お鳥様が夜空を飛んでいると、灯りの寂しい村の夜景が目に映った。
ここはお年寄りが多く、若者たちは次々と他の町へと移っていき、住んでいる人々は減り続ける限界集落である。
お鳥様は金色の紙で花を折り、その花に優しく息を吹きかけ、空から村にそっと放った。
折り紙の花はくるくると舞い降りふわりと地面に着地すると、そこから金色の花が咲いた。
夜空からのその光景は、とても美しく映し出された。
翌年、その金色の花の隣に、若者の夫婦が戻って来て家を建て、子どもを産んだ。
しかし何年かが過ぎ去り、
若者夫婦は再び村を後にしてしまった。
それでも、金色の花はその数を増し輝き続け、美しい夜景が村を照らし続けている。
「夜景」
約束の始まりを忘れ去ったかの地。
傷つけ合ったその痛みは消えることはないのだろう。
傷を負い、さらに傷を引き起こす連鎖は続く。
心の渇きが募るたび空は静かに泣いている。
だがその涙は潤いをもたらすことはなく
暗い煙が立ち込める場所に絶え間なく雨は降り注ぐ。
乾いた背中を追うように、空が涙を流し続けている。
その後ろ姿がどれほどの悲しみを抱えているのかを、空は知っている。
「空が泣く」
昔まだこの世界が若かったころ、海の上を飛んでいた僕の羽が、波を起こした。
その波の中からベニクラゲが誕生した。
そうしてベニクラゲは不老不死になった。
僕を捕まえて、不老不死になりたいのかい?
でも僕は捕まるわけにはいかない。
僕の存在は、君たちの夢と涙で構成された集合体なのだから。
僕は、君たちの情熱が具現化した尊いお鳥様フェニックスなのだよ。
「命燃え尽きるまで」
目を覚まし彼女は掌で髪を束ね窓辺に立つ。
時はまだ傾き届かぬまま、窓を開けると紫紺色の空気がかすかな冷えた草の香りを運んでくる。
もうすぐ龍雨は地に戻る頃だ。
遠くの地平線では、光が静かに昇り来るだろう。
深呼吸を一つ。
小さな一日がまた始まる。
「夜明け前」
季節の夏の中を跳ねる。
そして、いつもなら9月のやさしい雨に佇み、そっと秋にふわりと着地するはずだった。
だけど今年はきっと10月になってもまだまだ夏で、暑い日が続いてると思っていると、いきなりドスンと晩秋が落ちてくるかもしれない。
「雨に佇む」