まそむ

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11/8/2025, 12:32:19 PM

僕は天使に出会った。

お財布を失くして絶望の淵にあったんだ。
勿論警察に駆け込んで、その場でカード類を止めようとスマホで連絡をしまくったり、お財布に入れていたお金は抜かれているだろうなとか、考えていた。

でも、そこに天使が現れたのさ。

塾帰りの小学生という女の子が、中身が全く欠けていない僕のお財布を拾って、警察に届けに来てくれたんだ。
この世の終わりとばかりにスマホに向かって泣き叫んでいた僕には、あの女の子は天使以外の何者でもなかった。
謝礼を渡そうとしたら固辞して、警察官がこれは受け取って良いお金なんだよと説明しても、女の子は僕を指して、そのお金はおじさんが使うためのものよ、と言ってするりと立ち去ってしまったのだ。

あの子の背中に透明な羽根が見えたのは、錯覚でも幻視でもないと僕は思うんだ。

【透明な羽根】

11/7/2025, 11:28:16 AM

父が天国に行った。

健診を2年サボったら肺がんになっていて、胸膜に広がっていた。そして5回手術を受けた。最後の手術で出血が止まらず、母に手を振って手術室に入ったきり逝ってしまったと聞いた。

わたしは父の支配から逃れるため遠い県に住んでいた。高速で片道数時間。看取ることは無理だった。

お通夜で蝋燭を灯し、冷たくなった父を見た。
湯灌も、死化粧も拒んだ父の遺体には、薄らと無精髭が生えていた。

蝋燭を囲み、身内で葬儀の相談をした。
父の望む曲で送りたいと母。しかしCDは山とあってすぐに探し出せない。交代で蝋燭の番をし、CDを探した。プラモが好きだった父の棺にはプラモの写真を入れることにした。

そして父の机に遺書を見つけた。開くとたった一言。

「俺のものに触るな」

嘘のような、本当のお話。

【灯火を囲んで】

11/6/2025, 10:42:07 AM

昨日まで夏だったのに、秋を飛ばして、一気に冬が来てしまった。

寒い! 朝ベッドから跳ね起きる。布団が薄くてとても寝ていられない。僕は毛布を引っ張り出し、薄手のパジャマも洗濯カゴに放り込んで、冬パジャマをクロゼットから出す。服も、昨日の薄さでは風邪を引くだろう。冬用のコートも必要そうだ。

すっかり春秋服がしまい込まれたままになってしまった。ちょうど良い気温の季節が来ないか極端に短いのだから仕方ない。

タートルネックシャツにセーターを重ね、ダウンジャケットを着て、家を出る。バス停までの草道、靴の下でシャリッと霜柱が砕ける音がした。

【冬支度】

11/5/2025, 12:13:59 PM

父は夕食時、お酒を飲んで、仕事のストレスを子供にぶつける人だった。
標的になったのは大抵兄。
毎日3時間は、暴力と暴言が兄を襲った。

すぐそばで見ているわたしは、自分が殴られるよりも怖かった。
兄が進学して家を出ると、標的は勿論わたしに移った。

わたしの時は恐怖に支配されたまま、止まった。

今は父は天国にいる。
天国から、今でもわたしに罵声を浴びせてくる。
止まったままの時は、なかなか動こうとしない。

【時を止めて】

11/4/2025, 11:07:59 AM

どうして、こんなに金木犀の香りがもてはやされるのか、わからない。

今は、化粧品、ハンドクリーム、シャンプーなど、こぞって季節の香りとして、金木犀の香りのものが売られている。
喜んで買う人の気が知れない、とつい思ってしまう。

何故かって。

わたしの小さい頃、金木犀の香りは主に学校のトイレの芳香剤だったからだ。
だから香りを嗅ぐと、学校のトイレを連想する。

昔から、トイレに食べ物の香りをおくと、食べ物がトイレを連想させるから良くないと聞いていた。
だからか、今ではローズ系の香りが多いように感じる。

わたしにはローズは食べ物だ。ローズペタルジャムのロシアンティー、クローテッドクリームとスコーンとの組み合わせ、ローズティーだって良く頂く。
トイレには食用ローズとは少し違う、フローラルな香りが望ましく思える。

金木犀は、どうしても、今でもトイレの香りなのだ。

【キンモクセイ】

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