孤月

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6/14/2025, 4:05:23 PM

もしも君が変わるとしたら、
それは僕が変わった時。

君は変わらない。
時折何かに怯えるように僕から距離を取るくせに、
次に会った時には、なにもなかったように笑ってる。
僕はそれを弱さだと思ってた。
だから、強くあろうとした。
そのままの君を守れるような男にならなきゃって、勝手に思ってた。

でも、それは違ったのかもしれない。

君は、いつも、どこか不器用で、でもまっすぐだった。
そしていつも、自分を苦しめることに精一杯だった。
そのままの君を、僕は好きになったはず。
でも、苦しみばかり選ぶ君に、変わってほしいと思い始めた。

最初は、隣にいてくれることだけで嬉しかった。
けれど、隣で歩みを揃えようとしても、君は少しずつ後ろへ下がっていく。
無理をさせてるんじゃないか。
君はほんとうは強いのに、弱さの皮を被って、わざわざ生きづらい方へ向かってしまっているのではと。
そして僕の隣じゃなくても生きていけるんじゃないか、そんなふうに、考えるようになった。
君が変わらないなら、僕が変わるしか。
僕が変われば君も、もっと生きやすい方へ向かってくれるんじゃないかって。

それから僕は、もっと君に手を差し出そうとした。
少しでも君の世界に僕の存在を残したくて。
自分を犠牲にしてでも、君に触れようとしてた。

でも君は、黙って抱え込む方を選ぶ人だった。
君の優しさは君の孤独と紙一重だった。

手を差し出す度に思った。
君のことを本当に大切にするなら、
僕が去ることの方が、君の自由を守れるのかもしれないって。

君の苦しみを、僕はもうどうしてやることもできないのか。僕の言葉も、僕の沈黙も、君にとっては重荷になっていたのかもしれない。
いつからか僕は、手を差し出すのをやめていた。
黙って、君の目を見て、なにも言わずに肯定するのみとなった。

それが、正しかったのかはわからない。
君は余計に不安がるようになり、僕から去ろうと考えるようになったことがわかった。

終わりは突然訪れた。
「もう、連絡しないね。」
そう君が言った夜、僕は決して涙は流さず、またね、と言いかけてやめた。
「今までありがとう。」
君にとっての自由を、最後にちゃんと渡した気がした,

君が変わらないままでいるなら、
僕が変わることを選ぶしかなかった。
変わった僕の目に映る君は、
やっぱりまだ、どこかで立ち止まっているように見える。

でもそれでもいい。
今の僕は、遠くからでも君の幸せを願える。
君が笑えるように、君が君らしくいられるように。
その願いが、たとえ君に届かなくても。

君が変わらないままでも、
君が誰かと幸せになるなら…
きっとそれで、僕は報われるんだと思う。

6/13/2025, 6:08:34 PM

エアコンの音と、君のいびきと、息づかい。
眠れない深夜、私はずっとそれを聴いている。

手を伸ばせば届く距離にいるのに、君はもう夢の中で、私はずっと眠れない。

好きになりそうで苦しい。隣で寝ているのにどうしてこんなに孤独なんだろう。

君は私のことを「かわいい」って言ってくれる。
眠れなくてベッドを離れたら、爆睡しているのに「大丈夫?」って起きて声を掛けてくれる。
でも、それは君なら誰にでも言える言葉だって、もう知ってる。

年齢も、立場も、性格も、全部ちぐはぐで、
私は君の人生の脇道に咲いた、名前のない花みたいなものなんだと思う。
たぶん、君の人生に私は出てこない。

この関係は、身体だけで繋がっている。
心なんて、どこにも繋がっていないのかもしれない。

目を閉じても、君の存在を感じてしまって眠れない。

薄暗い部屋の片隅で、微かにこぼれた涙が、頬を伝って落ちていく。

叶わない。
叶うわけがないって、わかってる。

でも、今だけは。
この儚い夜の中だけは、君だけのメロディに溺れていたい。

虚しいなんて、言えないよ。
だって、君がそこにいるから。
それだけで嬉しいから。

6/12/2025, 1:17:21 PM

私はふしだらな女。
でもあなたに出会ってからは、誰彼構わず寝てないの。

いつも同じ部屋で、身体を重ねて。
あなたは私を抱く時だけ、情を含んだ目で見つめる。
部屋を出れば、冷淡で、理性的。
私のことなど眼中にないのがわかるから、
身体を重ねる時だけ私を必要とするあなたに、
微かな好意を持っている。
交わりだけの愛。

「愛のない行為なんて、虚しいだけ」

あなたはそう言ってくれた。
ふしだらな女は嫌いなはずのに、抱く時に情は抱けるなんて罪な人。でも、誠実な人。

あなたの情が全て私に向かなくとも、
私は今日もあなたを迎える。

6/10/2025, 12:35:12 PM

どこまで堕ちても離れない糸がある。

私は何度も糸を切ったはずなのに、気づいたらまた繋がって、新しい結び目を作る。

それは小さな結び目。
またすぐに解けそうで、儚い。

それは頑丈な結び目。
道具を使っても切れないくらい、芯がある。

堕ちた先で自分から糸を解いて、地上に返したはずなのに。

美しい、糸が、何本も。
地上からふわりと降りてきて、
私の身体にそっと触れる。

私が怯えると、
糸はそっと距離を置く。

むやみに触れない糸の優しさに
気づいたけれど、私は何もできない。

堕ちても離れない糸の美しさは、堕ちたものにしかわからない。その沢山の美しい糸を掴み、結び、地上に戻れた暁には。

私が離れない糸を…

6/9/2025, 7:14:38 AM

もう忘れてしまったよ。
思ってたより忘れるのは早かった。

君と歩いた道ってどんな道だったっけ。
なんか、あたたかくて、やさしくて、つつまれた感じだったのは覚えてる。

今の僕はね、そもそも道を歩いてないよ。
ふらふらと足元覚束なく、あてもなく。
道を歩くのを避けて、後ろに下がっていく。
どの道も歩くのを恐れている。
少しだけ道を歩んでみても、すぐ落とし穴に落ちてしまうことがわかっているから。

君と歩いた道、途中で手を放したのはどっちだったかな。多分僕からかな。まあ、そんなことどうでもいいけど、手を放さなかったら、変わってたかなお互い。

でも今はね、もう忘れていいんだって思えるよ。

君は僕を怖がっていたからさ、
瞳の奥に怪物をみたんでしょ?

僕は忘れたことにするから、
君は君のまっすぐな道をがむしゃらに進んでね。

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