月の輝く夜は、こっそりと本を読む日だ。
あんな親でも一応、寝ろという。わたしはベッドを抜け出して、大きな窓から煌々とさす月の光を頼りに、本を読み続けた。時に時間を忘れて没頭した。
わたしは夜目がきくようになり、同時に太陽がまぶしくて困るようになった。視力も落ちた。
でも、冴え冴えとした白い光に包まれながら読む本は、いつもより面白く感じられたのだ。
【月夜】
日頃の絆が試される時が来た。
僕はクロが大好きだ。でもクロのほうはちょっと気取り屋で、そんなに懐いてくれていない気がする。
ご飯の時は尻尾をピンと立てて、僕の足の周りをぐるぐるスリスリしてくれるのに。どこか冷めた感じで、心を開いてくれている気がしない。
そんなクロが木の上で、下りられなくなって、にゃーにゃー鳴いていた。悲鳴のような鳴き声。僕は助けなくちゃと虫とり網を抱えて、クロに近づいた。
クロ、ここに飛び込んでも大丈夫だよ。ちゃんと網で助けてあげるから。言ってもクロは木の上でブルブル震えているだけだ。すくんでしまって動けない感じ。
どうしようと困っていたら、兄猫がぴょんと木に飛び乗って、クロを咥えて連れ戻してくれた。
僕とクロとの絆なんてまだまだこんなものだ。
【絆】
いつものご飯。給食の残りものをビニール袋からお皿に移して温めただけのものとか、黄色くガビガビしたごはんとか、においも怪しいおとといのおかずとか。
そんなある日、親が夕飯の支度が出来なかったと言って買ってきたケンタ!
傷んでいない、まだ揚げて日にちもそうは経っていない、安全なおかずと白いごはん。
貪るように食べた思い出だ。
たまにケンタのチキンを白米で食べたくなる。思い出補正とわかっていても、あの味はごはんに合うとわたしは断言する。
【たまには】
僕は空を見上げていた。
大好きだった君が逝ってしまってから、何年? 何十年経ったのだろう。
病気で苦しみながら、弱々しくすり寄ってきた君。
あの頃はキャットフードさえ数がなくて選べなかった。
今、もし君に会えたら、噂のちゅーるを舐めさせてあげたい。
きっと喜ぶだろうな。
君が生きていた時代にはそんなおやつ、無かったんだよ。
【大好きな君に】
僕の家には大きなひな壇があって、七段飾りのお雛様があった。妹のためにと譲られたものだ。
妹は小さくてひな壇の意味もわかっていなかった。
ただ、お雛様を飾られ、お人形のように着物を着せつけられて、ひな壇の前に置かれて、親に写真を撮られていた。
置かれてという表現が一番適していると思う。
座らせられた、ではない。置かれた、のだ。本当に人形のように。親の妹への扱いはそんな感じだった。
僕? 鎧武者の人形なんてなかったよ。鯉のぼりは大きいのが上がったけれど。
【ひなまつり】