
「もちろんだ」
行き場を失った車から容疑者達が3人現れた。
「手を上げて後ろを向きなさい」
犬塚刑事が犯人に告げると3人はおとなしく従った。
ホッとした隙をついて車の中からもうひとりが勢いよく飛び出してきた。
主犯格と思われる男はナイフを持ち突破しやすそうな場所を見極め突っ込んでいった。
「桜井!」犬塚刑事が叫ぶ。
「ドケドケ退け!」男はナイフを振りかざして華めがけて突進していく。
すると、華も男に向かって走りだした。
これには男もビックリしたようで一瞬ひるんだ。
その隙を逃さず華は一本背負いで男を投げ飛ばした。
「悪いな、こう見えても私は柔道五段なんだ」
「華さん、伸びてるから聞こえてませんよ」
「桜井よくやったなお手柄だぞ」
「ありがとうございます」
「桜井先輩すごーい!」
少し離れた場所からこちらに向かってくる人がいる。
「あれは、葛城君じゃないか、さっきの白バイって葛城君だったのか?」
「お久しぶりです。皆さんのおかげで白バイ隊員になれました。これからもよろしくお願いします」
このあと、夜中まで女子会が続いたのは言うまでもないだろう。
つづく
《巡り逢うその先に》
第2章 ⑤
主な登場人物
金城小夜子
(きんじょうさよこ)
玲央 (れお)
真央 (まお)
椎名友子 (しいなともこ)
若宮園子 (わかみやそのこ)
向井加寿磨 (むかいかずま)
ユカリ (母)
秀一 (義父)
桜井華 (さくらいはな)
高峰桔梗(たかみねききょう)
樹 (いつき)
柳田剛志 (やなぎだたかし)
横山雅 (よこやまみやび)
京町琴美(きょうまちことみ)
倉敷響 (くらしきひびき)
【神様だけが知っている】
金城小夜子は祖母の死のショックから仕事でミスを繰り返し、お客さんからの信用を無くし、客足が遠のいてしまった。
そこに玲央たちが来た。
「お姉ちゃん」
「ノド渇いた」
「「麦茶ちょうだい」」
いつもの玲央と真央の双子トークだ。
「剛志君、雅ちゃん、こんにちは、ちょっと待っててね」
「お姉ちゃん」
「お客さん」
「「いないね」」
「そうなのよ、玲真(玲央と真央の略語)たちもお客さん集めるの協力してくれない?」
すると、剛志が周りを見回して聞いてきた。
「そこにある中古の自転車はこのあと廃棄するのですか?」
「これは下取りした自転車で部品取りのために置いてあるのよ」
「小さい子向けの自転車も4・5台あるんですね。その自転車を無料で貸し出ししてみませんか?」
「どういうこと?」
「そこの空き地で練習用として貸し出すのです。購入を考えている人、補助輪を外そうか考えている人、大きいサイズに買い替えを考えている人達に自由に使ってもらうのです」
「それいいかも、早速やってみるね。ありがとう」
次の日曜日から、お客さんが増え始め、1ヶ月後には以前よりお客さんが増えていた。
よかったわ、これも剛志君のおかげだわ。あの子って本当に小学1年生なのかしら?
「剛志君のおかげで」
「お客さんが増えたって」
「お姉ちゃんが言ってたよ」
「また、遊びに」
「「来てねって」」
「そうですか、お役に立てて良かったです」
剛志はこれで本当に良かったのかと少し後悔していた。
あまり人に影響を与えない方がいいのではないかと。
しかし、すでに雅ちゃんや玲央真央には影響を与え続けている。
この時代の人に関与し過ぎると僕は罰を受けるのだろうか?
それは神様だけが知っている
つづく