#未来への鍵
どうしてそんなに一生懸命に生きられるんだろう。
生きようって思えるんだろう。
自分を大切にとか、自分らしくとか、楽しむとか、
結局自分次第なわけだけど、
変わる気力とないし、生きる気力もない。
今の状況がつらいけど、行動するのはめんどくさい。
行動する気力もない。生きたくないって、放棄してしまいたい。
いつまで経っても、他人軸で生きてて、自分の人生に責任負いたくないから。自分のせいでこうなってて、こうなってる自分も嫌だし、嫌だって言って、何もしない自分も情けないし、もう何もかもつらくてしんどいから、逃げたい。
どうやったら、生きようって思えるんだろう。
みんな、なんで必死に生きようとできるの。
私はずっと生きたくないです。つらいです。ずっと、一生つらいって言いながら時間だけが過ぎてく。未来の鍵を壊して、このまま最初から居ませんでしたってことにして、消えたい。
ずっと一緒にいたい、と涙を流したあの人とは、満開の桜を見ることはできなかった。私と一緒にいることに、役目が終わったとでもいうように、あの人は別れを告げた。「ごめん」と、たった一言だけ言って、あとは何も言わなかった。ずっと一緒にいたいと言ってくれた時と同じ表情で、今にも泣き出しそうなほど顔を歪めていたけれど、泣きそうなだけで、あの人は最後まで涙を見せなかった。緊張すると鼻を触る癖があった。私はあの人が何回触るのかを数えるのに夢中で、どうして別れという選択をしたのか、肝心な理由を聞きそびれた。そもそもあの人が誰だったのか、私はちゃんと知っているのか分からない。その程度の関係。その程度の存在といってしまえば、そうなのかもしれない。
目を開けると、黒光りした墓石に私の姿がぼんやりと映る。夢を見ているようだった。墓誌の一番最後に刻まれた名前をそっとなぞる。
「ずっと一緒にって言ったくせに」
指先で感じる凹凸に、あの人の姿を脳裏に思い出す。私のそばで生きていた、あの人のことを。
寂しさとか虚しさとか漠然とした不安とか、そういう見えないものの存在を忘れるほど、きっと、あの人が私の心をそばで守ってくれていた。
ふいに、風が吹く。満開になった桜の木が花びらを撒き散らして、美しい花吹雪を起こした。
「ねぇ。見てる?」
そう言って、ゆっくりと墓石を振り返る。静かな沈黙が自分に跳ね返ってくるだけだった。
「嘘つき」
ぽつり、と涙が頬を伝った。
#君と一緒に 「明日も明後日も、その先も」
「幸せを履き違えてるんじゃないですか?」
彼の鋭い眼光が、私に向けられた。欲しいものに囲まれて、たくさんの友達がいて、非の打ち所がない恋人がいる。仕事も上手く行っている。今の私に不満など、あるはずがない。欲しいものは、全て手のなかにあるのだから。臆することなく、私は笑ってみせた。
「なに言ってるの?」
「あなた、幸せを履き違えてるんじゃないですか、と言ったんですよ」
「それはさっき聞いたよ」
「自慢話のつもりですか?」
彼は攻撃的な口調で言った。だんだんと苛立ちを隠すつもりはなくなってきているようだった。けれど、私はどこで彼の地雷を踏んだのかが分からなかった。彼の瞳の奥に宿る熱を、首を傾げてただただ曖昧に受け止めることしかできなかった。
「勝手に私の幸せを決めないでよ」
少し困って見せれば、彼はバツの悪そうに視線を外した。
「物があれば、あなたは幸せなんですか。たくさんあれば、人より優れていれば、あなたは満たされるんですか?」
彼の問いかけにグッと言葉をつまらせる。
何も言わない私に、ほら、と彼が追いうちをかける。
「周りの物や人で測っているような幸せなんて、自分が思い込みたいだけじゃないですか。そんなんで笑ってるあなたを見てると、イライラするんですよ」
呆然と、彼を見つめ返すことしかできなかった。彼の本心を聞いたところで、私はどうしたらいいんだろう。
「私は、あなたの言葉が聞きたいんです」
見透かしたように、彼が呟く。その瞬間、無意識のうちに自分の中にあった幸せという呪縛から、解放された気がした。
彼の頬がわずかに赤らむ。まるで告白じみた言い回しが彼らしくて、思わずふはっ、思いっきり吹き出した。
題 : 幸せとは 「アナタの言葉で聞かせて」
#胸の鼓動
電気を消して、布団に入って、目を閉じる。
視覚をシャットダウンすると、部屋の空気とか、外で走り回るバイクの音とか、新調したフレグランスの匂いとか、他の感覚器官が鋭くなった。
眠る直前までスマホを見ていたからか、脳の思考も活発化してしまった。その証拠にいろんなことが頭の中をぐるぐると渦巻いている。一日の行動をなぞるように、一人反省会。
苦しくなる気持ちを、深呼吸して落ち着かせた。
意識的に、呼吸を繰り返す。
吸って、吐いて、吸って、吐いて。
胸の鼓動を感じていると、独りなのに、心が少し大丈夫になる。
不安な夜もいつの間にか終わってて、朝日が昇る。
それの繰り返し。
#貝殻
砂浜で見つけた綺麗な貝殻。
あの人にあげたいな、って
思う気持ちは
きっと愛だ
いいな、って思ったもの
あの人に見せてあげたい。
こんなにも、素敵なものがあったこと
あの人にも教えてあげたい。
毒にも薬にもならないような、やさしい愛が好き。