星乃 砂

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【あじさい】

 [5/19 恋物語
 [5/26 降り止まない雨
 [5/27 月に願いを
 [5/28 天国と地獄
 [5/30 ごめんね
 [6/5 狭い部屋
 [6/7 最悪
 [6/9 岐路
 [6/10 朝日の温もり
 [6/11 やりたいこと
 [6/13 好き嫌い
           続編

登場人物
 鬼龍院加寿磨
    (きりゅういんかずま)
   ユカリ (母)
    加寿豊(かずとよ 父)
 犬飼藤吉
     (いぬかいとうきち)
 相沢恵子 (あいざわけいこ)
 浜崎杜夫 (はまさきもりお)
 向井秀一(むかいしゅういち)
 桜井華   (さくらいはな)
 高峰桔梗(たかみねききょう) 

 金城小夜子
     (きんじょうさよこ)
   玲央      (れお)
   真央      (まお)
 若宮園子 (わかみやそのこ)
   大吉    (だいきち)
 田中(サイクルショップ店長)

 柳田剛志 (やなぎだたかし)
 横山雅  (よこやまみやび)

ユカリと秀一は高校時代の同級生である。
秀一は頭がズバ抜けてよく、トップの座を独占していた。
そんな秀一にユカリも恋心を抱いたが、内気な性格ゆえ告白することはなかった。
秀一は大学を卒業し、弁護士になり、今では敏腕弁護士として活躍している。
友達を大切にする性格なので、同窓会には必ず出席している。
ユカリは一度も出席したことがなかったが、恵子が秀一に連絡をとり、ユカリが置かれている状況を説明し、助けを求めたのだ。
その後、秀一と警察の手により浜崎杜夫の悪事が明るみになり、逮捕された。
警察の調べによると、ユカリを手に入れるために犬飼鉄工所への発註を妨害し、倒産の危機に落とし入れたのであった。
浜崎が逮捕されたおかげで、今まで通り仕事の依頼が入り、銀行も犬塚鉄工所に同情し融資を申し出てくれたので倒産の危機を免れることができた。
「秀一君、ありがとう。あんな人と結婚しなくて済んで、本当によかったわ」
「ユカリ、この際だから向井君と結婚しちゃったら」
「何言ってんのよ恵子、秀一君の奥さんに怒られるわよ」
「大丈夫、向井君は独身だから」
「えっ、そうなんですか?」
「ずっと仕事に追われてて余裕がなかったんだ、相手もいなかったしね」
「高校の時、ユカリと向井君が結婚すると思ってたんだけどな」
「ちょっと、やめてよ恵子」
その後、恵子の後押しが功を奏し、紫陽花の咲く6月に結婚することになった。

一方、小夜子の方は。

新学期が始まり、小夜子は若宮サイクルとサイクルショップ田中の仕事をしながら夜学に通うようになった。
サイクルショップ田中2号店は9月オープンに決まった。
玲央と真央は揃って小学1年生になった。
母はパートをひとつ減らし家事をして、祖母の負担を減らしている。
夜逃げ同然で祖母の家へ越してきた時はどんな地獄が待っているのか想像すくのも怖かったが、園子さんに会ったことで私の人生は上昇気流に乗ったのだ。
お母さんの笑顔も増えてきた。
お金を返し終えるまでは気が抜けないがこの調子ならば問題ない。

「「ただいま」」玲央と真央が小学校から帰ってきた。
「おかえりなさい、学校は楽しいかい?」
「「うん、すっごく楽しいよ」」
「玲央と真央が笑ってると、おばあちゃんも嬉しいよ」
「それでね」
「お友達」
「「連れてきたの」」
さすが双子だけあって息の合った掛け合いである。
「初めまして、柳田剛志です」
「こんにちは、横山雅です」
「こんにちは、ちゃんとご挨拶ができて偉いわね。これからも仲良くしてあげてね」
「「じゃあ、何して遊ぶ?」」
「まずは、宿題をやりましょう」
「そして、復習と予習もしましょうね」
「「えー、勉強するのー」」
「みんなですれば、楽しいわよ」
玲央と真央は、渋々宿題をしだした。
4人のなかで剛志が1番頭がよく、雅は飲み込みが早く教え上手でもあった。
こうして4人は硬い絆で結ばれていくのであった。
梅雨を告げる紫陽花が見頃の出来事であった。

           つづく

6/14/2024, 9:16:49 AM