#一筋の光
目を覚まして一番最初に飛び込んでくるのが、朝日だって疑うことはなかった。布団のなかで泣いた時も、眠れなくて月を眺めていた時も、暗い夜におちてしまっても、朝はやってくる。それが、唯一の救いだった。
また、長い夜がやってくる。
理由もないまま、太陽が昇って沈むみたいに。あまりに自然に虚しさを引き連れてきた。
普通に過ごしているだけなのに、ずっと夜の中をさまよっているみたいで、泣きたくなる。
些細な言葉に、自分の存在価値を疑って。
自分を貶めるかのように、他者との比較を探して。
全てのことが、どうでもよくなってくる。
お腹いっぱいご飯を食べても、好きな曲を聞いてても、推しを推していても、満たされなくて。
虚しさを埋めようとすればするほど、穴は広がっていった。
今、一生懸命生きていることさえも、どうせ意味のないことだと、どうしようもなく悲しくなる。
悲しい。寂しい。虚しい。虚しい……。
「ありがとね」
ハッとして顔をあげると、老婦人がにっこりと笑っていた。
「ありがとうねぇ。お世話さま」
去り際、もう一度、私に向かって目を細めた。なんと言っていいのかわからなくて、「ありがとうごさいました」と使い回された言葉しか出てこなかった。
仕事だ。やって当然のこと。誰だってできること。私じゃなくても。
それなのに、ありがとうだなんて。
老婦人の微笑みが、乾いた私の心を潤していく。
今、彼女は私を見てくれていた。
私という存在を、この世界で見つけてくれた。
暗い夜に、一筋の光が差す。
そこを目指していくと、また次の光が。
たどっていくと、遠くの空は薄らいでいる。
夜明けは近い。
目が覚めて一番最初に見るのは、最高の朝焼けだって信じてる。
11/5/2023, 1:41:39 PM