或る本の巣、模写。

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6/10/2025, 5:03:29 PM

美しい君の横顔を
残しておきたくて
彫刻刀で机に刻む。

「せんせー!前田が女の裸を机に掘ってマース」

残酷な勘違いは
恋の終わりを告げた。

違うんです!
これは。。。

言いたくても
言えなかった。

成人式の二次会で

「前田くん、あの時ほんとはさ」

大人になったひろこちゃんは、さらに美しさを増していた。

「あたしのこと見てたのかと思ってた、ちがう?」

なんのこと?と
とぼけたくなったが
潤んだ瞳に
吸い込まれて

「そうだよ、今もスケッチしたいくらい」

ふふ、と彼女は目尻に皺を寄せた。


=========


あの時が
一瞬にして
色づいた
机の上に
彫った横顔


この恋が
今こそ 叶いますよように
年の分だけ
丸くなった刃

3/20/2025, 12:10:04 PM

透明


な花束を渡した。
伝わるわけもない。

それが私から彼への気持ち。

7/3/2024, 3:45:05 PM

「この道の先にラピュタはあるんだ」


「なにそれ?」


「……」


「ねぇ、今のなに??」


「いや、好きかと思って」


「……好きだけどwwそんだけ?」


「 うん 」


少し恥ずかしそうに、いやだいぶ恥ずかしそうに、ぎゅっとハンドルを握りしめて、じっと赤信号とにらめっこをしている彼の横顔をにんまりと笑いながら見つめていた。
小さい頃、信じ続けていればいつか[天空の城ラピュタ]に行く機会が巡ってくると思っていた。だけど、現実は残酷なほど現実だった。

小、中、高と大学をそれなりの時間を経て、社会人になった今。ル・シータ症候群になんてかかっていられない。私はシータになるチャンスをもう失ったのだ。赤信号で止まるわけにはいかない。


「ついたよ」


「え、あ。ほんとだ」


豊橋駅20:26新幹線の出発まではあと約40分。駅直結の地下駐車場にいつの間にかついていた。車内には彼が10代の頃にまとめたというプレイリストが流れている。


「サヨナラCOLOR、懐かしい」


「そうだね」


________________

 そこから旅立つことは
 とても力がいるよ
 波風たてられること
 嫌う人ばかりで
 サヨナラから始められることが
 たくさんあるんだよ
________________


そうだねと相槌を打ってみたけど初めて聞いた曲だった。だからこそ耳を澄ませてしまった。ダメだ、泣きそうだ。

本当は離れるために閉じていくこの時間がきらいだ。車内ではもう次の曲が始まっていた。


「ほら、行く準備して?」


頭にポンと置いてくれた手がすき。その手に甘え続けられたなら。


「うん」


ゴソゴソ、ガサガサ。
助手席ではこれ以上時間を稼げそうにない。もう席を立たないと。シートベルトを外し、ドアノブに手をかける。

だけど……。

振り向いて彼を見る。
きょとんとしている彼の懐に飛び込んで思い切りぎゅっと抱きついた。


「どうしたの、寂しくなっちゃった?」


「……」


「よしよし、いいこww」


「ちがうもん!フラップターで助けに来てくれたパズーから離れないシータの真似だもん」


ぎゅっに対して、ぎゅっを返してくれる彼の腕の中を抜け出すと、さっきまでの私みたいなにんまり顔の彼がいた。


「バルス!!!」


「照れ隠しが物騒すぎるでしょっww」


「だって!」


「さっきの仕返しだよ」


優しいハグと同じ気持ちのキスをして、車を降りた。まだ少し早いからタリーズコーヒーで季節限定品をおいしいおいしい!と飲み、明日は晴れるかなとか距離があることも忘れて話した。あっという間に時間になり、改札の前で次も早めに予定合わせられるといいね、なんて言って手を振った。

ホームに降りてまもなく、新幹線は定刻通りにきた。手元のチケットと自分の指定席の番号が合っているか3回確認して、席に着く。スマホの充電は特に必要ない。

新幹線は発車する。
赤信号が青に変わった。
私も同じく、前を向いている。
彼も同じく、きっと前を。

6/26/2024, 12:01:31 PM

【トロッコ問題】


もし5人の元彼と
自分を比べられた時
あなたはどうする?

あやかはいい女だ。
顔もいいし、センスもいい。
体の相性も格別だ。

しかし
一つだけ難点がある。

何かにつけて過去と
現在を比べたがるのだ。

チャラついた合コンで
出会った俺たちが
体の関係を持った後に
初めてのまともなデートで
映画館に行こう言った時。

甘々の恋愛ものが好きそうな
彼女が実はホラーが大好物で
それに対して「意外だね」と
言ってしまったことがあった。
あやかはひどく憤慨し、拗ねた。

「マサくんは決めつけたりしない人だった」

座席を選ぶ時
当然のように
目線の高さより少し上の
J列真ん中を選ぼうとした時は

「映画館で働いてた優くんが通路の前側が1番いいって言ってたよ」

いつも食べるソルトポップコーンを
注文した時は
「バターオイル多めで」と、
こなれた感じでいうものだから
「乙な頼み方だね」と褒めてみた。

「ハルトくんが教えてくれたの、グルメ情報助かるよね」

入場ゲート前のトイレより
劇場内に入ってからの
トイレの方が空いているのは京介くんから。

腹は立たなかった。
あやかがもう
過去のものとして語っているから。
だけど気持ちのいいもんじゃなかった。
ここまで名前を出されると
流石に嫌な気持ちになった。
映画も半ば集中できぬまま
エンドロールを見送った。

人ごみが8割ほど捌けるのを待って
立ち上がり映画館を出た。
 
普通はここで
感想を伝えあったりするだろうが
俺はずっと腹にあったことを伝えた。

「あのさ、元彼の話あんま聞きたくないかも」

「え」

「やっぱ比べられてるみたいできついや」

「そっか、ごめん。……でも、嬉しい」

「なんで?」

「それ言ってくれたの、2人目」

たかしくんも優しいんだね。
そう言ってあやかはとても優しく笑った。

はて困った。
俺はこの女が好きだが、嫌いだ。

この女は、
過去の妄執に取り憑かれながら
俺の隣にいる。

少なくても5人の男たちが敷いてきた
線路の上に立っていて
いつしか線路を敷く側に回って


あやかにとって俺が
知識の泉に、経験値になって
この女に溶け込んでいくのかもしれない。

6/25/2024, 4:15:26 PM

6月25日(火)短歌
テーマ
【夕立 七夕 桃】

桃食むと
思い出される
シワの手を
今年も思い出せるしあわせ

→おばあちゃんに桃をむいてもらった。桃を食べると思い出す、手のしわもその優しさも。


うっせぇわ
友と口論
フルボッコ
リセットボタンは
夕立の傘

→フルボッコが思い浮かんだらもうね、ダメだったw 囚われてしまいました。運動部の仲間同士ぶつかっちゃったのかな?言葉で喧嘩をしちゃって、でも突然の雨で傘をシェアして帰る。言いたいこと言ったら夕立が晴れる前に2人は肩を組んでると思う。


私たち
会えないんじゃない
会わないの
七夕の雨
鳴らない通知

→七夕は雨が多いらしい。だけどきっと雨雲の上では織姫と彦星は結ばれている、私たちはその選択を選ばないけれど。


【ここからは番外編?】

この夏も
暑し涼しの 応酬に
勝てるのか俺、負けるかも俺

→自分は気をつけていても、暑いところから涼しい場所へ、またその逆だって体には大きな負担。どうかみんな気をつけて!


夕立に 打たれて帰る
エコバック
チキンカツだけ
死守すりゃ勝ちよ

→アワチンの献立より。
夕立に降られたサラリーマンの今日の戦利品は揚げたてのチキンカツ。しける前に、冷める前に家路を急げ!


「すぐだから」 台所から 届く声
胃袋はすでに ぎゅっと掴まれて

→恋人にしろ夫婦にしろ、キッチンから聞こえるこの声は好きでしょ。ちなみに私は豚汁と餃子が得意。


解説をつけると長くなっちゃう。ここまでお読みいただきありがとうございます。また、次のお遊びでお会いしましょう🩷

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