昔から、親からも友達からも、優しくされたことなんてなかった。
だからきっと、自分も人に優しく接することが出来ない人間なのだろう。だって、優しさというものを知らないのだから。
転校して新しい学校、みんなから指をさされて笑われて、ひとりぼっちでいる君があまりにも惨めで可哀想で。
見てられないから、話し相手になってやった。
教科書を隠されて、どうして黙っていられる? 見つかるまで探してやった。
そんな感情を殺したような瞳で菓子パンを齧って、作った人に失礼だろう。一緒にお昼を食べてやった。
情けない存在。誰も優しくしてくれないのなら、自らが尖って生きていくしかないというのに、それすらしない。
自分とは正反対な君を見ていると、怒りと邪悪が混ざったような感情が、グルグル心を渦巻いて、声をかけずにはいられなかった。
そんなある日、君は言った。
──は、優しいね。
優しい? 自分が? 哀れみと同情でつき合っていたこの毎日は、優しさに溢れる日々だったのか?
優しさを知らない自分は、この行動が優しいのかどうか、判断が出来なかった。
そしてそれは、君も同様だ。哀れみの感情を、優しさと勘違いしてしまっただけかもしれない。
正解なんて分からないが、ただ一つだけは言える。
このお節介だけは、どうにも辞められそうにないことを。
1/27/2023, 1:15:58 PM