貝殻

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9/28/2025, 3:36:56 PM

「永遠なんて、ないけれど」

永遠なんて、ない。そんなことは、とっくの昔にわかっている。友情も、恋情も、家族に対する情さえも、永遠なんてない。絶対なんてない。ひどく脆くて、弱いものなのだ。
永遠のものなんて、ないけれど。それでも今は少しだけ、少しだけ君を信じてみたいと思う。
これは秋の涼しい風のせいか、穏やかな青空に浮かぶ雲のせいか、黄色に色づいた木の葉のせいか。

9/11/2025, 3:35:16 PM

「ひとりきり」

 朝、昼、夜。ずうっと、ひとりきり。友人といても、笑っていても、泣いていても。そんなことには、もう慣れたけれど。けれど、やっぱり寂しいもので、誰かといたくて、いたくなくて。それを繰り返してばかりなのだ。

7/5/2025, 2:50:09 PM

「波音に耳を澄ませて」

波音に耳を澄ませて、瞳を閉じる。
そのまま、ゆっくりと砂浜を歩く。
左耳から聞こえる波の音が、何故かそんなに心地のよいものではなかった。早く立ち去ればいいのだろうが、これまた何故かそんな気分にもなれない。
夏の、黄昏時を少し過ぎた頃の薄暗い色を纏う空気、特にその時の海は昔から好きだ。いろんな感情が頭の中でせめぎ合って、どうしようもなくなる感覚になる。
今が、それ。
たまらず、嗚咽を漏らす。
溢れた涙は、砂に染み込んでなくなる。
波の音以外、何も聞こえない。
波の音以外、何もいらない。
だからただ、ここでいつまでも耳を澄ましていたいのだ。

7/4/2025, 10:32:03 AM

「青い風」

あの人は夏に吹く風を、「青い風」だと言った。
その時は理解しようともしなかったが、今なら分かる気がする。
あの時、夏の昼間の風は青い風。
昨日、夏の黄昏時の風は、薄暗く灰色の混ざった青い風。
今、夏の夜の風は、黒色にほんの少し赤色が混ざった風。
その風が頬を撫でる。思わず、左手でも頬を撫でる。
おや、色のついた風は液体として触れられるのか。
その身を持って教えてくれたあの人に、いや、この人に感謝しなければ。

7/3/2025, 1:54:17 PM

「遠くへ行きたい」

どこか、遠くへ行きたい。
そんな陳腐な台詞を口にしてしまうのは恥ずかしいから、ふ、と息を短く吐き出すにとどめる。
こんな気持ちになってしまうのは、初めてではなかったはずだ。
ふとした時に思い出すあの頃。遠くに行っても、決して消えることのないであろう、傷。
はあ、と今度は大きく息を吐く。遠くに行けても、何も変わらない。
あの、吐き気が込み上げる男の下品なそれの味も、唯一の存在と言ってもよかった幼馴染からの裏切りと嘲笑の味も、何も変わらないというのに。
それでも、どうしようもなく、遠くへ行きたい。
そう、変わらないのなら、せめて。

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