喜村

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1/31/2023, 1:33:22 PM

 なんだかとっても陽気がいい。
風も強くなく、寒すぎず暑すぎず、お日様が優しく照らしている。
 そうだ、旅に出よう!
こんな旅立つのに良い日よりは中々ない。
 思い立ったら即行動!
俺はバッグに財布と飲み物など、最低限の持ち物を詰め込み、旅に出た。

 旅と言ってもあてなどない。日帰り旅行と言われたらそれまでかもしれないが、今の時代の旅とはそういうものではなかろうか。
 予定など決めずにふらりと遠くのどこかへ行く。観光をするでもなく、ただふらふらと。

 行き当たりばったりだから、予定外なんてこともない。ただ天気がいいな、歩いてどこかにいこう、綺麗な景色が見れたらラッキーだな、そんな程度の旅。

 旅が終わると、また明日からの現実に引き戻される。また次の旅に出るその日まで頑張ろうと、旅路の果てに思うんだ。
きっとまだ果てに辿り着いてないのだろうけれど、果てに辿り着くために、小さな旅を重ねていくんだ。


【旅路に果てに】

1/30/2023, 10:27:24 AM

 私には、気づいた時には母親がいなかった。
幼稚園の母の日のプレゼント作りや小学生の時の参観日、何故か普通に友達には母親がいて、私が普通じゃないことに気付き始めた。
 今の時代だと片親も珍しくないけれど、やはり周りから視線は薄々感じていた。

 母親に会いたい。

 いつからかそう思う気持ちは薄れてきた。自分が他と違うから憧れて、幼い頃は会いたいと騒いでいた記憶はある。
 机の引き出しには、父親には内緒の鍵付きの引き出しに母親へのプレゼントが入っている。
幼稚園の時に作った母の日のプレゼントや、運動会でのメダルなどの自慢したい品々。

 なんで私をおいていったのか、とか、いつからいなくなってしまったのか、とか、聞きたいこともたくさんあるけれど、一つだけ。
恨んでないから、憎んでないから、好きだから会いたい。
この思いと自慢の品々をあなたに届けたい。


【あなたに届けたい】

1/29/2023, 1:22:24 PM

 沈んでいく太陽、だんだんと暗くなっていく空、キラキラと輝く海……そこに逆光で表情は見えないけれど、確かにそこにいる被写体の彼女。
 俺はひとしきりシャッターを切り満足すると、彼女は海辺からパタパタと砂浜の方に戻ってきた。
「いい写真撮れたー?」
 彼女は笑顔で俺の横につく。俺は一つ頷いた。
「ならよかったー、ベスポジだと思ったんだよ、あそこ」
 彼女はそう言うと、また波打ち際へと歩を進める。
すると、裸足のまま、砂に何かを書き始める。
「……なに書いてるの?」
 俺が問うと彼女は書きながら口を開く。
「あーい、える、おー、ぶーい、いー……」
 書いている文字を口に出す彼女、しかし
「あ!」
 書きかけだった文字が、ザーっと波で消されていく。彼女は、あーあ、と残念そうである。
「あとちょっとだったのにー」
 彼女は文字を消した波を蹴ってやる。飛沫が遠きに飛ぶ。
しかし俺は、書いていた文章を頭で整理すると、顔が暑くなった。
 残念そうな彼女の表情もまた、すごく可愛い。ほんと、自慢の彼女だ。
「俺もI Love……」
「ん? なに?」
「……なんでもない、さ、帰ろ」
 空はすっかり暗くなり、肌寒くなりつつあった。
俺も波打ち際へと向かい、彼女の手を繋いで、砂浜へと導いた。


【I LOVE…】
※【逆光】の続き

1/28/2023, 12:13:57 PM

 夜の街は危険だ。
人通りが多いところでもキャッチが多くいるし、人通りが少ないところだと奇声を発してる人やおかしな人もいる。
明かりが灯っているだけで足元や景色がはっきり見えるくらい、田舎以上に何がおこるかわからない。

 なのに私はどうして街へ出たのだろう。

 空気は汚いし治安は悪い。物価も高いし小競り合いも多い。
 交通のべんがよかったから? それくらいしか今考えたらそれくらいしか決定打がない気がしたが……

 あの時、街へ出た時は、憧れがあった。今はもうその憧れも消え失せて思い出せないけれど、当時には憧れがあった。
 あと、街は眠らない。つまりは、誰かしら人がいた。コンビニに行けば、飲食店へ行けば、どこかにいけば人と関われた。人との関わりが薄れてきた今、街へでればリアルに人と接することができた。

 危険だとわかっていても、憧れとふれあいを求めて、私のような田舎者はまた一人、街へと繰り出す人がいるのであろう。


【街へ】

1/27/2023, 10:54:20 AM

 小さい頃、親に「あなたは優しいね」と言われながら育った。
 例えば、小さいお友達におもちゃを貸してあげたり。
例えば、おじいちゃんの肩を揉んであげたり。
例えば、率先してお手伝いをしたら。

 大人になってからも、そういうことをしてきたはずなのに、いつからか「あなたは甘やかしすぎだよ」と言われるようになった。
 例えば、仕事が手こずっているようだから手伝ってあげたり。
例えば、誰かにご飯などをおごってみたり。
例えば、車を持っているから知人の送迎をしてみたり。

 自分からしたら思いやりの一環だったのに、周りからは都合のいい人にしかみられていないらしい。
優しさって、一体、どこからどこまでなのだろう。


【優しさ】

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