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4/12/2025, 2:01:42 PM

風景

森と呼ぶに相応しい、杉林の赤土を踏む。

木々の合間、ひだまりの中で苔生す香りが漂う。

鳥や雪解け水が、季節の移り変わりを教えてくれる。


木々の背丈が低くなり、標高の高いなだらかな尾根を歩く。

まだ早い朝の空は、薄く青く遠い。

山頂までの道が、近いようで遠くに続いていた。


私はいつも、あなたの背中を見ている。

4/8/2025, 2:17:49 PM

遠い約束


ふっと降りてくる「死にたさ」

目の前を掠める「いつかの記憶」

足元にある「無力感」につまづきそうになる。



大きなおにぎりを頬張る。

涙は、止まった。


いつかまた、君と。

3/28/2025, 11:53:59 PM

小さな幸せ


君は隣にいない。

君の連絡先も、知らない。

君は今も、あの仕事を続けているかも知る由もない。


君と一緒にいる筈だった未来はもう無い。

君の未来に、私はいない。


晴れた朝。

駅に向かう時に、ふと青空を見上げた。

なぜか。君もそうしている気がした。

3/15/2025, 4:59:55 PM

心のざわめき

私が、保管庫からフロアに戻った瞬間。
本当にその刹那、誰も話さない無の時間が訪れた。

わざとらしく誰かが咳払いをする。

2週間後には退職が決まっているのだから、雑用をさせられても仕方が無いのだろう、といった言葉たちが宙を彷徨っていた。

彷徨っている言葉たちを蹴散らし、引き継ぎ書類を山積みにしたデスクに座る。

私と書類の世界。
私は今日、あなたを片付ける。そうすることで前に進む。

私は出来るだけ、優しくタイピングする。
タイピングの音だけが、静かに鳴る。

私だけの世界。宙に舞う言葉たちは消えた。


私は想像する。
2週間後、桜の花びらが舞う中、ゆるやかに歩く姿を。

2/23/2025, 7:11:56 AM

君と見た虹

30年連れ添ったあなたと手を繋ぐ。

若い時はあんなに節が大きく分厚い手だったのに、今は痩せて皮膚も薄くなってしまっていた。

呼吸が上手く出来ない為、酸素マスクをしているあなたの顔をじっと見つめる。

若い時に、恥ずかしげもなく愛していると言ってくれたその唇は、酸素を吸う為だけに開かれている。

半眼の目は、私を見ているようで、どこか遠くの空の上の人を見ているかのように、宙を彷徨う。

祈るように床に膝をつき、あなたの横で、あなたの右手を両手で握りしめる。

あなたは一瞬、瞳を黒くし、私を見た。

私は頷き、ゆっくり眠るよう伝えた。

あなたは弱々しく、私の手を握り返した。

ベッド横のテレメーターの波形が下がり始め、時が来たのだと鳴り始める。

私もあなたと虹を渡りたい。

額を右手に擦り付けながらそう願った。

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