ソラシド

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#哀愁をそそる


至るところに孤独はある。日常のふとした瞬間、何気なく見上げた空の色、会話の端々。
楽しいことを見ようとして、寂しさを見て見ぬふりしていた。
だって、そうしないと、心がしんどくなってしまうから。

「私はもう充分持っていて、満たされていて、毎日を生きているだけで素晴らしい存在なんだ」

口に出して言うと、私は猛烈な孤独感に襲われた。
文字で見れば、とても綺麗で、前向きで、明るい言葉たちなのに、私の口からこぼれた声は、涙を含んでひどく震えていた。

不自由なく過ごしている。朝が来て、夜になって、明日があたりまえのように来る。好きなご飯をたくさん食べれて、好きな服を着て、温かい布団で眠れて。これ以上何を望めようか。

でも、こんなにも満たされているのに、心は満たされない。
あるものをたくさん集めても、中身は空っぽのハリボテばかり。

私より、自由がない人がいる。私より、悲しい人がいる。
そんな慰めの言葉でも、ぽっかり空いた穴は塞がらなくて、空を見上げた。

大きく背を伸ばした街路樹の葉が、紅く染まっていた。青々しくて眩しい緑色が、紅色を帯びて薄れている。
いつの間にか、こんなに時間が経っていた。

「私は、しあわせ」

誰に言うわけでもない呟きは、木枯らしにさらわれる。
ただ『虚しい』という感情だけが、私の心に残っていた。

11/5/2023, 6:21:05 AM