病室に、空調の乾いた音が響いていた。かたわらには、新生児用の小さい小さいベッドが設置されている。赤ちゃんは、眠っているのか身じろぎひとつしない。産まれたばかりの赤ん坊が、こんなに眠るものとは知らなかった。私は四角い窓から真っ青な夏の空を見上げ、生まれて初めて味わう充足感に浸っていた。その後に続く、辛く険しい療育のことなどまったく知らないまま。【病室】
8/2/2023, 10:24:05 AM