uni

Open App
2/20/2024, 7:19:39 AM

当たり前の事だけど、歳を重ねると、沢山の病気にかかり、沢山の出来ない事が増える。

喪失体験も数多くし、思うようにならない身体の上に、心すら思うようにはならない。

「自分がこんなになるなんて、若い時には、想像もしてなかった」
「こんなはずじゃなかった。どうして自分が」

そう感じるのに、年齢制限は無い。

みんな同じ。

積み重なった枯葉は、いつか腐葉土になる。

歳を重ねた分だけ、積み重ねたものがある。

私は言う。

あなた方が生きた年数分、尊敬すると。

2/18/2024, 3:15:09 AM

あなたのお気に入りになりたかった。

後ろから聞こえる、あなたの低くて響く声。

後ろの席に座るあなたに対して、どれだけ声を掛けたかったか。

プリントを配る時、腕まくりしたあなたの腕、手、指、血管を見てはどきどきした。

もちろん、あなたとは違う進路を辿る。

これでさよなら。

卒業式の日。

僕は、遠くから彼を見つめたまま、校門を後にした。

2/14/2024, 5:03:41 PM

冷たい石の獄の隙間から、月を見上げる。
全てを見通せるほど明るい。

「信仰があると、婚姻をしてはならない」

この世界の決まりであるから、仕方ない。

本当にそうだろうか?

この世界の秩序や正義は、本当に正しいだろうか?

人々が当たり前と思っている狭間に弱者がいて、世の中の「当たり前」で見えなくなってないだろうか。

私は、明日絞首刑に処される。

名前はウァレンティヌス。




※バレンタインの語源となった逸話より

2/12/2024, 11:17:49 AM

わたしの、命が終わる時。

さんざん見送って。
さんざん、別れも経験して。
さんざん、その分だけ辛い思いもした。

走馬灯。
そんなの。いらないの。
わたし、覚えてるから。

最期。
わたしの、横にいるのは誰だろう?


衣服を脱ぎながら霧の中を走る。
わたしに、必要な物などない。
裸足のわたしが、川の向こうを眺める。

「お願い連れてって!」

2/12/2024, 2:55:03 AM

「桜の木の下に埋めてくれ」
亡くなる数日前、弱々しい声で父はそう言った。

「墓地埋葬法に抵触するよ」
可愛げも無い答えの無い答えが、宙を舞った。

アルコール依存症だった祖父とは会った事がない。父が16歳の時に他界しており、全ての写真を焼いてしまうほど、父は嫌っていた。

父が8歳の時に、10歳だった姉は近所の変質者に殺され全国的なニュースとなった。それが起因したのかは、分からないが、祖父はまともに働く事がなかった為、とても苦労したと聞いている。

そんな父は、典型的なアダルトチルドレンだった。

社交的だが、短気ですぐに人間関係を切り、定職も数年毎に変え、母には暴言、時には暴力も振るった。
挙句に借金が積み重なり、離婚。市営住宅に移り住んだ。

ろくでもない父なのに。
一生懸命 不器用ながら家族を愛そうとはしていた。

私は、母がひとり住む実家を訪れ、年老いた桜の木の枝を折り、そっと父の棺の中に入れた。

Next