鴨居

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9/11/2025, 11:54:36 AM

ダフネ、君は知っているだろうか。この詫びしさを感じる僕の心臓が、君を知る度にほんの瞬きの間止まってしまうことを。
ダフネ、僕はあの海原を越えてどこか遠い国へ行くよ。君の手を取って進むのはここまでだ。僕はここで全てを捨てていく。
ダフネ、これは呪いだよ。僕が捨てる重さを君に背負って欲しいんだ。そして君だけは覚えていて、僕がここに居たことを。
さよなら、ダフネ。僕の春。

9/5/2025, 12:56:42 PM

深夜も深夜。街の灯りもまちまちで、周りの静けさで自分の呼吸がよく聞こえるそんな夜。それはまるで夢みたいな暗さで、ぽつぽつと続く街頭と、誰のためか分からない赤から青に変わる光が眩しい。「嗚呼、なんかいいなこれ。」って思わず声が転がった。まるで世界にひとりだ。
横断歩道から逸れて、車道のど真ん中に立って大きく息を吐く。じんわりとした暑さの中にある、どこか澄んだ風が心地いい。夜が明けてしまうのは惜しい。ずっとこのままひとりだと錯覚していたい。
朝は怖い。僕の心を引いて勝手に歩き出す、あの無邪気なまでの陽が恐ろしい。毎朝鳴くご苦労な鳥たちが煩わしい。朝になれば僕は、僕はひとりになれない。その事実が僕を脅す凶器だ。
明日もまたあの横断歩道を渡る。きちんと身なりを整えて、重たい鞄を持ち上げて、少し汚れた靴で行く。
そして僕は夜を待つ、息のしやすいあの夜を。

8/11/2025, 1:26:31 PM

カンカン照りでじんわり集まる熱に腹を立たせて、だけどそんな暑さを感じさせない君の髪が幸福だとでも言うように舞って、背景の青の眩しさが僕の目をくらませる。
君が食べたいと言っていた、期間限定のパッと見何味か分からないカラフルなアイスが、時間をかけて僕の手を伝っていくけれど、なんでか口に運ぼうとは思えなくて、ただ情景の一面を瞳のシャッターに収めて満足した。
そういえば、少しずつ背を伸ばしていたあの花が最近咲いたことを思い出した。君にとても似た花だ。

8/10/2025, 12:35:16 PM

薬にもならない。善意の上で成り立つ私という人間はただの虫になった。食えるだけ喰って、吐いて、また喰って、寝る。羽化に失敗した情けない私を、ただの赤子の様に見つめるその目が恐ろしい。
責めろ!怒鳴れ!愚図な私を早々に見限ってくれ!なんて、贅沢な悩みだろうか。

7/3/2025, 1:39:18 PM

ぬるくなった湯船の中で力を抜いた。少しずつ浮かぶ手足を見て薄笑い、私を失くした後の残骸はさぞかし軽いのだろう。肺の動きを小さくして、腹の底の全てを吐き出したら、それは、それは。
21グラム。哀しみと憎しみと、薄い期待と愛が詰まった重さがたったのこれだけ。持って逝けるこれが私の全て。なんて無情な事だろう。
来世、また私が私に還ったらあの向日葵の海へ行こう。何駅も渡って、次こそは。

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