俺は刑事だ。イタズラ程度のかわいいものから、些細な喧嘩から大怪我にまで繋がってしまったもの、数々の事件を取り扱ってきた。
それこそ、目を覆いたくなるような悲惨な事件も。
容疑者は、とある男性の恋人であった女性。凶器である刃物は、隠すことなく男の腹に深々と突き刺さっており、さらには指紋がべったりときたものだ。
まるで、はなから隠す気がないように。
女は、あっさりと犯行を認めた。事件は解決したのだ。
そう、ここで終わっていれば、この事件が俺の記憶に残り続けることは、きっとなかったであろう。
犯行の動機を聞くと、女は驚くほど落ち着いた様子でこう言った。
私が、誰よりも彼のことを愛している。彼が、世間の目に晒されるのが耐えられなかった。だから、最期の死に様だけは、私だけのものにしたかった。誰にも、見せたくなかったのだと。
テレビでは、痴情のもつれとして報道されていた。
2/16/2023, 11:53:46 AM