喜村

Open App
12/22/2022, 12:35:07 PM

 恋をした。初恋だ。
 初恋は実らないと言う。
僕の場合も、そうなのかもしれない。

 同じクラスの女の子。
背が小さくて、中学生なのにツインテールなんかしちゃってて、回りから、あざとい子、と半分いじめみたいなことをされている、とても可愛らしい女の子である。
 最初は恋だなんて思わなかった、ただ可愛いな、と、思っていたくらい。

 体育祭の終わり、彼女はみんなの打ち上げに、一人だけ声がかからなかったらしく、後ろの窓際の席で、ただ座っていた。
「ユウカ、先に打ち上げ会場行っちゃうよ~」
「うん、すぐ行く~」
 それだけ返して、教室には僕とその子だけになる。彼女は僕の方には目をくれず、ただぼんやりと外を眺めていた。
「ワタナベさんは、行かないの?」
 意を決して、僕は声をかけてみた。
すると、ようやくこちらに顔を向ける彼女。
「……私は呼ばれてないもの、私の分は人数に入ってないよ!」
 少し高い可愛らしい声で返してくれた。
「全員強制参加じゃないのか~、じゃぁ、僕も行かないことにしようかな」
 そう言って、僕はスマホをタップする。その行動に、大きな彼女の目が更に大きく丸くなっていた。
「……なに?」
「あ、いや、そんな簡単に断っちゃうんだ、って」
「ワタナベさんだけ呼ばれてないから行かないとかおかしいし、乗り気でもなかったし」
 そこまでいうと、彼女はボロボロと泣き始めていた。
「えぇ!? 僕、なんかした!?」
「ユウカちゃんは、優しいね!」
 泣いているのに笑顔の彼女。眉毛はハの字で口角は下がっているはずなのに、笑顔にみえた。
 僕はこの時、その不思議な感覚に陥る。
可愛らしい、だけじゃくて、守ってあげたい、側にいてあげたい、と。
 ひとしきり泣いた彼女は、はー、と息を吐いて口を開く。
「ユウカちゃんが男の子だったら、惚れちゃうところだったかも」
 ごめん、僕はそんな君に惚れちゃいました。
「これ、打ち上げの変わりにはならないと思うけど、のど飴あげる」
 彼女は、飴を渡してくれた。ゆずのど飴、すぐに袋をあけて舐めてみる。
 甘酸っぱくて、爽やかな味。僕はこの胸のときめきを落ち着かせるため、一つため息をついた。



【ゆずの香り】

12/21/2022, 11:32:45 AM

 とっても清々しい程の笑顔の君、
逆に凍てつくくらい冷たい表情の君、
無表情で怒ってるかどうかわからない君、
大泣きしてわんわん涙を流す君。

 僕はいろんな表情の君を知ってるよ。

 真っ暗なのに漆黒までいかない仄かな明るさの君、
ようやくお目覚めの明るい君、
元気をみんなに振りまく君、
また明日ねと囁く君。

 君は時間帯によっても、いろんな表情を見せてくれる。

 人は君のことを『大空』という。
そんなに大きいかな? 僕の方が大きいと思うけど。
でも、確かに、美しい表情を見せてくれる空は、とっても綺麗で。
ちっぽけな地球の空のはずだけど、それは大きく僕にも見えた。

 偉そうだな、何様?、だって?
名乗ってなかったね、僕の名前は宇宙だよ。
僕にも大空があったら、もっともっと美しくなったかな?


【大空】

12/20/2022, 10:26:46 AM

 夜中のコンビニ、店員が一人もいないのだが……俺は、おにぎりと飲み物を持ったまま、レジの前で立ち尽くした。
 普通なら、品出しをしてたり、とりあえずどこかの清掃をしてたりと、誰かしら一人くらい店員がいるものであろう。
 俺は、顔だけ自動ドアから出て、外のゴミ箱の方を見てみる、しかし、いない。
少し外に出ただけなのに、一気に体が冷える。
 さっさと買って車に戻りたいのに……
 もう一度、仕方なしにレジへと行く。すると、最初は気づかなかったが、レジカウンターに
『ご用の場合は、こちらのボタンを押してください』
と、ボタンがおいてあった。
 人件費削減か、最近はこういうのが主流なのだろうか、気づかなかった俺も悪いので、ちょっと気まずくなりつつボタンを押した。

シャンシャンシャンシャン……

 サンタクロースが登場するかのような、ベルの音がした。
 時期が時期だからなのだろうか、いやしかし、こんなので和んでしまう俺って、疲れているのだろうか。
 とりあえず、面白半分でもう一回押してみた。

シャンシャンシャンシャン……

 童心に戻れる、楽しい呼び出しボタンであった。



【ベルの音】

12/19/2022, 10:46:39 AM

 暗い、それに、とても静かだ。
夜23時。都会であれば、まだ電車は通っているし、スーパーや飲食店だってやっているだろう。
 しかしここは片田舎。コンビニの明かりを見つけるのも大変な程である。
 夜になると、人はネガティブになりやすい。俺もその一人である。
 サークルの少し早い忘年会に参加をしたら、こんな時間。あたりは真っ暗でアルコールが入っているのに、男一人で家路につく虚しさ。
 時期は12月。寒い。寒さがより一層ネガティブになれる。
 そして何より寂しさに拍車をかけたのは、自宅のきらびやかなイルミネーションである。
シラフで家に帰る時でさえ、帰りづらいというのに、夜中に目映い光で俺をお出迎えしてくれる。
一種の賢者タイムに陥りそうになった。
 これがお泊まりデートでお出迎えしてくれる、とかなら、なんてロマンチックなのだろう。
しかしそれが、彼女なしの呑んできて酔っ払った、つい最近まで青春してた年頃の男だ。
 暗いし寒いし、全くもって、俺は--
「寂しー……」
 イルミネーションに見とれていた訳ではない、自分の虚しさと寂しさで、俺は自宅のお出迎え電飾に、そう呟いた。

【寂しさ】

以前の「イルミネーション」の続編

12/18/2022, 10:51:29 AM

 夏といえば、海! 山! 祭り!
イベントの日というイベントの日、というのはお盆くらいだけど、とにかく毎日がみんなとワイワイできた。

 そして今は冬、クリスマス! お正月! バレンタインデー!
イベントの日が夏と違ってたくさんある。

 夏はみんなでワイワイやっていたけれど、冬はあなたといっしょに過ごす。
 みんなでいっしょに、も、もちろん楽しいけど、あなたといっしょに、も、とっても楽しいよね?

 さぁ、これから、冬のイベント本番だよ? どうしようか?
 クリスマスプレゼント選んで、お正月は初詣一緒に行こうね! バレンタインデーは張り切って頑張るから、ホワイトデーはよろしくね?
 冬はいっしょに、あなたとの大切な思い出をたくさん作るんだ♪


【冬はいっしょに】

Next