シンと静まった真っ暗な会場に、突然とスポットライトが当たる
キラキラと光るのは、グランド・ピアノ
美しいドレスに身を包んだ女性が、一礼して、席に着く
両手を鍵盤に乗せた後、フウッと一呼吸を置いた
ダーン、ギャーン、ダッダッダ、ダッダッダ~♪
ピアノが鳴るや否や、一瞬にして心臓が震え、手に汗を握る
彼女の動きに、目が離せない
確かに、暗闇で、演奏を聞いてるだけのはず
が、彼女の奏でる旋律には、熱意や希望に満ち満ちた光を感じた
なんて光景なんだ……
青々とした木々、川のせせらぎ、鳥の囀ずり
まるで、森の中をゆったり歩いては、移り変わる景色のような
時に、勇ましい波の音、荒れ狂う嵐にも襲われるが
その中には、彼女の奏でる旋律に、生きる希望の光があった
まだ終わらない、まだ終わりじゃない
彼女の奏でる旋律は、演奏後も、私の胸の中で根付いていた
ー光輝け、暗闇でー
身体には不可欠な酸素
もし、世界から酸素がなくなったら……
と、考える時がある
もしも、酸素がこの世からなくなったら
たちまち、世界は死の世界へと変貌するだろう
オゾン層は破壊され、太陽の熱波は直に大地へと降り注ぎ
南極、北極の氷は溶け、得体の知れない微生物が放出されるが
もはや死の海と化した酸素のない海では、生存できないだろう
それは、海に生息してた魚介類や海藻類にも言える
たちまち海水面は上昇するが、もはや温水
湧き出た蒸気によって、雨雲は絶えず発生
酸素を含まない温水の雨が降り、地上に死の雨をもたらすだろう
地上も地上だ
酸素がなくなるということは、植物が全滅
すなわち、地に水を溜める機能が失われ
常に、熱風が吹き、地表が砂漠化になる事を示す
植物が生存できない世界では、酸素が作られない
もはや動植物の生存も、不可能であろう
もし、生存できてたとしても、
地上の灼熱地獄と脱水症状に耐えられず、
数時間と持たずして、死に至るだろう
水も、水として存在できておらず、
得体の知れない死の液体として、存在してるのだろう
そう考えると、必然とガスで覆われた木星が想像できる
もしかしたら、
母なる海で覆われた地球の未来は、木星なのかもしれない
もしも、世界から酸素がなくなったらを考えてみたが
考えれば考えるほど、酸素の重要性が分かってくる
酸素は、命の源でもある
ー酸素ー
俺は突然
海に投げ出された
沸き立つ波飛沫
沈み行く身体
踠いても踠いても
重く重く沈み行く
" 嫌だ‼ 死にたくない! "
無我夢中で掻き分ける海水
いつしか軽さを増してゆき
目の前を
桜の花びらが掠めた
" えっ……? "
目を見開くと
まだ幼い頃の私と
その手を引く
今なき祖父
その笑顔は
満開に咲き誇る桜よりも
優しく
暖かさで満たされていた
" じい……ちゃん…… "
ボコボコボコ……
目の前が気泡に遮られ
真っ白になる
" シーツ……? "
とある病室
真っ白なシーツの布団に横たわる
頭に包帯を巻いた
母の姿が
" かあ……さん…… "
今では元気に復帰したが
当時は死んでても可笑しくなかったと
医者から宣告されたほど
事故の傷は生々しかった
" あの時は、
なぜ俺じゃないんだと、責めてたな…… "
ボコボコボコ……
再び気泡に遮られる
今度は……
" だ……れ……? "
複数の人影が
ユラユラと揺れている
その姿は鮮明さを増し
" ……みんなっ‼ "
学生になった頃
お世話になった先生や友達
先輩や後輩
他校の友達などが
ユラユラと
鮮明さを増しては消えを
繰り返しては
代わる代わる
人が表れるのだ
" もう、会えないと思ってたのに…… "
小学生の頃に転校してったユウジ
その声も忘れかけてたのに
『また会おうって、言ったじゃないか』
と、ニコッと笑みを浮かべる
ああ、あの時から始まってたんだ
出逢いも別れも
その全てが
俺として生きる使命を
与えてくれたんだと
生きる希望を失いかけてた今
俺は
皆のためにも
生き直してみたいと思えた
ー記憶の海ー
大好きだよ
愛してるよ
誰よりも
この気持ちは
本当だから
嘘偽りのない
本命だから
あなたに誓うよ
大好きだよ
世界の誰よりも
愛してます
ーただ君だけー
小さな星々が光輝く空
小刻みに波打つ港
そこには
視える人にしか見えない
大きな幽霊船が存在する
1度乗船すれば
2度と戻れない
未来への船
乗ってしまえば
次第に雷雲を沸き起こし
渦巻き雲を呼び
真っ黒な嵐へと誘う
雷が鳴り響き
雨風が打ち付ける
死の海へ
辺りを照らす手がかりは
何もない
ただひたすら前へ前へ
幽霊船は軋みながら
ゆっくり進む
鍛なんてない
風を受ける帆もない
ただただ
幽霊船の進むがままに
ー未来への船ー