とーる

Open App
4/1/2024, 11:00:41 AM

「あのさ」
心地よい沈黙を破った気まずそうな君の声
「あのー…すごーく言いづらいんだけど…言わなきゃいけないことがあってさ」
なんだろう、これは嫌な予感がするぞ…
「付き合ってそろそろ3ヶ月くらい経つじゃん?でも…その…もう君のこと好きじゃないっていうか…なんと言うか…その…」
「別れたい?」
「え、あ、えっと、そ、そういうんじゃなくて、その」
「違うの?」
「うん、違くて…でも…うーん…」
言いたいことはよくわかる
何しようとしてるかもよくわかる
ただ、
「ついていい嘘と、悪い嘘があるよね?」
「…はい…すみませんでした…」
今日はエイプリールフール
必死に慣れない嘘を捻り出そうとする君はかわいらしかった
素直で純粋でわかりやすい君でよかった
「少し、傷ついた」
「ごめんなさい」
「一瞬騙された、マジのやつかと思った」
「マジじゃないです」
そんな悲しそうな顔するくらいならそんな嘘つくなよな…
「でもね、ちゃんと意味があるんだよ」
「ほう、どんな?」
「エイプリールプールでついた嘘は1年間、あるいは一生、現実にはならないって言われてて、だから、その…」
恥ずかしそうにモゴモゴ話す君がなんだかおかしくて、愛おしくて
「ふふっ」
「え!な、何がおかしかったのさ!」
「顔真っ赤だよ、ふふっ」
「うっ…あーもー…からかわないでよ…」
「要するにさっきの嘘は告白に近いものだったって言いたいの?」
「…ハイ、ソウデス…」
「ありがとう」
「……」
俯いて顔を見られないようにするので精一杯か
耳まで真っ赤だ
そんな君が
「そーゆーとこ、嫌いだわ」
「へぁ!?」
「嘘だよ嘘…逆の意味、好きだよ」
「よかった…」
深いため息とともにこちらに倒れてくる君を優しく抱きしめる
君の願いを心に刻みながら

3/31/2024, 12:22:50 PM

幸せとは
人生の命題とも言えるであろうこの問いに何度頭を悩ませただろう
金さえあれば幸せか
愛さえあれば幸せか
生きていけさえすれば幸せか
死ぬことこそが幸せか
家族がいれば幸せか
結婚すれば幸せか
恋人がいれば幸せか
一人のほうが幸せか
いい会社に就職できれば幸せか
自分の好きなように生きれば幸せか
幸せとは何なのだろう
思わず眉間にシワが寄る
「…怒ってるの…?」
…言うと思ったよ
少し怯えたように顔を覗き込む君を見て目元を緩ます
「怒ってない、少し考え事してただけ」
少しぶっきらぼうな言い方になるのは許してほしい
自分の世界に浸ったあとはどうも遠慮がなくなってしまう
直したいけれどなかなかうまくいかない
あぁ、いけない、また考え事が止まらなくなるところだった
そう、と言って肩に頭を預ける君
「疲れてるの?」
「うん…ちょっと…ね、いろいろあってさ」
困ったような顔でモゴモゴと話す君はなんだかかわいらしく思える
あ、そうだ
「あのさ」
「ん?」
「考え事…」
「考え事?」
「さっき、考えてたんだけどさ」
「うん」
「幸せってなんだと思う?」
「幸せ…幸せ…ねぇ…」
君は唇をふにふに触りながら目を閉じて思考に耽る
一緒になってもう一度考えた
「あ」
「?何か思いついたの?」
「うん、今、一緒にいるこの時間が、幸せなんじゃないかなって思ったんだけど…どうだろう」
どうだろう、とは言いつつだいぶ自信があるみたいだ
「照れるなぁ」
「…なんか恥ずかしくなってきたから今のナシ!」
君は少し顔を赤らめて発言を撤回しようとするけれど
「実は全く同じこと考えてた」
こらえきれず二人同時に吹き出す
あぁ、これが幸せか
長く…できるだけ長くこうしていたい
君と一緒に、幸せに

3/30/2024, 1:32:47 PM

人との関係はお互いの努力の上に成り立つもの
そう思ってきた
だから君といるとき
どれだけ腹が立っても
どれだけ悲しくなっても
どれだけ苦しくても
どれだけ涙が流れそうになっても
必死に何気ないふりをして誤魔化した
その代わり明るい感情は
誤魔化したりなんかせずに素直に表に出すようにした
普段感情を押し殺しているから少し難しかったけれど
君の隣ならなんだか自然にできていたと思う
そんな気がしてる
…いや、勝手にこちらが思い込んでいただけだった
隠しきれてはいなかったようだ
壊れないように、壊さないように
バレないように、隠し通せるように
努力してきたつもりだったけれど
君は隠すのがうまいよね
君は全部知ってたんだ

「無理しないで」
「隠す必要なんてない」

心配そうな困ったような微笑み
耳が溶けそうな優しい声
無機質な人形じゃない、人の温もり
包み込むように握られた右手
頭の左半分を覆う大きくて柔らかい手の感触
何気ないふり、なんてできるわけがなかった
君の胸元を濡らしていくこの涙を、とめることはできなかった

3/30/2024, 8:00:17 AM

ボクが君を助けてあげるよ
苦しいの?
ツライの?
痛いの?
怖いの?
大丈夫さ!君にはボクがいるからね
だからそんなに泣かないで?
ボクは君の味方さ
永遠にね、ふふっ

そう言って私の目の前に舞い降りたのは
膝から下が透けた天使だった
羽も天使の輪もないけれど
私にはわかるんだ、この子はこの世のものじゃない
けれどどこか懐かしさを感じる
なぜだろう、誰かに似ているような…

ねぇ、君はどんな終わりがほしいんだい?
ボクは君に、君の理想の終わりを提供できるんだ
いつどこでどんなふうに人生の幕を下ろしたい?

ニコニコしながらなかなかぶっとんだことを言うこの天使は
ああ、そうだ
君は

…ほほぅ…老衰…
いいね!それが一番痛くも苦しくも辛くもない!
…へえぇ〜ボクと一緒に、死ぬまで…

目を丸くしながらも嬉しそうに照れたようにはにかむ君は
あの日私の目の前で、交通事故で亡くなった恋人そのものだった

ん?え、だ、ど、どうしたの?なんで、泣いて…?

無言でボロボロ涙を流す私と慌てふためく君
なんだかおかしくて号泣しながら笑いが止まらなくなった
そんな私の様子にさらに混乱する君
あぁ、また会えた
あぁ、これが幸せなんだろうか
涙を拭って君に抱きつく
「ありがとう」
掠れた感謝は君に届いただろうか

…うん、どういたしまして

落ち着きを取り戻し穏やかな表情で私の頭を撫でる君
思い…出したのか…?
いや、そんなことはどうでもいいんだ
背中にまわした腕に力を入れる
腕の中の温もりに顔を埋めてまた涙を流した
私の背中を、頭を、優しく撫で続ける君の手はあの頃と変わらない
ふっくらした丸い手
君はこの手を嫌いだと言っていたけれど
私は今でも大好きなんだ

…そろそろだよ

うん、わかってる
意識が少しずつ遠のいていくのがわかる
なんて幸せな最後なんだろう

…おやすみ、──

私は意識を手放した

3/29/2024, 3:29:18 AM

遠くに見える君の後ろ姿
いつもと何も変わらない
ゆったりふらふら動く君がかわいらしくて
ふっと口元が緩む
君は気づかない
はずなのに
ふと君が振り向いた
一瞬目が合う
慌てて目を逸らす
視線を感じる
まだ見てる?
そっと視線を君に戻す
また目が合った
君は少し微笑んだ
かわいい
かわいいんだけどさ…
さっと目を逸らしてなんでもないように装う
気持ち悪いニヤけた顔も無理やり噛み殺して真顔に戻す
その辺の時計とかに目をやってみたりする
バレバレのぎこちない誤魔化しは君の目にどう写っているんだろう
考えただけで恥ずかしくて死ねる
遠くから見ているだけで十分なんだ
近づこうなんて烏滸がましい考えはないんだ
こちらの一方的な気持ちを押し付けるつもりはないから
だから
お願いだから
そんな顔を見せないで
そんな優しい目で見つめないで
そんな眩しい眼差しを向けないで
見つめられると逸らしたくなるから
もっと愛想良く微笑み返したりとかができたらと思いながら
全力で君から目を逸し続けた
君がもうこちらを見ていないとわかってからも

Next