星乃 砂

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6/18/2024, 10:19:28 AM

 《巡り逢うその先に》
        第2章 ①
【未来】

登場人物
 高峰桔梗
 明美

高峰桔梗は就職先が決まらずにいた。
友達はみんな働いてるのに、どうして私は職業できないのだろう。
今日は友達と、短大卒業後 初の女子会だ。
「あんたどうするの、就職先決まってないの桔梗だけだよ」
「何社受けたんだっけ?」
「12社」
「よく落ちたもんだ、この際だから記録作るか?」
「嫌よそんなの、絶対に次で決める」
「だいたい何がしたいのよ?」
「これといって無いのよね」
「だからいけないんじゃないの、
ちゃんと未来設計立てなくちゃ」
「明美は、ちゃんと未来設計立ててんだ」
「当たり前でしょ、3年で有望株を捕まえて寿退社するの」
「そんなの未来設計じゃないでしょ」
「私って何に向いてると思う?」
「桔梗って人はいいけど、曲がったことが嫌いっていうか、融通が利かないっていうか、それに自分より他人を優先するところもあるよね。ドジだけど」
「ドジは余分でしょ」
「そういえば、一緒に住んでる人って警察官でしょ、コネが利くんじゃないの?」
「警察官にコネは必要ないんじゃないの?」
「桔梗には向いてると思うけどな孝一も言ってたよ、繁華街でオヤジと揉めた時、桔梗が間に入ってくれなかったら大喧嘩になって警察のご厄介になってたかもって」
「実は華さんにも、私は警察官に向いてるって言われたことがあるのよ」
「決まりだね。じゃあ今日は前祝いということで、乾杯!」
「「乾杯」」
「そ、そんなー」
桔梗は次の日、華たちに相談してみた。
「僕はいいと思うよ」
「おばさんも賛成よ」
「もちろん私も賛成だ」
聞いた手前、みんなに賛成されると後に引けなくなった。
幸か不幸か、やっと前へ進めそうだ。
 
           つづく

6/17/2024, 6:14:40 AM

【1年前】

加寿磨 小夜子 玲央 真央
華 桔梗 樹
剛志 雅

今までのあらすじ

 〈金城小夜子の場合〉
1年前、奇跡的にカズ君からの手紙が届き幼少期の事故が蘇った。
会いたい。会って謝りたい。でも私には時間がない。
明日引っ越してしまう。
弟達を養う為に、アルバイトを初め、親切な園子さんに出会い小夜子の未来は開けていく。

 〈鬼龍院加寿磨の場合〉
1年前、偶然見かけた女の子宛に手紙を書き紙飛行機にして窓から飛ばした。届くはずのないその手紙が奇跡的に彼女に届いた。
彼女が幼少期の事故の加害者の娘であり幼馴染の小夜子であることを知る。
彼女のほうが、被害者である自分よりも苦しんでいることを知り、会うことを決意する。
そんな矢先、会社が倒産し、母の実家に引っ越すこととなる。
だが、祖父の会社も倒産の危機にあり、母は強引に政略結婚させられそうになるが、友達のおかげで危機を乗り越え、高校時代の同級生と再婚する。
加寿磨も高校に通い出し、生涯の友 樹と出会う。

 〈高峰桔梗の場合〉
数年前、両親を殺され身寄りの無い桔梗と樹を受け入れてくれたのが、桜井華である。
華は警察官であり、ある事件を追っている。
桔梗は短大を卒業したが、就職先が決まらずにいる。
樹は高校で加寿磨と出会う。

 〈柳田剛志の場合〉
数年前、姉の紬と行った遊園地で
横山雅と運命的は出会いをする。
その後も雅の兄 優斗と紬を通して何とか雅と会い続ける。小学校では一緒のクラスになれた。
玲央と真央とも同じクラスになり固い絆で結ばれていく。

その後、
お互いの居所を知らない加寿磨と小夜子は再開できるのか?
華が警察官になった理由とは?
桔梗の選んだ職業とは?

6/16/2024, 7:49:40 AM

【好きな本】

 [5/19 恋物語
 [5/26 降り止まない雨
 [5/27 月に願いを
 [5/28 天国と地獄
 [5/30 ごめんね
 [6/5 狭い部屋
 [6/7 最悪
 [6/9 岐路
 [6/10 朝日の温もり
 [6/11 やりたいこと
 [6/13 好き嫌い
 [6/14 あじさい

 [5/20 突然の別れ 
 [5/24 逃れられない
 [6/6 誰にも言えない秘密
 [6/12 街

 [6/15 あいまいな空
           続編

登場人物
 向井加寿磨
    (きりゅういんかずま)
   ユカリ (母)
 向井秀一(むかいしゅういち)
 鬼龍院加寿豊(かずとよ 父)
 高峰桔梗(たかみねききょう) 
   樹      (いつき)
 桜井華   (さくらいはな)
   佳子   (よしこ 母)

球技大会も終わり普段通りの学校生活に戻る...わけがなかった。
「向井頼む卓球部に入ってくれ、お前ならオリンピックも夢じゃない。俺達と一緒にインターハイを目指そう、オー」
「僕はまだリハビリ中ですし、卓球に興味はありません。
「何だとー!あれだけの素質と才能がありながら興味がないだとー
お前はアホか、それとも俺がバカなのか?いいからここに名前を書け」卓球部のキャプテンは入部届を加寿磨の前に叩きつけた。
「あなたもわからない人ですね。興味がないのでお引き取り下さい」
「わかった、今日のところは引き上げるが、俺は諦めないからな」
キャプテンはそう言うと教室を後にした。
これでやっと静かになる...はずがなかった。
「向井君、卓球はいつからやってたの、頭もいいしスポーツも上手いなんてすごいよね、越して来る前はどこにいたの、勉強のコツがあったら教えて、彼女はいるの?今日僕の家に遊びに来ませんか」
「僕は小さい頃事故にあって以来
車椅子生活が長かったのでスポーツはほとんどやったことがありません。別にすごくなんかありません。越して来る前は都心の近くに住んでいました。勉強のコツは勉強することです。彼女はいませんが好きな人はいます。喜んで行かせていただきます」
すごい、いっぺんに話しかけられたのに全てに返事をしている。
「えっ僕の家に来てくれるの?」
「はい、そう答えました」
「ありがとう、姉さんと華さんが喜ぶよ」
そして、樹は加寿磨を連れて帰宅した。
「ただいま、向井君を連れて来たよ」
ドタバタドタバタ、最初に現れたのは佳子さんだった、次に姉が現れた。
「おかえり、いらっしゃい。暑くなかった、喉乾いてない、お腹は空いてないの、本当に賢そうな顔してるわね、これからも樹ちゃんと仲良くしてあげてね」
「おばさん、そんなにいっぺんに聞いても答えられないわよ。いらっしゃい、姉の桔梗です」
「こんにちは、外は、少し暑かったのでお水をいただきます。お腹は空いていません、賢いのと顔は関係ないと思います。高峰君とは友達になりたいと思っています。
改めまして、向井加寿磨です」
「すごい、全部に返事してる」
「華さんはいないの、今日は休みだと思ったけど?」
「部屋に居るわよ、さあ中に入ってゆっくりしていってね」
部屋では華が、麦茶を飲んでいた。
「いらっしゃい、やっぱりユカリさんの息子さんだったか」
加寿磨はビックリした。
「なぜ、婦警さんがここにいるのですか?」
「ここは私の家だ。樹達は理由あって一緒に暮らしている」
僕は今朝の学校での事をみんなに話した。
「本当に卓球やった事なかったの?」
「本当です。卓球に選ばれた時に図書室で本を読んで勉強しました」
「それだけなの?」
「はい、それだけです」
4人はビックリして言葉がでなかった。
「そういえば、小中学校にも行っていなかったと聞いたが勉強はどうしていたんだ」と華さんが聞いた。
「家庭教師の人に来てもらっていました。あとは、本から学びました」
「そういえば、学校でもよく本を読んでるよね」
「うん、話しかけて来る友達がいないからね。高峰君が誘ってくれて嬉しかったんだ。僕は今まで友達もいなかったし、誘われたのも初めてなんだ」
また、4人はビックリして言葉がでなかった。
その後、僕の部屋に移動して、オヤツを食べながらいろいろと話し合った。
「向井君はどんな本が好きなの、作家は誰が好き?」
「小説も読むけど、実用書が好きかな、僕はずっとひとりでいたから自分を高めるにはどうしたらいいのかをよく考えてたんだ。そして潜在能力を高める本にであった。そして、集中力観察力洞察力を高める訓練をしてきたんだ。だから卓球の本を読んで、打ち方やカットボールの返し方を修得できたんだと思う」
樹はますます加寿磨に惹かれていった。
この日をキッカケに加寿磨と樹は無二の親友となっていく。

         第1章 完

次回より下記の人物が交錯する
新章がスタートする予定です。

鬼龍院加寿磨
    (きりゅういんかずま)
 金城小夜子
     (きんじょうさよこ)
   玲央      (れお)
   真央      (まお)

 桜井華   (さくらいはな)
 高峰桔梗(たかみねききょう) 
   樹      (いつき)

 柳田剛志 (やなぎだたかし)
 横山雅  (よこやまみやび)

6/15/2024, 9:16:11 AM

【あいまいな空】

 [5/19 恋物語
 [5/26 降り止まない雨
 [5/27 月に願いを
 [5/28 天国と地獄
 [5/30 ごめんね
 [6/5 狭い部屋
 [6/7 最悪
 [6/9 岐路
 [6/10 朝日の温もり
 [6/11 やりたいこと
 [6/13 好き嫌い
 [6/14 あじさい

 [5/20 突然の別れ 
 [5/24 逃れられない
 [6/6 誰にも言えない秘密
 [6/12 街
           続編

登場人物
 鬼龍院加寿磨
    (きりゅういんかずま)
   ユカリ (母)
    加寿豊(かずとよ 父)
 浜崎杜夫 (はまさきもりお)
 向井秀一(むかいしゅういち)
 高峰桔梗(たかみねききょう) 
   樹      (いつき)
 桜井華   (さくらいはな)
   

桜井家では、久しぶりに全員そろっての夕食を楽しんでいた。
「樹、高校では友達できたの?」
「うん、中学からの友達とは別のクラスになったからね」
「気になる子はいないのか」
「あぁ、ひとりいるかな」
「えー、イっちゃんいるの、どんな子、可愛い、美人、背は高いの低いの、どこの子?」
「母さん、いっぺんに聞いても樹だって答えられないよ」
「あっ、そうね、ゴメンゴメン、それでどんな子なの?」
「女の子じゃないから」
「えー、男の子を好きになるのは、姉ちゃんとしては、微妙だな」
「そんなんじゃないから、今年になって引っ越ししてきた子で、足が悪くて杖を突いてるんだ」
「怪我してるんだ?」
「どうも、そうじゃないらしいんだ。小さい頃に事故にあってずっと歩けなかったらしいんだ。それに、小中学校には通ってなかったらしいんだ」
「そんなので、授業についていけてるの?」
「それが、クラスで一番頭がいいんだよ」
「確かに、気になる子だよね、名前は?」
「鬼龍院加寿磨でも、最近お母さんが再婚して、向井になった。
「どこかで聞いた名前だな?」
「華さん知ってるの?」
「思い出した。浜崎工業の浜崎杜夫が結婚しようとしていた相手が鬼龍院ユカリさんだったな、その人の息子だろう」
「でも、向井さんて人と結婚したのね」
「向井さんは、たぶんその時に彼女を助けた弁護士さんだと思う」
「そうなんだ、で、その子 学校ではどうなの、足が悪いんじゃイジメられたりしてないの?」
「それは大丈夫、クラスの不良っぽい奴がからかおうとしたことがあったけど、向井君がひと睨みしただけで、おとなしくなった」
「へー、凄い子だね」
「うん、目力が鋭いんだよね。僕からみても、意思の強さを感じるくらいなんだ」
「一度会ってみたいな」
「そういえば、明日球技大会だよね、樹は何の種目に、出るの?」
「僕はサッカーだよ。でも、天気がイマイチかな」
「確かに、あいまいな空模様だよね」
「大丈夫よ、お姉ちゃんが、てるてる坊主作ってあげるからね」

そして、次の日
どんよりとした天気だが、雨は大丈夫そうだ。
樹のクラスは検討したが、2回戦敗退となった。
「おい高峰、体育館がヤバイらしいぞ。行ってみようぜ」
体育館といえば、バレーと、卓球の試合をしているはずだ。確か向井君が卓球だったはずだが、足が悪いから無理だよな。
体育館に入ると、ひとつの卓球台を大勢で囲んでいる。
どうやら決勝戦が行われているらしい。
人の隙間から覗いて見ると、向井君が試合をしていた。
対戦相手は卓球部員だった。
向井君は卓球台のそばに立ち、その場から動かないが、相手のカットボールやスマッシュをことごとく打ち返している。
すごい、こんな闘い方見たことがない。
あっという間にマッチポイントになった。あと1点とれば勝てる。
そして、運命の1球 気負った相手が打ち損じて勝負有り。
見事、向井君が勝った。

その夜、家で姉さん達に向井君の話しをした。
「凄いんだね、ますます興味が湧いてきたわ。一度家に連れて来てよ」
「うん、わかった誘ってみるよ」
「そういう子と友達になれるといいわよね」

           つづく



6/14/2024, 9:16:49 AM

【あじさい】

 [5/19 恋物語
 [5/26 降り止まない雨
 [5/27 月に願いを
 [5/28 天国と地獄
 [5/30 ごめんね
 [6/5 狭い部屋
 [6/7 最悪
 [6/9 岐路
 [6/10 朝日の温もり
 [6/11 やりたいこと
 [6/13 好き嫌い
           続編

登場人物
 鬼龍院加寿磨
    (きりゅういんかずま)
   ユカリ (母)
    加寿豊(かずとよ 父)
 犬飼藤吉
     (いぬかいとうきち)
 相沢恵子 (あいざわけいこ)
 浜崎杜夫 (はまさきもりお)
 向井秀一(むかいしゅういち)
 桜井華   (さくらいはな)
 高峰桔梗(たかみねききょう) 

 金城小夜子
     (きんじょうさよこ)
   玲央      (れお)
   真央      (まお)
 若宮園子 (わかみやそのこ)
   大吉    (だいきち)
 田中(サイクルショップ店長)

 柳田剛志 (やなぎだたかし)
 横山雅  (よこやまみやび)

ユカリと秀一は高校時代の同級生である。
秀一は頭がズバ抜けてよく、トップの座を独占していた。
そんな秀一にユカリも恋心を抱いたが、内気な性格ゆえ告白することはなかった。
秀一は大学を卒業し、弁護士になり、今では敏腕弁護士として活躍している。
友達を大切にする性格なので、同窓会には必ず出席している。
ユカリは一度も出席したことがなかったが、恵子が秀一に連絡をとり、ユカリが置かれている状況を説明し、助けを求めたのだ。
その後、秀一と警察の手により浜崎杜夫の悪事が明るみになり、逮捕された。
警察の調べによると、ユカリを手に入れるために犬飼鉄工所への発註を妨害し、倒産の危機に落とし入れたのであった。
浜崎が逮捕されたおかげで、今まで通り仕事の依頼が入り、銀行も犬塚鉄工所に同情し融資を申し出てくれたので倒産の危機を免れることができた。
「秀一君、ありがとう。あんな人と結婚しなくて済んで、本当によかったわ」
「ユカリ、この際だから向井君と結婚しちゃったら」
「何言ってんのよ恵子、秀一君の奥さんに怒られるわよ」
「大丈夫、向井君は独身だから」
「えっ、そうなんですか?」
「ずっと仕事に追われてて余裕がなかったんだ、相手もいなかったしね」
「高校の時、ユカリと向井君が結婚すると思ってたんだけどな」
「ちょっと、やめてよ恵子」
その後、恵子の後押しが功を奏し、紫陽花の咲く6月に結婚することになった。

一方、小夜子の方は。

新学期が始まり、小夜子は若宮サイクルとサイクルショップ田中の仕事をしながら夜学に通うようになった。
サイクルショップ田中2号店は9月オープンに決まった。
玲央と真央は揃って小学1年生になった。
母はパートをひとつ減らし家事をして、祖母の負担を減らしている。
夜逃げ同然で祖母の家へ越してきた時はどんな地獄が待っているのか想像すくのも怖かったが、園子さんに会ったことで私の人生は上昇気流に乗ったのだ。
お母さんの笑顔も増えてきた。
お金を返し終えるまでは気が抜けないがこの調子ならば問題ない。

「「ただいま」」玲央と真央が小学校から帰ってきた。
「おかえりなさい、学校は楽しいかい?」
「「うん、すっごく楽しいよ」」
「玲央と真央が笑ってると、おばあちゃんも嬉しいよ」
「それでね」
「お友達」
「「連れてきたの」」
さすが双子だけあって息の合った掛け合いである。
「初めまして、柳田剛志です」
「こんにちは、横山雅です」
「こんにちは、ちゃんとご挨拶ができて偉いわね。これからも仲良くしてあげてね」
「「じゃあ、何して遊ぶ?」」
「まずは、宿題をやりましょう」
「そして、復習と予習もしましょうね」
「「えー、勉強するのー」」
「みんなですれば、楽しいわよ」
玲央と真央は、渋々宿題をしだした。
4人のなかで剛志が1番頭がよく、雅は飲み込みが早く教え上手でもあった。
こうして4人は硬い絆で結ばれていくのであった。
梅雨を告げる紫陽花が見頃の出来事であった。

           つづく

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