もしも君が変わるとしたら、
それは僕が変わった時。
君は変わらない。
時折何かに怯えるように僕から距離を取るくせに、
次に会った時には、なにもなかったように笑ってる。
僕はそれを弱さだと思ってた。
だから、強くあろうとした。
そのままの君を守れるような男にならなきゃって、勝手に思ってた。
でも、それは違ったのかもしれない。
君は、いつも、どこか不器用で、でもまっすぐだった。
そしていつも、自分を苦しめることに精一杯だった。
そのままの君を、僕は好きになったはず。
でも、苦しみばかり選ぶ君に、変わってほしいと思い始めた。
最初は、隣にいてくれることだけで嬉しかった。
けれど、隣で歩みを揃えようとしても、君は少しずつ後ろへ下がっていく。
無理をさせてるんじゃないか。
君はほんとうは強いのに、弱さの皮を被って、わざわざ生きづらい方へ向かってしまっているのではと。
そして僕の隣じゃなくても生きていけるんじゃないか、そんなふうに、考えるようになった。
君が変わらないなら、僕が変わるしか。
僕が変われば君も、もっと生きやすい方へ向かってくれるんじゃないかって。
それから僕は、もっと君に手を差し出そうとした。
少しでも君の世界に僕の存在を残したくて。
自分を犠牲にしてでも、君に触れようとしてた。
でも君は、黙って抱え込む方を選ぶ人だった。
君の優しさは君の孤独と紙一重だった。
手を差し出す度に思った。
君のことを本当に大切にするなら、
僕が去ることの方が、君の自由を守れるのかもしれないって。
君の苦しみを、僕はもうどうしてやることもできないのか。僕の言葉も、僕の沈黙も、君にとっては重荷になっていたのかもしれない。
いつからか僕は、手を差し出すのをやめていた。
黙って、君の目を見て、なにも言わずに肯定するのみとなった。
それが、正しかったのかはわからない。
君は余計に不安がるようになり、僕から去ろうと考えるようになったことがわかった。
終わりは突然訪れた。
「もう、連絡しないね。」
そう君が言った夜、僕は決して涙は流さず、またね、と言いかけてやめた。
「今までありがとう。」
君にとっての自由を、最後にちゃんと渡した気がした,
君が変わらないままでいるなら、
僕が変わることを選ぶしかなかった。
変わった僕の目に映る君は、
やっぱりまだ、どこかで立ち止まっているように見える。
でもそれでもいい。
今の僕は、遠くからでも君の幸せを願える。
君が笑えるように、君が君らしくいられるように。
その願いが、たとえ君に届かなくても。
君が変わらないままでも、
君が誰かと幸せになるなら…
きっとそれで、僕は報われるんだと思う。
6/14/2025, 4:05:23 PM