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 透明な友達 【お題:視線の先には】

 君はいつも何処かを見ている。視線の先にはなにもない。しかし君は楽しそうに笑っている。

「おーい、海」
「...!空くん!」
「何してたの?」
「え~、特になにもしてないよ~」
「じゃあなんでなにもないところ見て笑ってたんだ?」
「...やっぱり、空くんは覚えてないんだね」
 君はぼそりとなにかを呟く
「なんか言った?」
「ううん、なにも言ってないよ。私が笑ってたのはね、ほら見てこれ」
「落書き?」
 君は木に彫られているこれを見て笑ってたらしい。
「...それだけ?」
「うん!それだけ~。さっ、デート行こ!」
「あっちょっと待てよ」
「ほらぁ、おいてくよ?」
「うん。行こっか」



 君はいつも何処かを見ている。視線の先にはなにもない。しかし君は楽しそうに笑っている。
 ...それは過去の話。もう空くんには幽霊が見えない。あんなに仲がよかったのに。友達だったのに。
 大人になった彼にはもう見えなくなってしまった。私はまだ19歳。後少しで完全に大人になる。
 去年18歳になった時、幽霊が透けて見え始めた。前ははっきり見えたのに。
「...このまま大人になったら何もかも忘れるのかな。」
 最後。公園の方に振り替えってひとこと呟く。
「海?行かないの?」
「は~い、今行くよ」
 ...今日は私の誕生日。後1分で20歳になる。もう私の視線も彼のように幽霊の方向を向くことはなくなるのだろう。
下を向いて一言呟いた。
『透明な友達。さようなら』

7/19/2023, 12:11:27 PM