たくさんの落葉樹で
落ち葉が
道全体を覆い隠す
ダンプカーが
何台も何台も通りすぎゆく道
ある日
家族で車に乗り
落ち葉の生い茂る道へと
差し掛かった
ブルル……ギュルン……
エンジンをふかしながら
坂を上り降りするダンプ
その後ろを追いかける
私たちの車
落ち葉は
ダンプの風に煽られ
クルルン クルクル
渦を巻きながら舞い上がる
クルルン クルクル
踊り出す
クルルン クルクル
踊らされ
クルルン クルクル
宙を舞い
クルルン クルクル
円を描いて
クルルン クルクル
螺旋を描く
その光景は
魔法で踊らされてるみたいに
幻想的
いいものが見れたな
今年の紅葉は
色とりどりで綺麗だよ
ー落ち葉の道ー
どこに隠した その笑顔
どこに隠した その声を
どこに隠した その仕草
どこに隠した その心を
どこを探しても見渡しても
君という名の
個性は見当たらない
君はまるで
蝋人形のように
椅子に座っては
口だけ笑って
遥か彼方を見つめてる
その視線の先に
俺はいるのだろうか
それとも
ずっと先の
まだ見ぬ夢の果て
暖かな風がそよそよ吹き抜ける
青空と広大な草原の地を
ただただ
見つめ続けているのだろうか
そこにもし俺がいたなら
君は変ってくれてたのかな
変わってくれ
取り戻してくれ
君という名の
心を 個性を 人柄を
君が壊れてしまってから
俺の時は止まったまま
頼むから お願いだ
共に笑いあい
優しく励ましてくれた
笑顔あふれる君の個性を
どうか取り戻してくれ
君の心を 個性を 人柄を
この俺の前で見せてくれ
ー君が隠した鍵ー
彼女と散歩中、突然、靴紐がほどけた
何か不幸の前触れか?
それとも、俺の身代わりになってくれたのか?
初恋の彼女との散歩道
この恋が実ればいいのに──
ー靴紐ー
雨の中を、ひとりきりで泣いていた
他に人は見当たらない
そこにいるのは、自分と、打ち付ける雨だけ──
俺は、たったひとりの肉親を、雨の中で失った
母が駆け落ちしたのだ
俺の事は邪魔だからと
必死に引き留める俺の手を振り切って
母は行ってしまった
打ち付ける雨の中
俺はひとりきりで泣いた、泣いた、泣き続けた
泣いたって、母は戻って来ない……
そんなこと、分かりきっていたのに
涙と、抑えきれない感情に押し寄せられ
雨の中で、ワンワンと大声を上げて泣いた
来年から中学生になる
泣いてる場合じゃないのに……
けど、止められないんだ、溢れ出してくるんだ
唯一の肉親を、母を引き留められなかった
俺自身の無力さに、心が砕けそうで──
雨の中で、自分の意識を必死で留めていた
母への愛情が、憎しみへと変わらないように……
ーひとりきりー
荒んだ心のフィルターから覗く俺は
酷く顔色が悪く、妙に痩せこけて
やる気も気力もなくなった
まるで、ムンクの叫びのような姿
夜中、柳の木下で
ヨロヨロ、ヒョロヒョロ
お化けのようにさ迷い歩く
何の脈絡もなく、何の宛もなく
ただその場に居るだけ
周りは、俺を空気のように扱い
居ても居なくても変わらない風貌で
目の前を通りすぎて行く
俺は、確かに実在してるのに
何のために生まれたんだ──?
ーフィルターー