【お題:花咲いて】
花が咲くと書き花咲(かえ)。それが私の名前。
「花咲~?いる~?」
大声で私を呼ぶ声。いつも言ってるがチャイムをならしてくれ。近所迷惑だ。
「いるよ~。ちょっと待っててー」
「分かった!」
「さ~て、フラワーパークに行くよ!レッツゴー!」
「オー」
「テンション低いね~花咲は」
「はぁ。咲希がテンション高いだけだから」
「あっ、電車きた。」
「話をそらさないの」
「まあまあ、フラワーパーク行くんだから。そんなカッカしなぁいの」
「咲希のせいなんだけど」
「ははは、ご冗談を」
「冗談じゃないよ。」
「...すんません。」
「はぁ。しょうがないな。許す」
「ありがと~花咲~」
「暑い」
「もう、つれないなー」
「はぁ。」
私はまた一つ溜め息をこぼした。
「そういえばさ、私たちって名前似てるよね」
「え?咲希と花咲って似てないと思うけど」
「いやいや、私の名字って花里じゃん?ふたリとも花と咲って入ってるなーって」
「そうだね。」
「花咲ってどうしてその名前になったの?」
「お父さんがお母さんにプロポーズしたのがフラワーパークで、私が生まれたときお母さんが好きな花がちょうど
咲く季節で、じゃあ、花が咲くって書いて花咲にしようってなったんだって。」
「ひゃー、花咲のお父さんここでプロポーズしたんだ!ステキじゃぁ~ん」
「なんかウザい」
「でも、なんか花が咲いて、花咲が生まれたって感じしていいんじゃない?」
「よく分からん」
「ええー!なんでよ!!!!!!!!!!!」
...花咲いて花咲。ちょっといいかもな。
【お題:もしもタイムマシンがあったなら】
「もし、タイムマシンがあって使えたらなにしたい?」
ふと、隣の席の藤矢君がそう質問してきた。
「どうしたの?急にそんな質問して」
「いやぁ、昨日見たテレビ番組でタイムマシンの話しててさ、桜さんならどうするのかなって」
「私がもし使えたら?う~んそうだね~...う~ん」
「そんな真剣に考えなくていいんだよ?」
「もし使えたら、あの日妹に奪われたプリンを取り返しに行くかな」
そうやって真剣に考えた答えを返した。
「規模ちっさ!」
「ちっちゃくないよ!」
藤矢君はお腹を抱えて笑っている。なんだこいつ。失礼だな。
「いやあ、笑った笑ったw」
「失礼だなお前」
「だってせっかくタイムマシン使えるって言うのにプリン取り返すだけってw」
「だってすっごく楽しみにしてたんだもん!」
お腹を抱えてめっちゃ笑っている藤矢君と口いっぱい膨らまして怒る私。
めっちゃムカついたけど、なんだか嫌な感じはしなかった。
「ってことがあったよね。秋くん」
「いやいつの話だよ!」
「中学の頃だって!」
「そもそも俺さんづけで桜のこと呼んでたっけ?」
「秋くんが私のこと桜って呼んでたら、そこら辺の男子にお前ら付き合ってんの~?って
馬鹿にされたからさんをつけて呼び始めたんじゃん」
「そういえばそんなこともあったな...」
「あれめっちゃ笑われてムカついたんだよね」
「すまんって」
「許す」
「...そういえばさ、今タイムマシンが使えたらなにしたい?」
「う~ん、そうだな~...え~どうしよっかな~」
「真剣に考えなくっていいんだぞ?」
「決めた!この子の成長を見に行くかな、未来に!」
「見にくとしてもどのくらいの時を見に行きたいんだ?」
「中学生になるくらいかな~」
「そしたら後12年後位だな」
「ひゃー長いね~」
「まあ気長に待とうぜ。この子が成長するのを、さ。」
「そうだね。紬ちゃん、起きてるかな?」
「にっこにこだな」
「ご機嫌なの?よかったね~」
「ママがきてご機嫌になったな。紬」
「そうなの?でもパパがいるから嬉しいもんね」
「いやいや、お前がいるからだろ」
「いやいや、パパがいるからですう~」
「「あははっ」」
「どっちもいるからご機嫌ってことにしようか」
「そうだな」
紬ちゃん。私たちの大事な宝物。ちゃんと大きくなるんだよ
「さ~て、そろそろ寝よっか」
「そうだな」
始めて名前をもらった日 【お題:私の名前】
名前。人を識別するための呼称。重要じゃないもの。なのになぜ、
「う~ん、どうしよっかな~」
なぜこの“人”はこんなにも悩んでいるのだろう。
「アリス様、もう悩み始めて30分53秒が経っております。」
「え~!?もうそんなに経っちゃったの!?」
「はい。別に適当に決めてしまえばよいのではないですか?」
「そんなわけには行かないって!だってあなたの名前を着けてるんだよ?」
「私はなんでもいいです。」
「そんなこと言わないの!名前って重要なんだから!」
「...?名前と言うのは個体を簡単に識別するためのものだと聞きました。なら分かればなんでもよいのではないですか?」
「そんなわけないでしょ!誰よ!私のドールにそんなこと吹き込んだやつ!」
ドール。ある人によって創られた貴族の従者。命と知識を吹き込まれ、ドールは人間のように動く。
感情は個体差があり、もとからあるタイプと成長する過程で感情が芽生えるパターンがあるらしい。
各言う私もドール。アリス様に配属された。姿形も全く別で違う存在だと思い知らされる。
「あっ、決めた!あなたの名前はソフィアよ!」
「ソフィア?」
「ええ、いい名前でしょう?」
「ソフィアですね。覚えました。」
「ええソフィア、出掛けましょう!」
「何処にですか?」
「ええっと、う~んと、何処か!」
「適当ですね。」
「まあ出掛けてから決めたらいいじゃない」
「じゃあ外出の準備をしてきます。」
「は~い、言ってらっしゃい。ソフィア」
...名前なんて重要じゃない。だけど、アリス様に着けてもらったこの名前、
「大事にしなきゃ...いけませんね...」
透明な友達 【お題:視線の先には】
君はいつも何処かを見ている。視線の先にはなにもない。しかし君は楽しそうに笑っている。
「おーい、海」
「...!空くん!」
「何してたの?」
「え~、特になにもしてないよ~」
「じゃあなんでなにもないところ見て笑ってたんだ?」
「...やっぱり、空くんは覚えてないんだね」
君はぼそりとなにかを呟く
「なんか言った?」
「ううん、なにも言ってないよ。私が笑ってたのはね、ほら見てこれ」
「落書き?」
君は木に彫られているこれを見て笑ってたらしい。
「...それだけ?」
「うん!それだけ~。さっ、デート行こ!」
「あっちょっと待てよ」
「ほらぁ、おいてくよ?」
「うん。行こっか」
君はいつも何処かを見ている。視線の先にはなにもない。しかし君は楽しそうに笑っている。
...それは過去の話。もう空くんには幽霊が見えない。あんなに仲がよかったのに。友達だったのに。
大人になった彼にはもう見えなくなってしまった。私はまだ19歳。後少しで完全に大人になる。
去年18歳になった時、幽霊が透けて見え始めた。前ははっきり見えたのに。
「...このまま大人になったら何もかも忘れるのかな。」
最後。公園の方に振り替えってひとこと呟く。
「海?行かないの?」
「は~い、今行くよ」
...今日は私の誕生日。後1分で20歳になる。もう私の視線も彼のように幽霊の方向を向くことはなくなるのだろう。
下を向いて一言呟いた。
『透明な友達。さようなら』
冬 【お題:私だけ】
冬、雪が降るとこの世に私だけ取り残されるような。そんな感じがする。
「今日も雪が強いわね...」
暖炉で暖を取りながら外を見るとふとそんな独り言が口からこぼれ落ちた。
「ソフィア様、どうなされましたか?」
「気にしなくていいわ」
「そうですか?でも何か悩んでいるように見えて」
「いえ、ただ今日は雪が強いからお庭へ散歩にいけなくなってしまってつまらないなって思っただけよ」
「なるほど!じゃあ今日は屋敷内の趣味の部屋で過ごしましょう!」
「そうね。掃除が終わったら行きましょうエミリア。」
「はーい!今日はいつもの二倍の速さで掃除を終わらせますよ!」
「意気込みはいいけど、丁寧にやりなさいね」
「はーい!」
「あれはちゃんと聞いてないわね...」
雪が降るとこの世に私だけ取り残されたような気がしていた。でも今は、
「ソフィア様、行きましょう!」
「そうね」
雪も楽しみの一つになってきた。