孤月

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エアコンの音と、君のいびきと、息づかい。
眠れない深夜、私はずっとそれを聴いている。

手を伸ばせば届く距離にいるのに、君はもう夢の中で、私はずっと眠れない。

好きになりそうで苦しい。隣で寝ているのにどうしてこんなに孤独なんだろう。

君は私のことを「かわいい」って言ってくれる。
眠れなくてベッドを離れたら、爆睡しているのに「大丈夫?」って起きて声を掛けてくれる。
でも、それは君なら誰にでも言える言葉だって、もう知ってる。

年齢も、立場も、性格も、全部ちぐはぐで、
私は君の人生の脇道に咲いた、名前のない花みたいなものなんだと思う。
たぶん、君の人生に私は出てこない。

この関係は、身体だけで繋がっている。
心なんて、どこにも繋がっていないのかもしれない。

目を閉じても、君の存在を感じてしまって眠れない。

薄暗い部屋の片隅で、微かにこぼれた涙が、頬を伝って落ちていく。

叶わない。
叶うわけがないって、わかってる。

でも、今だけは。
この儚い夜の中だけは、君だけのメロディに溺れていたい。

虚しいなんて、言えないよ。
だって、君がそこにいるから。
それだけで嬉しいから。

6/13/2025, 6:08:34 PM