Sasha

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7/29/2023, 2:41:17 AM

「ねえ、お祭り一緒に行こうよ。」

君の誘いに喜んだ俺はバカだった。まさか、学童の子どもたちがこんなに来るなんて、思わないじゃないか。

「遠くにいっちゃダメだぞ!」

一生懸命に声を振り絞るが、10人からの小学生が、大人しく従うわけがない。

やれ金魚すくいだ、やれ型抜きだとあっという間にバラバラになってしまう。

俺は金魚すくいをしている子どもたちを横目に見ながら、綿菓子を買おうとしている女の子の側についていた。

その時だ。花火のドーンという地の底から響くような音が、俺たちを覆った。

「花火だ!!」

子どもたちも、屋台から離れて花火に魅入っている。

「花火見るんなら、あっちの土手のほうがいいよ。」

俺が言うと、子どもたちは騒ぎながら土手のほうに走っていく。

しばらくは、その場を離れないだろう。ホッとして彼女を探すと、ニコニコしながら花火を眺めている横顔が見えた。

「ごめんね、手伝わせちゃって。ありがとう。」

「うん、いや。」

俺は口ごもりながら、彼女の横に立った。花火は続いている。

「東京には明日帰るんだよね?」

「うん。」

寂しそうな横顔を見て、俺は思わず彼女の手を握った。

「!」

しかし彼女は、驚いたように、俺の手を振り払ってしまった。


「ご、ごめん…。」

性急すかざたか。しょんぼりしている俺に、彼女は言った。

「子どもが見てるから…。」

「え?」

それはつまり、子どもが見てなきゃOKってこと?俺は俄然やる気が出た。

【お祭り】



7/27/2023, 12:14:18 AM

「あ、すいません…。」

俺は通行人を避けながら、交差点に落ちていたゴミを拾った。

誰かのためになるならば、と思って続けてきた習慣だが、中には不審者でも見るような、うろんな目で俺を眺める奴もいる。

近所のじいさんは、よく声をかけてくれるが、区の吸い殻パトロールの親父は、ライバルが出現したとでも思うのか、完全無視だ。

小学校の旗振りのオヤジも、俺を見て見ぬふりをする。

「何でそんなことしてるの?」と、明らかに不審の目を向けてくるやつもいる。

だが、俺の毎朝の働きのおかげで、カヤが生え放題だった都会の交差点は、すっかり綺麗になった。

いいことをして何が悪い!と俺は言いたい。善きことに不審な目を向ける奴は、魂レベルが低いんだと思っている。

【誰かのためになるならば】

7/26/2023, 2:23:36 AM

夫が帰る時間だ。私はため息をついた。

あなたに会えなくなって何日になるだろう。まるで何年も会ってないかのように思える。

この鳥かごのような環境に、手を差し伸べてくれた唯一の人。会いたいという思いだけが募っていく。

そんな私の気持ちにはおかまいなしに、日々の仕事は流れていく。

【鳥かご】

7/24/2023, 8:15:08 AM

つつじの花が咲いている。昔通った通学路には、ユスラウメも豊富に実っていた。

つつじの花の蜜もユスラウメも、長い通学路の空腹を満たしてくれるおやつだった。

酸っぱいイタドリや道に垂れ下がっている枇杷も、子どもには格好の獲物だ。私は何だって食べた。

喉が渇いたときに、水道水を飲ませてもらっていた鍛冶屋を覚えている。

中学生になると、自転車を使うことを覚え、道端の植物をむさぼることはなくなってしまった。

さらに高校生になると、小遣いを握りしめてお好み焼き屋や安いケーキ屋に出入りするようになる。

しかしお金のいらない道端のおやつの思い出は、今でも私の気持ちを豊かにさせる。


【花咲いて】

7/23/2023, 4:57:31 AM

もしもタイムマシンがあったなら、私は間違いなく、あの夏の日に行くだろう。

まだ家族がみんなで暮らしていて、誰も何ものでもなかった、あの夏に。

灼熱の太陽のもとで自転車を駆った、あの暑い暑い夏に。

ほんの半年後には、みんな離れ離れになってしまったけど。それでもあの夏だけは、一つになって駆け抜けた。

今なら、どんな未来を選ぶだろう。あの日の私は、今の自分より幸せになっていけるだろうか。

【もしもタイムマシンがあったなら】

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