まそむ

Open App

父が天国に行った。

健診を2年サボったら肺がんになっていて、胸膜に広がっていた。そして5回手術を受けた。最後の手術で出血が止まらず、母に手を振って手術室に入ったきり逝ってしまったと聞いた。

わたしは父の支配から逃れるため遠い県に住んでいた。高速で片道数時間。看取ることは無理だった。

お通夜で蝋燭を灯し、冷たくなった父を見た。
湯灌も、死化粧も拒んだ父の遺体には、薄らと無精髭が生えていた。

蝋燭を囲み、身内で葬儀の相談をした。
父の望む曲で送りたいと母。しかしCDは山とあってすぐに探し出せない。交代で蝋燭の番をし、CDを探した。プラモが好きだった父の棺にはプラモの写真を入れることにした。

そして父の机に遺書を見つけた。開くとたった一言。

「俺のものに触るな」

嘘のような、本当のお話。

【灯火を囲んで】

11/7/2025, 11:28:16 AM