大人はブランコには乗れないと
大人になって初めて気づく
子どもの時だけの特権
もう二度と乗れぬと知っていたなら
もっとブランコに乗っていただろうか
高い高い空へと、力強く漕いでいけただろうか
私は首にロープをかける
人生の最期がブランコなら
ほんの少しだけでも報われるのではないか
あの日見た、真っ青な空へと昇っていけるのではないか
あなたに届けたい、この気持ち
あなたに届けたい、この感情
あなたに届けたい、このハート
あなたに届けたい、この心臓
ねえ、君は聞いてどうこたえるのかな
ねえ、君は知って何を想うのかな
ねえ、君は受けとってくれるかな
ねえ、君は驚いてくれるかな
I LOVE……。
この後に続く綴りを、僕はまだ知らない。
いつか、それを知る日がくるのだろうか。
埋まらないピースを求めるように、もがいて、足掻いて、眠れない夜を苦しんで。
そしてようやく、見つけたんだ。希望の鍵を。
それは君の心だって開けられるような、魔法の鍵だ。
カチャリと音を立てて、固く閉ざされていた扉が開く。
誰もいない部屋、テーブルの上に無造作に置かれている郵便物。
ああ、これでLOVEの続きを言える。
やっと知ることができたよ、君の名前。
街へ行こう。特に理由はないけれど。
街へ行こう。目的地もまだ決まってないけど。
人混みに揉まれて。
どこかの屋台から漂う匂いに浮き足立って。
買う予定はない服を延々眺めて。
普段は使わない凝った文房具なんかに興味を持っちゃったり。
そんな、何もない、でもかけがえのない時間を味わいたいから。
街へ行こう。
街へ行こう。
……その前にまずは、お布団から出よう。
昔から、親からも友達からも、優しくされたことなんてなかった。
だからきっと、自分も人に優しく接することが出来ない人間なのだろう。だって、優しさというものを知らないのだから。
転校して新しい学校、みんなから指をさされて笑われて、ひとりぼっちでいる君があまりにも惨めで可哀想で。
見てられないから、話し相手になってやった。
教科書を隠されて、どうして黙っていられる? 見つかるまで探してやった。
そんな感情を殺したような瞳で菓子パンを齧って、作った人に失礼だろう。一緒にお昼を食べてやった。
情けない存在。誰も優しくしてくれないのなら、自らが尖って生きていくしかないというのに、それすらしない。
自分とは正反対な君を見ていると、怒りと邪悪が混ざったような感情が、グルグル心を渦巻いて、声をかけずにはいられなかった。
そんなある日、君は言った。
──は、優しいね。
優しい? 自分が? 哀れみと同情でつき合っていたこの毎日は、優しさに溢れる日々だったのか?
優しさを知らない自分は、この行動が優しいのかどうか、判断が出来なかった。
そしてそれは、君も同様だ。哀れみの感情を、優しさと勘違いしてしまっただけかもしれない。
正解なんて分からないが、ただ一つだけは言える。
このお節介だけは、どうにも辞められそうにないことを。