ふと、ラジオをつけたら失恋ソングが流れてきた。私には嬉しいことに相思相愛の彼がいるが、というよりいるからこそ、無意識に失うことを恐れているのだ。だから、失恋に関する物を見たり聴いたりすると、自然と涙が出てしまう。
「大丈夫ですよ。貴方が望んでくれる限り、俺は傍に居ますから」
そう言ってソファの隣に座っていた彼が涙を拭ってくれた。いつも幸せを与えてくれる彼から離れたくなくて、腕にギュッと抱きついた。
「絶対離れないでね、私はあなたと共に居ないと幸せになれないから」
「もちろんですよ。俺たちは運命共同体ですから」
私の必死な想いが伝わったのか、彼は頭を撫でるだけでなく、そっと抱き寄せて私を膝の上に座らせてくれた。いつもより甘やかしてあげます、と彼が言うと近くなった私の顔を引き寄せて、そっと口付けをしてくれた。
テーマ「失恋」
私は、自分に正直になることが苦手な人間だ。何か褒められたとしても裏があると思ってしまうし、他人の好意を嫌ってしまう、矛盾が多くて生きづらい性格をしている。こんな私はいつか一人ぼっちになって、誰にも愛されない存在になると思っていた。そう思っていたのだが…
「大丈夫ですよ、俺はずっと貴方の味方ですから。素直に、正直になれるまでずっと見守っています」
そんな私に手を差し伸べてくれたのが彼だった。彼は一途に私のことを愛してくれて、私の気持ちを最後までしっかり聞いてくれる人だった。今では彼の前だけに限るが、正直になれるようになったのだ。
「もしあなたと出会っていなかったら、私は矛盾を抱えながら一人ぼっちになっていたかもしれない」
「ふふ、俺はあなたの役に立つ事ができて光栄ですよ」
私にとって彼だけは素直な気持ちを伝えられる、心の支えになっている存在だ。それに、彼は私の事をしっかりと見てくれているので、性格もよく分かってくれている。
「貴方が優しい心の持ち主であることは、俺が一番よく知っていますから」
そう言って彼は私を一生守り抜くことを誓ってくれたのだった。
テーマ「正直」
雨の日が続く梅雨の時期、雨の日が好きではない私は憂鬱な気分で外を眺めていた。外に出かけるのも億劫になるし、何より低気圧で頭が痛くなるのだ。
「梅雨が始まったばかりだけど、早く明けないかなぁ」
「おや、貴方は雨の日が嫌いなのですか?」
「うん、気分は沈むし、頭も痛くなるし…あなたはどう?」
「俺は雨の日も好きですね。しとしと降る程度なら、雨音が心地良く聞こえますし。それに…」
そう言うと彼はギュッと私を抱き寄せた。突然の事に少し戸惑っている私の様子を見ながら、彼は微笑んで続けた。
「こうして、貴方と共に居られる時間も増えますから」
そう耳元で囁かれて、思わず私は頬が赤くなるほど照れてしまった。クスクス笑いながら可愛いですねぇ、と言う彼から照れ隠しでそっぽを向きつつも、それなら雨も悪くないのかも、と思い始める自分もいた。
テーマ「梅雨」
「あのさ、少し聞きたいことがあるんだけど…」
私は彼に真剣な表情で相談を持ちかけた。彼とは夫婦なのだが、入籍しただけでまだ結婚式を挙げていないのだ。私たちにとって大切な事なので、お互いに真面目な気持ちで考えたいのだ。私からの相談が重要な事だと察した彼も、真剣な表情でこちらを見つめている。
「もし式をあげるならさ、私のドレス姿と白無垢姿、どっちが見たい?」
「うーん…俺はドレス姿の方が好きですけど、白無垢姿も素敵だと思うので、かなり悩みますね…」
彼はかなり悩んでいるようで、うーんと何度も唸りながら考えてくれた。どっちでもいいと返さないあたり、適当に考えているわけではないことが分かる。
「それなら、今度お店を予約して試着しに行こうよ。その時に考えがまとまるかもしれないから」
「いいですね!大事なイベントなので、お互いたくさん考えましょう」
「うん、必ずいいものにしようね」
テーマ「無垢」
終わりなき旅。何もかもが有限であるこの世界で矛盾するこの言葉は何を表すのだろうか。終わりが見えないほど長いものという意味では人生が当てはまり、際限が分からないものという意味では夢が当てはまる気がする。
「やっぱり、終わりがないっていうのは矛盾しているよね…」
「そうですね。結局終わるとしたら、その果てに何が見えるのか…」
お互いにこの言葉に首を捻っていた。何かパッとしないんだよなぁと思っていた時、彼はぱぁっと明るい表情になって言った。
「そんなことより、今日食べに行ったパフェ美味しかったですよね!また行きたいなぁ」
「そうだね、あなたとたくさん美味しいもの食べたい」
「いいですね!ケーキとか、プリンとか、食べたことないスイーツとか…」
お互いに甘い物が好きなので、食べたいものを挙げるとスイーツ系がほとんどになる。彼がいろいろと提案するのを聞きながら、スイーツを食べに行く旅をしたら終わりがなさそうだなぁ、と思った。
テーマ「終わりなき旅」