本当に、こちらの世界に彼女が来た。
あちらの世界のテレビで見た彼女の戦う姿が、目の前に広がる。
彼女の仲間の個性という魔法のような能力が次々と繰り出される
。
「うわ…」
ほかの執事のドン引きしたような呟きを聞いて思わず笑ってしまった。
彼女の戦い方は本当に…躊躇ない。
あんなにカッコイイセリフを言った直後天使に向かって一直線。
顔面を掴み、爆破させたのだ。
そのあとは
つづく
(本日、今までとは違う世界線より)
ここ数ヶ月、仕事が辛いと思う度に涙が出ていたが
今ではもうその涙すら出なくなった。
朝が来るのが辛い。夜はお腹が痛い。
私の仕事はなんだろう。
私はきっと贅沢なんだ。仕事は選べるほどある。
けど、全て自分はサブ扱い。誰かが居なかった時の代わりでしかなく、
関与してなかった際の責任対象となっていた。
被害妄想なのかもしれない。けど、私の主張は通らない。
あの子、忙しいって言ってるけど何が忙しいのか分からないよね。
陰口も言われ慣れた。
私の代わりしかいない場所にいつまでもいて、何になるのだろう。
頭で考えていても、私の居場所はここしかないと思ってしまっていた。
そんな時に彼らに出会った。
「俺は、どんなときも主様の味方っすよ。」
彼らのお陰で私は前を向くことが出来た。
ーー
続きはまた明日
懐かしく思うことなんてもう無い
なぜなら、会いたくてたまらなかった彼女がこの世界に来てくれたから。
『…私が来た、なんてね』
「!…っ…」
涙が溢れて止まらない、今声を発しても情けない声が出るだけだ。もう夢だとしてもいいと思った。
これが走馬灯だとしても構わない。また彼女に会えたから。
「!?誰だ…なぜ俺たちを助ける?」
「でも、ありがたいですよボスキさん!!とりあえず、話は天使を片付けてからです!!」
2人の声が遠くに聞こえる。
『この白いのがこの世界のヴィラン、なのかな?』
けど、彼女の凛とした声はハッキリと聞こえた。
「そうっす、俺たちの世界の敵…天使っす」
答えると彼女は俺を抱えて安全な所に一瞬で運んだ。
『待ってて』
そう告げる彼女はとても頼もしくて、思わず気が抜けてしまいそうになったが、慌てて気を引き締め直す
「天使の攻撃を受けちゃダメっす、跡形もなく消えるんで…」
『うん、わかった』
「俺もっ…」
『今だけは、守らせてよ』
せっかく君の世界に助けに来れたんだから
呟く彼女の目は少し潤んでいた気がした。
『アモンがまた1人で泣く時が来ないように私がそばにいるよ』
ミルクティーの入ったマグカップを包み込んでる俺の手包み込んで彼女が微笑んだ。
「…またあの時の夢」
あれから数ヶ月経った。
デビルズパレスは今日もまだ見ぬ主様を待っている。
いつものように起きて花の手入れをする日常に戻った。
朝のトレーニングをし、花の手入れをし、仲間と他愛の無い話をする。ボスキさんはまだ俺の心配をしているようだが俺の体はもう元の生活が送れるくらいに回復していた。
もう、あの楽しかった日々は幻想だった、理想だった、夢だったと、必死に忘れるようにする度に、胸が痛くなるため
考えることをやめた。
そんな日に
天使の出現の警報が鳴った。
デビルズパレスの近くで複数の天使の出現。
久しぶりに俺も天使の討伐に参加することになった。
ボスキさんに心配されたが、いつまでもパレスの中でお荷物でいる訳にはいかない。
まだ休んでもいいとハウレスさんに言われたが、無理を言って申し出た。
1匹、2匹、夢中になって鞭をしならせ天使を攻撃する。
自分でも怖いくらい軽やかに動けた。
この姿を彼女が見たらどう思うか、褒めてくれるか、なんて一瞬考えた隙をほかの天使は見逃さなかった
「アモンさん!!!!危ねぇ!!!」
ロノの声が遠くに聴こえる。眩い光に目が眩み、天使の攻撃をまともに受けそうになった時。
『爆破!!!』
ずっと聴きたかった声が聴こえた。
目の前にはずっと会いたかった姿が見える。
『私が来た。…なーんてね。』
-もう一つの物語-
-暗がりの中で-
ぐすっ…ぐすっ…
暗闇で誰かが泣いている声がした
どうしたの、泣かないで…
目を開けるとほんの微かに泣いている声が聴こえた。
夢、じゃなかった。時計を見ると深夜3時。
寝室からそっと出るとリビングも、彼のいる別室も真っ暗だ。
ふっ……うっ…ぐすっ…
彼のいる部屋から聴こえる声に段々目が冴えてくる。
ぼんやり優しいルームライトを付けて、お湯を沸かした。
お湯をティーポットに入れて容器を温め、茶葉を取り出す。
落ち着く匂いは…この匂いかな…と、アッサムを選んだ。
茶葉を多めに取り、コップに少量お湯を注ぎ茶葉を浸す。
牛乳と水を2:1で注ぎ沸騰しないように混ぜながら鍋で温める
ふつふつし始めたら火を止め、茶葉を合わせ抽出。
確か…5分くらい?だったはず
その間にお茶菓子を漁り、この間お土産でもらったフィナンシェを取り出す。
あとは…
『創造ーー』
やおももちゃんの能力のコピー。
この能力は本当に凄いと思う。ふわふわ素材のぬいぐるみを創造し大きすぎるクマのぬいぐるみを作った。
リビングに私の部屋に彼によって置かれた花を持ち出し飾る。
綺麗にティーセットを並べた。
抽出した紅茶をティーポットに淹れ、準備はok
クマのぬいぐるみを抱えながらアモンの部屋へ向かった。
コンコンっ
と控えめにノックをすると泣き声がピタッと止まる。
狸寝入りをするつもりかな…勿論、そんなことは私が許さない。
そっとドアを開けて
『真夜中のお茶会でもどう?頑張って準備したんだ。…待ってるよ』
そっと呟いてリビングに戻った。
彼はきっと来てくれるだろう。
数分と経たずに、彼がリビングに来た。いつものような明るい笑顔は無く、表情は暗かった。
『おいでアモン、教えてもらった紅茶の淹れ方で用意したんだ。』
立ち上がるとビクッと彼の肩が揺れた。
それを見て、なるべく刺激しないよう、アモンに座ってもらうために椅子を引く
『今日は私がおもてなし。さぁ、どうぞ』
「……」
静かにアモンは近づき、椅子に座った。
紅茶を注ぐと、彼の前髪が揺れる。