喜村

Open App

 暗い、それに、とても静かだ。
夜23時。都会であれば、まだ電車は通っているし、スーパーや飲食店だってやっているだろう。
 しかしここは片田舎。コンビニの明かりを見つけるのも大変な程である。
 夜になると、人はネガティブになりやすい。俺もその一人である。
 サークルの少し早い忘年会に参加をしたら、こんな時間。あたりは真っ暗でアルコールが入っているのに、男一人で家路につく虚しさ。
 時期は12月。寒い。寒さがより一層ネガティブになれる。
 そして何より寂しさに拍車をかけたのは、自宅のきらびやかなイルミネーションである。
シラフで家に帰る時でさえ、帰りづらいというのに、夜中に目映い光で俺をお出迎えしてくれる。
一種の賢者タイムに陥りそうになった。
 これがお泊まりデートでお出迎えしてくれる、とかなら、なんてロマンチックなのだろう。
しかしそれが、彼女なしの呑んできて酔っ払った、つい最近まで青春してた年頃の男だ。
 暗いし寒いし、全くもって、俺は--
「寂しー……」
 イルミネーションに見とれていた訳ではない、自分の虚しさと寂しさで、俺は自宅のお出迎え電飾に、そう呟いた。

【寂しさ】

以前の「イルミネーション」の続編

12/19/2022, 10:46:39 AM