星乃 砂

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【あいまいな空】

 [5/19 恋物語
 [5/26 降り止まない雨
 [5/27 月に願いを
 [5/28 天国と地獄
 [5/30 ごめんね
 [6/5 狭い部屋
 [6/7 最悪
 [6/9 岐路
 [6/10 朝日の温もり
 [6/11 やりたいこと
 [6/13 好き嫌い
 [6/14 あじさい

 [5/20 突然の別れ 
 [5/24 逃れられない
 [6/6 誰にも言えない秘密
 [6/12 街
           続編

登場人物
 鬼龍院加寿磨
    (きりゅういんかずま)
   ユカリ (母)
    加寿豊(かずとよ 父)
 浜崎杜夫 (はまさきもりお)
 向井秀一(むかいしゅういち)
 高峰桔梗(たかみねききょう) 
   樹      (いつき)
 桜井華   (さくらいはな)
   

桜井家では、久しぶりに全員そろっての夕食を楽しんでいた。
「樹、高校では友達できたの?」
「うん、中学からの友達とは別のクラスになったからね」
「気になる子はいないのか」
「あぁ、ひとりいるかな」
「えー、イっちゃんいるの、どんな子、可愛い、美人、背は高いの低いの、どこの子?」
「母さん、いっぺんに聞いても樹だって答えられないよ」
「あっ、そうね、ゴメンゴメン、それでどんな子なの?」
「女の子じゃないから」
「えー、男の子を好きになるのは、姉ちゃんとしては、微妙だな」
「そんなんじゃないから、今年になって引っ越ししてきた子で、足が悪くて杖を突いてるんだ」
「怪我してるんだ?」
「どうも、そうじゃないらしいんだ。小さい頃に事故にあってずっと歩けなかったらしいんだ。それに、小中学校には通ってなかったらしいんだ」
「そんなので、授業についていけてるの?」
「それが、クラスで一番頭がいいんだよ」
「確かに、気になる子だよね、名前は?」
「鬼龍院加寿磨でも、最近お母さんが再婚して、向井になった。
「どこかで聞いた名前だな?」
「華さん知ってるの?」
「思い出した。浜崎工業の浜崎杜夫が結婚しようとしていた相手が鬼龍院ユカリさんだったな、その人の息子だろう」
「でも、向井さんて人と結婚したのね」
「向井さんは、たぶんその時に彼女を助けた弁護士さんだと思う」
「そうなんだ、で、その子 学校ではどうなの、足が悪いんじゃイジメられたりしてないの?」
「それは大丈夫、クラスの不良っぽい奴がからかおうとしたことがあったけど、向井君がひと睨みしただけで、おとなしくなった」
「へー、凄い子だね」
「うん、目力が鋭いんだよね。僕からみても、意思の強さを感じるくらいなんだ」
「一度会ってみたいな」
「そういえば、明日球技大会だよね、樹は何の種目に、出るの?」
「僕はサッカーだよ。でも、天気がイマイチかな」
「確かに、あいまいな空模様だよね」
「大丈夫よ、お姉ちゃんが、てるてる坊主作ってあげるからね」

そして、次の日
どんよりとした天気だが、雨は大丈夫そうだ。
樹のクラスは検討したが、2回戦敗退となった。
「おい高峰、体育館がヤバイらしいぞ。行ってみようぜ」
体育館といえば、バレーと、卓球の試合をしているはずだ。確か向井君が卓球だったはずだが、足が悪いから無理だよな。
体育館に入ると、ひとつの卓球台を大勢で囲んでいる。
どうやら決勝戦が行われているらしい。
人の隙間から覗いて見ると、向井君が試合をしていた。
対戦相手は卓球部員だった。
向井君は卓球台のそばに立ち、その場から動かないが、相手のカットボールやスマッシュをことごとく打ち返している。
すごい、こんな闘い方見たことがない。
あっという間にマッチポイントになった。あと1点とれば勝てる。
そして、運命の1球 気負った相手が打ち損じて勝負有り。
見事、向井君が勝った。

その夜、家で姉さん達に向井君の話しをした。
「凄いんだね、ますます興味が湧いてきたわ。一度家に連れて来てよ」
「うん、わかった誘ってみるよ」
「そういう子と友達になれるといいわよね」

           つづく



6/15/2024, 9:16:11 AM