何事も無かったように駆け足で過ぎていく情景が、無理やりにでも噛み合わせた上手く回らない歯車が、ミシミシと嫌な音だけを立てる。それが私はどうにも許せなくて、その歯車の隙間に自分の手を差し出してみた。今度こそそれは本当に嫌な音を立て始めて、痛みと熱と私の浅い呼吸だけがこの世の全てな気がした。なにをしているのかと問われれば、これはただの反抗心だ。
右向け右に習うのが息苦しくて、でも歯向かえば残るのは孤独だけで。事実、此処にはもう孤独しかなく、あったはずの貴女のぬるい温かさも感じられなくなってしまったことに耐えられなくなった私は、条理から背き左を向いてしまったあの時の私の過ちを許して欲しいがために手を差し出した。
貴女はもう還らない。それは貴女がした選択で、あの時私と共に左を向いてしまった貴女の罪だから。それでもその選択の中のひとつに私を入れてくれなかったことが、貴女にとって私はそれまでの人間だったことがやるせなくて、やるせなくて。
だからこれはただの反抗心。勝手に逝った貴女への。私を置いて逝った、愛しい貴女への。
6/9/2025, 3:55:00 PM