ソラシド

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11/5/2023, 1:41:39 PM

#一筋の光

目を覚まして一番最初に飛び込んでくるのが、朝日だって疑うことはなかった。布団のなかで泣いた時も、眠れなくて月を眺めていた時も、暗い夜におちてしまっても、朝はやってくる。それが、唯一の救いだった。

また、長い夜がやってくる。
理由もないまま、太陽が昇って沈むみたいに。あまりに自然に虚しさを引き連れてきた。

普通に過ごしているだけなのに、ずっと夜の中をさまよっているみたいで、泣きたくなる。
些細な言葉に、自分の存在価値を疑って。
自分を貶めるかのように、他者との比較を探して。
全てのことが、どうでもよくなってくる。

お腹いっぱいご飯を食べても、好きな曲を聞いてても、推しを推していても、満たされなくて。
虚しさを埋めようとすればするほど、穴は広がっていった。

今、一生懸命生きていることさえも、どうせ意味のないことだと、どうしようもなく悲しくなる。

悲しい。寂しい。虚しい。虚しい……。

「ありがとね」

ハッとして顔をあげると、老婦人がにっこりと笑っていた。

「ありがとうねぇ。お世話さま」

去り際、もう一度、私に向かって目を細めた。なんと言っていいのかわからなくて、「ありがとうごさいました」と使い回された言葉しか出てこなかった。

仕事だ。やって当然のこと。誰だってできること。私じゃなくても。
それなのに、ありがとうだなんて。
老婦人の微笑みが、乾いた私の心を潤していく。

今、彼女は私を見てくれていた。
私という存在を、この世界で見つけてくれた。

暗い夜に、一筋の光が差す。
そこを目指していくと、また次の光が。
たどっていくと、遠くの空は薄らいでいる。

夜明けは近い。
目が覚めて一番最初に見るのは、最高の朝焼けだって信じてる。

11/5/2023, 6:21:05 AM

#哀愁をそそる


至るところに孤独はある。日常のふとした瞬間、何気なく見上げた空の色、会話の端々。
楽しいことを見ようとして、寂しさを見て見ぬふりしていた。
だって、そうしないと、心がしんどくなってしまうから。

「私はもう充分持っていて、満たされていて、毎日を生きているだけで素晴らしい存在なんだ」

口に出して言うと、私は猛烈な孤独感に襲われた。
文字で見れば、とても綺麗で、前向きで、明るい言葉たちなのに、私の口からこぼれた声は、涙を含んでひどく震えていた。

不自由なく過ごしている。朝が来て、夜になって、明日があたりまえのように来る。好きなご飯をたくさん食べれて、好きな服を着て、温かい布団で眠れて。これ以上何を望めようか。

でも、こんなにも満たされているのに、心は満たされない。
あるものをたくさん集めても、中身は空っぽのハリボテばかり。

私より、自由がない人がいる。私より、悲しい人がいる。
そんな慰めの言葉でも、ぽっかり空いた穴は塞がらなくて、空を見上げた。

大きく背を伸ばした街路樹の葉が、紅く染まっていた。青々しくて眩しい緑色が、紅色を帯びて薄れている。
いつの間にか、こんなに時間が経っていた。

「私は、しあわせ」

誰に言うわけでもない呟きは、木枯らしにさらわれる。
ただ『虚しい』という感情だけが、私の心に残っていた。

11/4/2023, 5:40:34 AM

#鏡の中の自分


私がにっこり笑えば、キミはいつも笑いかけてくれる。
周りの人たちは、無表情で、疲れていて、眉をひそめて怖い顔をしていた。でも、そんな彼らも私が笑えば、フッと力が抜けたように微笑んでくれた。
それが嬉しくて、私はいつも笑っていた。体調が悪い日も、泣きたいくらい辛いときも、どんなときも笑顔を忘れずに。

「大丈夫だよ」が、私の合言葉。

でも、いつからだろう。

私がにっこり笑っても、キミは笑い返してはくれなくなった。
それどころか、悲しそうな目で私を見つめていた。何か言いたげに唇を震わせて。

おかしいな。笑ってよ。笑ってほしいよ。
グッと口角を上げると、キミはさらに引き攣ったような顔になる。

「ねぇ。もう、そんな風に笑わないで」

涙が頬を伝う。
鏡に映った私は、泣いていた。

「つらいときは、つらいって言っていいんだ」
「かなしいときは、かなしいって言っていいんだ」
「いやなときは、いやだなって言っていいんだ」

そうだった。
キミにそんな顔をさせてたのは、――私だったんだね。

11/2/2023, 6:06:45 AM

#永遠に

水平線に日が落ちていく。焼けるような夕日がギラギラと海に反射すると、たくさんの宝石が散りばめられているかのようで、目を細めた。

「綺麗だな」

隣を見ると、彼が同じく海を見ていた。涼しげな目元をさらに細めて、今にも泣き出しそうだった。
一日の終わりは、いつも胸をギュッと締めつけて切なくさせる。日が沈んでも、明日になればまた日は昇るのに。でも、今日と同じ日は二度と来ない。
今日みたいに、彼と夕日を見ることはないかもしれない。

彼を通りこして、後ろを振り返る。夜空の色がグラデーションを描きながら、私たちを飲み込もうとしていた。

「ずっと、こうしていたいな」

冷たくなった手に、彼の温度が触れた。
ずっと。その言葉を聞くたびに、私は別れを突きつけられたような錯覚に陥る。

『ずっと一緒にいようね』
二人の絆を、愛を込めた愛言葉に含まれた、『ずっと一緒にはいられない』をヒシヒシと感じる。
言葉に意味なんかない、と頭ではわかっていても、無意識的に私の脳裏に過ぎっていく。
この瞬間が、幸せで。今が、幸せで。
幸せだから、いつか必ずやってくる喪失を酷く恐れた。
永遠にはいられない。

少し背の高い彼を見上げた。視線に気づいた彼が、私に微笑みかける。

「そうだね」

私はちゃんと笑えているだろうか。
『幸せ』を感じるたびに訪れる『別れ』が恐くてたまらない。

「ずっと、一緒にいようね」

私が応えると、彼は嬉しそうに笑った。

夜が、もうそこまで来ている。
永遠って、たぶんこんな色だ。

8/14/2023, 2:10:08 PM

#自転車に乗って

風を切ってどこまでも進んでゆく。

補助輪をガラガラ鳴らして、後ろを支えてくれる人の手を借りていた自分も、今はひとりで軽々と乗りこなせる。
走り続けていれば、バランスは保たれるけど、ちょっと疲れたら足を止めて休憩。

安定は自転車に乗るのと似ているとどこかで見聞きしました。

自転車は漕ぎ続けていないと、バランスが崩れて倒れてしまうから、ゆっくりでも漕いでいる方が安定する、と。

ずっと走り続けてることはしんどいよね、疲れるよね、
ひと休みして行こうという考えもある一方でのこの自転車理論。

なるほど、確かにそうかもしれないと思いました。

全ての物事は考え方次第なのだとつくづく思うし、
人によっても解釈が違うのだから、なんとも人間の頭の中は面白い。

今はひとりで乗りこなせるようになった自転車だけど、
倒れることもあります。
倒れるても、起き上がり方を知っているなら、また漕ぎ出せます。

私はたくさん、たくさん、転んできた。倒れてきた。乗ることを放棄もしてきた。

だけど、その度に起き上がってきた。
それはいろんな方法で。
休息だったり、癒しだったり、誰かの手をまた借りたり、別の自転車に乗ったことも。

だから、きっと大丈夫かなって思います。
私も。あなたも。

その舵をきるのは自分次第。

自由な心でどこまでだって、どこへだって行ける。

逆風も追い風も上手に乗りこなせ。

風を切って前へすすめ。

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