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2/16/2023, 11:53:46 AM

 俺は刑事だ。イタズラ程度のかわいいものから、些細な喧嘩から大怪我にまで繋がってしまったもの、数々の事件を取り扱ってきた。

 それこそ、目を覆いたくなるような悲惨な事件も。

 容疑者は、とある男性の恋人であった女性。凶器である刃物は、隠すことなく男の腹に深々と突き刺さっており、さらには指紋がべったりときたものだ。

 まるで、はなから隠す気がないように。

 女は、あっさりと犯行を認めた。事件は解決したのだ。

 そう、ここで終わっていれば、この事件が俺の記憶に残り続けることは、きっとなかったであろう。

 犯行の動機を聞くと、女は驚くほど落ち着いた様子でこう言った。

 私が、誰よりも彼のことを愛している。彼が、世間の目に晒されるのが耐えられなかった。だから、最期の死に様だけは、私だけのものにしたかった。誰にも、見せたくなかったのだと。

 テレビでは、痴情のもつれとして報道されていた。

2/13/2023, 10:33:52 AM

 必ず迎えに来るから、ここで待っててね

 そう言いながら私の頭を撫でて、あなたは車に乗って去っていった

 寂しくてお耳がペッタンコになっちゃうけど

 シッポもたらんとなっちゃうけど

 あなたの匂いがなくなって、毎日お腹がペコペコで

 雨に濡れて冷たいし、雷は怖くて思い出の毛布に鼻を埋めたくなるけれど

 最後までちゃんと待てが出来たら、あなたは絶対褒めてくれるって知っているから

 だから、待っているよ。私、我慢出来るよ

 もう毛並みはボサボサで、あまり触り心地はよくないかもしれないけど

 もう目が見えなくて、あなたが来ても気がつかないかもしれないけど

 脚が動かなくなって、もうあなたの元に駆け寄ってあげられないけど

 それでも、私は待っているよ

 記憶の中のあなたはいつも笑顔で、私は元気だったあの頃のままで

 そうしてあなたは、待てが出来たご褒美をくれるの

 お気に入りのおもちゃの横で、美味しいおやつを食べながら、あの大きな手で私の頭を撫でてくれるの

2/11/2023, 10:31:16 AM

 この場所で、夢を叶えてまた会おうと、みんなで誓い合った

 いつの間にか、夢を追っていたのは俺だけで

 かつての仲間たちはみな、堅実に仕事をこなし幸せな家庭を持っていた

 何もないのは俺だけだ。夢を追ったその先に、待っていたのは闇だった

 もういい、全て終わらせよう

 せめて最期は、思い出のあの場所で

 そう思い何十年かぶりにあの場所へと足を運ぶと

 そこには大きな団地が建っていた

2/8/2023, 12:14:32 PM

 君のスマイルは、いつだって僕を不幸にしてきた。

 与えられるから、奪われる。幸せがあるから、不幸になる。

 そうして全てを拒絶した僕を、君は何度拒否されようが構うことなく話しかけてきた。

 君を中心にたくさんの人が集まってきて、いつしか僕は抱えきれないほどのものを持っていた。

 それを無くすのが、怖かった。ずっとずっと、それを失うのを恐れていた。

 ほらやっぱり、僕は不幸になった。

 シワが刻みこまれた手、段々とかたく冷たくなっていく君の微笑みに、僕は声を殺して泣いた。

2/3/2023, 11:12:19 AM

 1000年先も、一緒にいようと

 約束していた彼女が死んだ

 僕は涙で海をつくり

 泣き声は風となって大地を駆けた

 もう2度と君に会うことはない

 そう思いこんでいた僕の魂を

 ポツンと1人で待っていたのは君だった

 一緒にあの世にいけるなら、1000年先だって待つんだと

 彼女は確かにそう言った

 2つの魂よりそいながら消えていき、最後残るは静寂だった

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