#永遠に
水平線に日が落ちていく。焼けるような夕日がギラギラと海に反射すると、たくさんの宝石が散りばめられているかのようで、目を細めた。
「綺麗だな」
隣を見ると、彼が同じく海を見ていた。涼しげな目元をさらに細めて、今にも泣き出しそうだった。
一日の終わりは、いつも胸をギュッと締めつけて切なくさせる。日が沈んでも、明日になればまた日は昇るのに。でも、今日と同じ日は二度と来ない。
今日みたいに、彼と夕日を見ることはないかもしれない。
彼を通りこして、後ろを振り返る。夜空の色がグラデーションを描きながら、私たちを飲み込もうとしていた。
「ずっと、こうしていたいな」
冷たくなった手に、彼の温度が触れた。
ずっと。その言葉を聞くたびに、私は別れを突きつけられたような錯覚に陥る。
『ずっと一緒にいようね』
二人の絆を、愛を込めた愛言葉に含まれた、『ずっと一緒にはいられない』をヒシヒシと感じる。
言葉に意味なんかない、と頭ではわかっていても、無意識的に私の脳裏に過ぎっていく。
この瞬間が、幸せで。今が、幸せで。
幸せだから、いつか必ずやってくる喪失を酷く恐れた。
永遠にはいられない。
少し背の高い彼を見上げた。視線に気づいた彼が、私に微笑みかける。
「そうだね」
私はちゃんと笑えているだろうか。
『幸せ』を感じるたびに訪れる『別れ』が恐くてたまらない。
「ずっと、一緒にいようね」
私が応えると、彼は嬉しそうに笑った。
夜が、もうそこまで来ている。
永遠って、たぶんこんな色だ。
11/2/2023, 6:06:45 AM