Sasha

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8/2/2023, 10:24:05 AM

病室に、空調の乾いた音が響いていた。
かたわらには、新生児用の小さい小さいベッドが設置されている。

赤ちゃんは、眠っているのか身じろぎひとつしない。産まれたばかりの赤ん坊が、こんなに眠るものとは知らなかった。

私は四角い窓から真っ青な夏の空を見上げ、生まれて初めて味わう充足感に浸っていた。その後に続く、辛く険しい療育のことなどまったく知らないまま。

【病室】

8/2/2023, 9:22:18 AM

「明日、もし晴れたら山に登らないか?」

「なんで?」

「いや、だって…山が御神体なんだろう?様子を見てみたいんだよ。」

「はあ?反対じゃない?御神体だからこそ、登っちゃいけないものでしょ。」

「え、まさかお前バチとか信じてるの?んなの迷信に決まってるじゃん。」

「あっきれた…。これだから都会人は…。見えないものへの敬意とか、無いわけ?」

「敬意ったって…。」

「とにかく私は登らないから。」

退場

【明日もし晴れたら】

7/31/2023, 10:01:21 PM

「今から行くよ。」

真夜中の1時。電車は動いていないが、バイクで行けば30分だ。

電話の向こうの彼女が心配だった。きっと、酷く傷付いたはずだ。

「いい…。これは、みんな私のせいなんだよ。誰かに慰めてもらって、どうにかなるもんじゃない。だから、一人でいたい。」

絞りだすような声で、しかしきっぱりと君は言った。

「そっか…。」

俺は迷ったけど、彼女の言い分に従うことにした。気持ちがザワザワする。

【だから、一人でいたい】

7/31/2023, 12:55:39 AM

僕は、君の澄んだ瞳を改めてまっすぐに見つめた。君もまた、僕の瞳をまっすぐに見つめている。

茶色い瞳の中の瞳孔まで遠慮なく見つめていると、魂まで同化したような、不思議な一体感を感じる。

僕は君の柔らかい頬にキスをして、それから僕たちはひとつになった。


【澄んだ瞳】

7/30/2023, 8:09:02 AM

船の上には、ほとんど何も残されていない。波がすべてをさらってしまった。

見渡すばかりの海原で、私は思った。私が、あなたを守る。たとえ嵐が来ようとも。
 
だが、そんな思いはこの大自然の中では無為に等しい。そのこともよく分かっていた。

とりあえず私は、厄介な日差しを避けるために、彼を船倉に引きずりこむことにした。

マストがなくても、漂流していたらほかの船が見つけてくれるかもしれない。

それまでは、何としても生き延びるのだ。

水平線の向こうには、噴煙が立ち昇っている。おそらくこの地殻変動は、世界で同時に起きているのだろう。

【嵐が来ようとも】

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