兄が失踪して10年以上経っていた。
運送会社が失敗し、従業員の給料も借金も全て踏み倒し消えた。保証人だった父はその借金を背負い、肩代わりした。
当時、兄に碌な思い出が無かったので、冷たい眼で父を見ていた気がする。
コロナ化の中、対面制限で私のみが付き添う病室で、独り父は70歳の誕生日に亡くなった。70年積み重ねた時間の最期は寂しいものだった。
葬儀を済ませ、ちょうど父の誕生日から、ひと月経った日に、私のスマートフォンに見知らぬ番号から着信が入っていた。
電話番号をインターネットで調べると「大阪府西成警察署」と表示された。すぐに掛け直し、いくつかの部署を経由して生活安全課の年配の男性が早口で喋る。
「こちらの捜査中に、お兄さんが東京で見つかりましたが、自分には家族はいないと思っている、金輪際関わらないでほしいと言っています。よろしいですか」
「…結構です。ただ、ちょうどひと月前、1月9日に父が亡くなった、とそれだけ伝えて頂けますか」
「…分かりました」と言い終わると同時に電話は切れた。
父は、兄に対して相変わらず甘いな、と私はふっと笑った。
題:届かぬ想い
「本当に、夫は昔から外面は良いんですけど、私達家族には辛く当たるような所があって、わたしの母や姉の悪口を散々聞かされてきたんです」
「それの影響だと思うんですよ。急にご飯が食べられなくなってしまったのは。え?悪口の内容?そんなのは、よく覚えてませんけど、とにかくずっと言われてきたんです」
「夫は、近所にも私の悪口を言い回るんですよ。あいつはおかしいとか、ぼけてきたとか。そりゃ片付けなど昔のようには出来ませんけどね」
「夫は警察官でしたが、しょっちゅう後輩や同僚を連れて帰ってくるので大変でした。こっちの事は何にも考えていませんからね。夫は…」
窓越しに良く晴れた青い空を背景に彼女は喋る。
奥の部屋では、夫の遺影が笑っていた。
題:快晴
あなたが、しあわせ、と。
思えるなら、
わたしの気持ちなど、
無いに等しい。
題:それでいい
欧米人の死生観では、soul(魂)は永遠に不滅で、それがbody(肉体)の中に宿っている。
魂と肉体は別々のものと考えられている。
よって、
He has been dead for two years.
「bodyの【寿命が切れた(dead)】状態が、【2年間ずっと継続(has been ~ for two years)】している」
という発想になるとの事。
※引用 THE GOLD ON LINEより
いつか、魂は肉体という枷から解放される。
仕事柄、人の死に関わる事が多いが、人の死は多種多様、千差万別あったとしても、
ハッピーエンドだと思っている。
題: ハッピーエンド
「バカみたい」
素晴らしいタイトル。
私は、過去1好き。
だって、そうでしょ?
どんな言葉の語尾に付けても、
格好が良いと、思うよ。
バカみたい。