n.n.

Open App
3/23/2023, 9:17:24 AM

二人ぼっちになっちゃったね。


展望台の手すりに肘をついて手に顎を乗せ、
その言葉の意味とは裏腹に
いたずらっぽく笑いながら、君は言う。


太陽と海が出会い、私達の住む街が夕焼け色に染まる時間が終わり、月を迎えた空が薄紫色のヴェールを被る頃。日中の陽の名残が残っていてまだ暖かいけれど、肌寒い空気が訪れる夜が近づくにつれ、
人がまばらになってきて。

先程まで私達の左側で街の景色を撮影していた女性達が最後で、楽しそうに話しながら階段を降りる声が遠ざかり、聞こえなくなったところだった。


「なりたかったんだ、二人ぼっちに!」


--とゆっくりお話ししたかったから。


嬉しそうに目を細めた君は、
そのまま穏やかに目を瞑り、
すぐ隣にいる私の肩に頭を預ける。


…今日はずっと外で過ごしていたからかな。
君からあたたかいお日様のような匂いがする。

肩に触れる体温から君の存在を感じていると、
何故だろうね。
心が凪いで、とても落ち着いて。

私もだんだんと瞼が落ちて来て、
肩に乗った君の頭に頬を寄せて、口を開いた。


「ふふっ…。そうだね。何の話をしようか…?」


何だか心地良い、夢の中にいるようで、
頭が回らない。

この美しい薄明の時間を、
あたたかく寄り添いながら、二人占めしている。



ずっとこうしていたいな、と思った。



ゆっくり話したかった、と言っていたはずなのに、
何の話をしようかと、私の隣でうんうん考えている
君の名前を呼ぶ。



「…ねぇ、--。……もしだよ?
 もし、--が良いならば……」



来年も、再来年も、その先も。



「私と、一緒に……」










・・・-


・・・---


・・・-----懐かしい夢を見た。



君との未来を望んだ、あの日の夢。



昨日まで居た自分の部屋で一人、
目覚めたのかと思ったが、どうやら違うようだ。


天蓋とガーランドライトの吊るされた
見慣れない天井が見える。如何にも君が好きそうな、
夢見るような可愛らしい装飾。


隣に目を向けて見ると、夢の中と同じように、
私の肩に頭を預けて眠る君が居た。


無意識に口角が上がり唇が弧を描くのを感じながら、このままもうひと眠りしてしまおうと
幸せな気持ちで再び目を瞑る。



…夢から醒めても、二人ぼっちだったね。










-----

大遅刻すみません\(^o^)/
もし私のことを気にしてくださっていた方がいらっしゃいましたら気にかけて頂きありがとうございます!

前回のお題と前々回のお題も水曜中に書きたかったのに、外出で疲れてまた書けなかったから、今回の分を書いた後書こうと思ってたのに、結局今これが書き終わったところでまだ書けていないし、時間を考えると多分今日のことになりません😇
今日は家でゆっくりしながらこれを書いていたし、
明日もゆっくりする予定だから、書けるかな…?

『不条理』まででこの二人の話は終わりにしようかと思っていたんですが、この二人の話を書くのがあまりに楽しいので、もうこれから先はこの二人が幸せに過ごす話を書き続けていこうと思いました☺️🌸笑✨

名前を出すか出さないかちょっと迷い始めましたが、出さないでいこうと思っています😌
多分その方がみんなとっつきやすいよね…?
愛着が湧き始めると名前が知りたくなるもの、かもだけど、途中から初めて読む人もいるだろうから…。
ここで文を書くようになるまでそんなに文を書いたことがなかった私ですが、二人の今までの話を読んだことのない人でも、原作の「私」を知らない人でも楽しめる文、難しい言葉を使わずなるべく誰でも読みやすい文を目指して書けたらなぁと思っています🤔

ちなみに『私』は男の子でも女の子でも無い子です。

(「私」のイメージを借りている子が出てくる原作では、汎(はん)という男性でも女性でもない第三の性別性別です。『汎性は後天的に選べる性であり、無性とも呼ばれ男女の身体的特徴を排除している場合が多い』、とのことです。)

…ので、これから書く予定の前々回と前回の話も、
安心してください。(前々回のを途中まで書きかけてるからもしかしたら気になっている人がいるかも知れないんですが、状況的にあの時点で放送禁止にされるような話じゃないよという意味で\(^o^)/)

いや、性別が有ろうが無かろうが愛があれば放送禁止になるようなことも場合によっては起こる時は起こると思いますが…
(このアプリは過度なそういう表現は禁止になってますからね…!)

楽しみにしてくださっていた方、ここまで読んでくださった方、全然書けてないのに『もっと読みたい』をくださっていた方、ありがとうございます…!

もし良かったらこれからもよろしくお願いします🌟

【やらねばならないことがあるのでもうちょっと書いたら暫くは生存確認で一言日記を書く程度になるかも知れないんですが…!】


※『不条理』がお題だった時にも言った通り、
お話しの内容自体は最早全く世界観が異なっている
んですが、今回の台詞の一部については、
「私」のイメージを借りている子が出てくる
原作のゲームでも出て来る台詞です。
(ネタバレしたくないのでどの台詞かは伏せますが…)



3/21/2023, 5:43:39 PM

【前のお題を水曜中に書いてから「わたし」視点を書く予定】


夢が醒める前に

3/21/2023, 9:38:57 AM

【2023/03/25 8:00 書き上がりました!】


胸が高鳴る。


こんなに自分の鼓動を感じるのは久しぶりで、
ああ、私は生きているんだな、
なんて、現実逃避をするように頭の片隅で思う。

目の前の状況から意識をそらすことが出来ない。



…何故君は、私がお風呂に入ってるのに、何の問題も無いみたいに普通に入って来ちゃうの…!?



---あの後私達は、他愛も無い話をしながら
手を繋いで君の家までの道を歩いた。


「この近くの公園の桜が綺麗に咲いてるんだよ」
「一昨日、ここで鮮やかな黄緑色の鳥さんを
 見かけたんだ。何ていう鳥だったんだろう…。」
「あのお店のパンケーキがとっても美味しいの!」



今度、一緒に来ようね。



くるくると表情を変えながら、
私に色々なことを教えてくれる君。

月明かりに照らされた周辺の景色を二人で眺め、
目を合わせて笑い合う、穏やかな時間。


君と行きたい場所が、
近い未来に二人で過ごす約束が、増えていく。


きっと普通なら本当に何でもない日常の会話。


でも今の私には、
それら一つ一つが宝物のように大事に感じて、
泣きたくなりそうなくらい心があたたかくなる。



「そうだね。今度、一緒に行こう。」



そう返すことのできる幸福感に浸りつつ歩き続け、
君の家へ着いた。

どちらともなく繋いだ手を離し、
君が鍵を開ける様子を何となく眺める。


君と一緒だから、歩幅を合わせていつもよりゆっくりと歩いたはずなのに、随分と短い時間に感じたな。


…それもまた、君と一緒だったから、なんだろうね。



「…どうぞ。ちょっと散らかってるけど、入って。」

「ありがとう、--。」



完全に浮かれているな、と自覚しながら、
君が開けてくれた薄紫色のドアを潜り、中へ入る。

玄関から続く廊下に腰を下ろし、
ブーツを脱ごうとすると。


「リビングは入って左、お手洗いは右にあるからね。
 私は先に行ってちょっと片付けてるから、
 --はゆっくり来て!」

「そんなに気にしなくて良いからね?
 …でも、ありがとう。」


言うが早いか、私の言葉を聞き終わらないうちに
君は行ってしまった。


脱いだブーツを端の方に揃えて置き、
玄関先の靴箱の上に飾ってある装飾品に目を向ける。

星の形をしたテーブルランプが、
ガラスでできたシンプルな写真立てを照らしている。


…私達が展望台へ遊びに行った時に撮った写真が
飾られていた。


塵一つ被っていない写真立てを手に取り、
笑顔で写っている私達の写真をまじまじと見る。


…私は、どれだけ
君のことを傷付けてしまったんだろう。


今更ながらに、何の相談もせず
君を置いて行ってしまったことを後悔する。

暫く写真の中の君の笑顔を眺めながら物思いに耽っていると、君の声が私の名前を呼んだ。


「--!大体片付いたから、もう大丈夫だよー!」

「…ありがとう!今行くよ…。」


写真立てを元の通りに置き直し、
しっかりと手を洗ってうがいをしてから
--の声がした方向へ向かう。


「…--。あのね、ちょうど美味しいお酒を
 お隣さんに貰ってたから、
 --と一緒に飲みたいなって…。」


ホワイトウォッシュの豆型のローテーブルに、
連なった雫が星から零れているような模様が施された、グラスの下が緩やかに膨らんだタイプの
シャンパンフルート。

いつの間に作ったのか、
簡単なおつまみまで用意されている。


「…ふふっ。そうだね。
 私もまだ君と話していたいよ、--。」

「ふふ、…バレちゃった?
 もっといっぱいお話ししよう、--!」


そうして私達は、今まで離れていた間の時間を埋めるように、春の夜を語り明かした。


………と、思ったけど、
お酒に弱い君は途中で眠ってしまったので、
座っていた淡いピンク色の四角いクッションを枕に横たえて、私が着ていた上着を掛ける。

…少し寝かせておいてあげて、
お風呂を借りようかな。



---そうして、
手洗い場の先にあった浴室でシャワーを
浴びていたら、一糸纏わぬ姿の君が扉を開けて…


今に至る。





「…えっと…あの、…--?」

「…--…。」


私の名前を呼んだ君が、ゆっくりと近付いてくる。


「ちょっと待って!--、君は女性なんだよ?
 いくら私が汎だとはいえ、そんな…」

「--。どうしてあなたがここにいるの?」

「えっ?…それは…、」

「…こんなところにいたんだね、--。」


ずっと探してたんだよ?


くしゃりと泣きそうに顔を歪めた君が、
私に手を伸ばし、そのまま背中へ腕が回って
抱き締められる。


「どうして…いままで、どこにいってたの?」


なんで…。


そう繰り返す君に、
胸がきゅっと締め付けられるように痛んだ。


--は、酔っている。


それは確かだが、今告げられているのはきっと、
私をずっと探し続けてくれていた--の気持ちだ。



何と返せば良いのだろう。



一緒に帰ってきたじゃないかと?



展望台で話したじゃないかと?



そうじゃ無い。



私は君に腕を回して抱き締め返し、
精一杯心を込めて伝えた。



「…--。私はここに居る。
 これからは、ずっと一緒だから。
 もう、何処にも行かない。
 何処に行く時も、ずっとそばにいるから…。」



本当に、ごめんね…。



私を見つけてくれて、ありがとう。



---二人でシャワーのお湯を浴び、
その雫が床を打つ音を聞きながら抱き締め合って、
どれくらいの時間が経っただろう。

君は再び、私の腕の中で眠りこけてしまった。

その表情は先ほどより幾分か穏やかそうに見えて、
ほっとする。



私は君を起こさないようにそっと抱き上げ、
バスタオルで手早くお互いの身体の水気を拭き取り、
寝室を探す。

大きめの星型の壁飾りが掛かったドアを見つけて開いてみると、天井からふんわりと天蓋カーテンとガーランドライトが吊るされている、ベッドのある部屋があった。


ゆっくりと君を横たえて、自分もベッドに入り、
寒くないようにしっかりと布団を掛ける。

…本当なら何か着た方が良いだろうが、
どこに何があるか分かっていないのに、ごそごそと引き出しを開けてしまうのも良くないだろう。探しているうちに君の身体が冷えてしまうかも知れない。


今日はもうこのまま寝てしまおう。


「…おやすみ、--。」


また明日、ね。





目覚めた君がこの状況を見て驚き、
これ以上無い程胸を高鳴らせるのは、また別の話。





-----

※文中に出てくる「汎」という単語は、
男性でも女性でも無い、汎性という性別のことです。
(『私』は私の好きな作品に出てくる子をイメージして書いており、汎性については原作内の設定です。)

書きたいことを書きたいように書いていたら
一日一文の量じゃ無くなった…😇

読んでくださった方はありがとうございます。

お題の胸が高鳴る、は希望や期待などの為に興奮して胸がどきどきすること、らしいので、この話の場合驚きでどきどきしてる方が大きいからちょっと言葉の使い方違ったかも知れないんだけど、この話になってしまった。許してください🤣

3/19/2023, 3:01:20 PM

不条理がお題でしたが、
今日は本当に書かないことにします\(^o^)/

前回までの後、どのくらいか時間が経った後2人が再会する話を書けたらいいね〜と思ってたけど今日は書く気力が無いですね…🫠

考えてたことだけ書いておくと(、というか今考えていたことを更に膨らませて簡単に書くだけ書くと)、


自分からいなくなったのにまたこの日にここに来るなんて不条理だ、みたいな感じで、
「わたし」を置いて遠いところへ行って居なくなった「私」が2人の特別な思い出の場所(とても綺麗な夕陽が海へ沈むのが見える、長い階段を登って辿り着ける小高い、街が一望できる場所のイメージ)に戻って来ているところへ、「わたし」が同じ日同じ時に同じ場所へやって来て再会し、
「私」が立ち去ろうとして、それを追いかけようとした「わたし」が転んでしまい、「私」はそのまま立ち去ろうとしたけれどどうしても見捨てていけず「わたし」を抱き起こす。
「わたし」はやっと見つけられた「私」を何が何でも離すまいと必死に抱きついて、

「--。離してくれ。」
「嫌だ!絶対に離さない!!」
「…--。
 私はもう、君と一緒にはいられないんだ。」
「じゃあなんで今日--がここにいるの!?」
「…!…。」

などと一悶着した後「私」がいなくなってしまった理由を話して、
お互いにすべてを受け入れ和解して思い出のあの日と同じようにこれから先の未来を約束し合って、
笑い合って冗談を言うように、

「もう私を置いてどこへも行かないでね。
 どこかへ行くなら、必ず私も連れて行って。」
「ああ。約束するよ。
 頼まれたって、もう離さないから。
 …本当に、ごめんね?」
もう、謝り過ぎだよ!

そんな会話をして、特等席のベンチで肩を寄せ合い頭を預け合いながら、夕陽が海へ沈むのを2人で心地良い沈黙の中眺めて、優しい月と星の光が見守る中手を繋いで長い階段を降り、
今まで「私」が住んでいた仮屋には(離れていた間の「私」の心を表すかの如く大事なものは何も置いていない為)、二度と帰らず、2人で同じ家に帰る。

こんな幸せに辿り着けるなら、
不条理なことをするのも悪く無いのかもしれないな。


…そんな風に終わる話が書きたかったですね…🫠
本当に書かないことにするって言ったのに、
結局書いたようなもんなくらい考えてしまったわ笑

そのうち清書するかもしれないししないかもしれない

この話からはもうモデルになってる対象のキャラクターがいる作品は全く関係ない話になっていて、
「私」という人のイメージのみ借りている状態です。
前世や来世を描いているのかな…??みたいな状態。

とりあえず楽しかった。
2人は末永く幸せに暮らします…🌸


私も今日は結婚記念日でしたが、不条理なことに夫婦2人で、それぞれの推しのイメージアクセサリーを作るためのパーツを一緒に見に行く日になりました笑
とても楽しかったです!(大丈夫、別の日に記念日レストランに行くことになっているので…笑笑)


みなさんも条理にかなっていようがいまいが関係無く、幸せな日々をお過ごしください…🌟

3/18/2023, 5:39:48 PM

泣かないよ、もう。


あなたのいない世界じゃ生きられないなら、
あなたのいる場所に辿り着けるまで、
前を向いて歩いて行けば良いだけなんだから。


諦めなければ、必ずあなたにまた会えるはず。


だって、あなたは生きている。
死んでしまったわけではないのだから。


涙でぐしゃぐしゃの顔を拭い、
これから自分が歩むべき道の先を見据える。

今はまだ、その道の入り口さえも
見つかってはいないけれど。


…本当は薄々気付いていた。

こっちが現実で、あなたがいるあの幸せな世界の方が、夢なんだって。


どうせ夢の中だと思って。
もう会えないんだと諦めて。

夢の中だからと、勝手にいなくなってしまった
あなたを、少し困らせてしまいたかった気持ちと、
悲しさのままに甘えてしまいたかった気持ちが半々。


「大丈夫だよ。」「私はここにいる。」
「私は君を置いて何処にも行きはしない。」


“どの口がそれを言うんだ”と、あなた自身が思っていそうな弱々しい声音で伝えられる言葉。

何と声を掛けられても、
わたしは自分の気持ちそのままに、ただ泣き続けた。


…でも、あなたは言った。


「…夢の中では一緒に居られなくても、
 私はずっと君のそばに居るから。
 ずっと、君のことを見ているから。だから。」

「他の誰でもない、私の大切な君の毎日を。
 幸せに生きて欲しいんだ。
 私と、一緒に…。」



“私と、一緒に” と。



初めてわたしとの未来を望んでくれた、
あの日と同じ言葉を。



顔を上げた時には、もうあなたはいなかったけれど。


ただの夢なのかもしれない。それでも。


その言葉を胸に、わたしは泣くのをやめ、
現実を生きることにした。

あなたが何故いなくなってしまったのか、
理由はわからない。
でも絶対に何かがあったはずなんだ。



あなたが “一緒に” と言ってくれた。 だから。



必ずあなたを見つけ出して、
何があってもまた、あなたと一緒に。
幸せに生きる。



そう決めた。




だから、わたしはもう、泣かないよ。






--。






-----

今回も朝から書き始めていたのに、
一日中ハンドメイドに明け暮れていて完成がすっかり遅くなりました\(^o^)/

前回から続いているこの話に出てくる人物はモデルとなる対象がいるのですが、元々考えていたストーリーとは一部内容を変えてその作品の話っぽくないようにして投稿しています( ˘ᵕ˘ )
(今回の視点の子はオリジナル主人公だけど)

Next