リバース リバース リバース
白は黒へ 黒は白へ
置き方一つで 世界は変わる
リバース リバース リバース
緑の盤上で 白と黒
貴方と楽しい知恵比べ
リバース リバース リバース
多勢に無勢も裏返る 盤上で
リバース Reverse Rebirth
世界が生まれ変わっていく
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Reverse─裏返し
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盤上における心の読み合いは
時として互いに異なる景色を見てしまう
自分にとって大したことない一差しが
相手にとってとんでもない一差しであったり
くるり くるりと変わる白黒の世界で
相手の心を読みあい
一差し、二差し、
心が満ちるにつれ
手の内は、空っぽになる
キレのある一差しも
相手を出し抜く事も
悪戯も思い浮かばない
ただ、満ちた思いと言葉だけが降り積もる
悪意なき一手が投了へと繋がるならば
盤上での思いは胸に秘め
笑顔で握手してお別れを
記憶の片隅に名前だけが残れば
それで良いのだから
鳥のように空を飛べたなら──と想像してみる。
公共交通機関にありがちな渋滞や、待ち時間が無いのは魅力的だ。
自力故に、移動費がかからないという点も良い。
人混みもなく行けるのは、さぞや爽快だろう。
ストレスなし・金銭不要・爽快感あり。
良い事尽くめではないか。
何だか、鳥が羨ましく思えてきた。
現実的な実利以外でも、
鳥というのは羨ましい面がある。
例えば、
空へ向かって鳥が羽ばたいていく──。
この一文だけでも、絵になるではないか。
文字の世界に於いてまで、意味深なカッコ良さがあるのだからますますニクイ。
人間ではなく、鳥になるべきだったのだろうか。
そこまで思ってはたと気付く。
──あ。
──自分、高所恐怖症だった。
高い所に行くと、どうしてだか目眩がする。
それだけでなく、謎過ぎるほど足がガクガクして、体にまで力が入らなくなる。
そんな状態のものが、飛ぼうとしたらどうなるか。
答えは一つしかない。
飛ぶ前から、墜落だ。
命の危機ではないか。
無理。高い所、マジで無理。
…。
どうやら、自分は鳥にはなれない。
人間という形が最適解であると再認識した。
鳥のように飛ぶことは、百年早い──
いや、死んでも無理かもしれない。
さよならを言う前に、メールを一通送る。
一見、何の変哲もなく、飾り気もない言葉。
その言葉の裏に隠した本当の心を
貴方は見つけてくれるかしら?
時津風が、波止場の小舟を揺らした。
真艫を受けた小舟は、風に誘われるがまま大河の入口へと向かう。
大河の入口までもう間近という時、小舟が止まった。
小舟の先に繋げられた舫綱がミシミシと鈍い音を立て、岸から離すまいとしている。
その光景にどうしようかと迷いながらも、劣化でささくれ立つそれを取り敢えず握ってみる。
舟と風の重さがのった綱が、ギリギリと手に食い込んでいく。
痛みに顔を顰めていると
「もうその網は使い物にならんぜ」
いつの間にか現れた金の妖が、側で笑っている。
妖の長い金の鬣が風に煽られ、周囲に金色を撒き散らす。
「良い風じゃねえか。今なら舟に間に合う。この風にのりゃあ遠くへ行けるだろうよ」
金の妖はそう言うと、緩慢な動作で空を仰いだ。
妖に釣られて空を仰ぎ見ると、どこまでも澄んだ青空が広がっている。
天気上々、吹き抜ける風、良好。
金の妖の言う通り、今が乗り時なのだろう。
そんな事を思いつつ空を見上げ、風に身を任せていると、体の内側が澄んでいくような感覚がする。
「乗りてぇ風ってのはコレじゃねえのか?」
金の妖が笑いながら問いかけてくる。
ああ、どこまでも見透かす妖め。
「…乗りてえ風に、遅れたヤツは」
ポツリと呟くと、
「間抜けってんだ」
金の妖が言葉を引き継ぎ、ニヤリと笑った。
妖が笑むのと同時に、手の中の綱を杭から引き千切る。チクチクと痛む綱を握りしめ、綱の先にある小舟へと向かった。
踝が浸かるほどの浅瀬を小走りで駆ける。
パシャパシャと軽やかな音は次第に消え、重たい水の塊が太ももを叩き、終には腰の高さまで迫る水が行く手を阻む。
前へ進もうとする体を押し留めようとせんばかりに、波のような水が体を襲ってくる。
手から綱が離れ、絶対絶命と思った瞬間。
伸ばした手が小舟の縁を捉えた。
水を含んで重い体を持ち上げ、舟に雪崩込む。
息を整える暇もなく、舟の端へと向かう。
舟の先には、岸を恋しむかのように綱が風に揺れて、川面を叩いている。
濡れ鼠となっていることも忘れて、無我夢中で小舟からソレを取り外した。
もう役に立たないソレは、所々が解れて見窄らしい。河へ向かって思いっきりソレを投げ捨てると、ポチャンと軽い音がした。
劣化した綱は、暫く川面をくるくると漂っていたが、河の渦に巻き込まれ、姿を消していった。
その光景にほっと息をつき前を向くと、
「じゃあな、行ってきやがれ」
金の妖の声が、背後から響いた。
一人を乗せた小舟が、大河へ向かって進んでいく。
天気上々、気分快晴。
前途不明なれど、迷いなし。
吹き抜ける風に、小舟は大河の流れに乗ったのだった。
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空模様
鏡を見ると
鏡の向こうに、世界が広がっているのではないかと想像してしまう。
虚像の自分が住まう、無数の平行世界──パラレルワールドが広がっているのではないかと。
パラレルワールドの世界では、様々なルートが存在している。
これから起こり得る未来だって、もしかしたらそこには存在しているのかもしれない。
だから、鏡の向こう側へ
「こちらのルートは、玉石混交なれど笑顔あり。小さな幸せに満ちているよ」
そう、微笑みながら報告する。
私の笑みにつられた鏡の向こうの私(虚像)が、笑みを返してくる。
パラレルを行く私の元にも、きっと笑顔が届いたのだろう。
パラレルの世界は、時空さえも軽やかに超える。
今が幸せであるならば、それは過去や未来、どこかしらで答えとして現れてくる。
ほら、
現に今だって──
ココでこうして貴方に出会えている。
この奇跡こそが、答えだ。