孤月

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4/9/2024, 10:11:37 AM

ブゥーン、ガガッ、、
車の止まる音。心なしかいつもと違う音に聞こえる。今日は毎年恒例の「お客様」が来る日だ。俺は作曲していた手を止め窓から身を乗り出した。今年のお客様は、、女が放っておかなそうな顔立ちをしてる。色白で冷酷そうなブルーの瞳が魅力的だ。じっくり鑑賞しているとふい、とその綺麗な男は上を向き俺の視線を捉えた。すぐに目を逸らしたが落ち着かなくなってしまった。ただ今まで出会った誰よりも、ずっと一緒にいるであろう予感がした。一瞬目があっただけでこんなに心を乱されそうになる男とこれからひと夏壁を隔てて過ごすなんて、、これからどうなるのだろうか。今年の夏は熱くなりそう。

4/4/2024, 12:20:24 PM

皆の生き方が羨ましい。
自分には出来なかった生き方だから羨ましくなるのは当然だ。自分自身光から目を背けて生きなければいけない人間だとずっと思っている。出る杭は打たれるから、個性なんて出しちゃいけないし、いい子でいて薄暗い月のように存在を薄れさせていなければいけないと。息苦しくても息苦しいままで、生きていないかのように若い時間を浪費した。自分も誰もそのことに気づかないくらい存在がなかった。興味を持たれることがなかった。自分すら自分に興味がなかった。死にたかった。でも生きていたかった。それでいい。自分の選択でできた生き方なんだから。でもそのままでいいと言ってくれてもわからない。皆どうやって生きてるんだろう。正解ばかり探して見つからない自分には到底わからない。もうぐちゃぐちゃだ。

3/24/2024, 9:07:39 AM

小雨の降る日、昼下がり。
特別な存在が空に溶けた。
滅多に見られなかった微かな微笑みも、通常装備の眉間の皺も、暖かな心を表すかのような穏やかな声も、落ち着かない時に見せる手ぐせももう見ることは出来ない。
息を引き取ってからでもぬくもりを与える為に手を握ったり、身体を摩ったりしている皆を横目に放心していた。何もできなかった。何も伝えることが出来なかった。後悔してももう遅い。言葉は伝えられる時にちゃんと伝えなきゃいけないのに。後悔も一緒に空へと溶けていってほしいが、残った私たちを許してはくれない。
近親者との死別は、今後またあるであろう別れへの準備だとも聞いたことがある。今日の経験を糧に残された私たちは前を向かなければならない。何も伝えることが出来なかった、何も恩返しできなかった後悔を忘れないように、特別な存在を何度も思い出すように今後も生きていく。

3/21/2024, 12:20:14 PM

堤防の上、二人ぼっち。
隣にぴたりとくっついて座って獲物がかかるのを待つ。
ピクピクとどちらかの竿の先が反応すると二人して視線を合わせる。
獲物がかかれば喜びあってハイタッチ。
何気ないこの瞬間が一番愛おしいと知るにはまだ早かったみたいだ。

3/20/2024, 10:26:39 AM

毎日暗澹とした気持ちで同じような日々を繰り返して、私の心は壊れかかっていた。世の中の悪を見たくなくて、周りの善の部分だけを無理やり見ようとしていた。自虐することで周りを善に仕立てようとした。上っ面を繕って、毎日悪を善に正そうとした。ある意味廃人だった。しかしある時ある人に言われた。
「あんたって性格がひん曲がってるよね。」
私はそこで気づいたのだ。自分がやっていることは唯の自己満足であり、誰かから見れば悪なんだと。自分は善の人間だと驕り高ぶっていたのだ。そして悪が全て悪いとは限らないとも自覚した。そこで、今まで積もりに積もった私の悪の一面が溢れ出した。壊れかけだった心も完全に崩壊した。
前を向こうとしても今までの罪悪感は消えない。無自覚に傷つけていたかもしれないという事実から目を背けたいのか、体も悲鳴を上げている。
まだ、夢が醒める前。

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