一年後(゜゜)…一年後?
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まだ、数週間先のことだが、
今月の二十一日で、このアプリを使い始めて一年を迎えることになる。
飽き性がよくもまあ、続いているものだと他人事のように思う。
当初は数日続けようと思っていた。その後一週間。折角だからと一ヶ月。二ヶ月。案外続くなと六ヶ月。気が付けばもうすぐで一年になろうとしている。
♡の数も当初からは考えられない程になり(♡をくださる皆様ありがとうございます)、自分のアカウントとは思えないこともしばしば。
当初想定していなかったことが連続しているこのアプリ。果たして、一年後もここで文を書いているだろうか。或いは…。
…未来は、いつでも白紙の切符。
明日の行方すらわからないのだから、余計な思考はやめておこう。
取り敢えずこれからも、一日一日テーマに向き合っていけば良い。
ベイビーステップで、のんびりと──。
そうしていれば、案外一年後もここにいるかもしれない。
初恋の日?
調べたところ、10月30日が初恋の日らしい。
今日は5月7日なので、初恋の日までまだ遠い。
自分自身の初恋もまだ遠く、今生で体験出来るかどうか…。
まぁどんな人生であれ、自分らしくあれれば良い。
失敗も成功もまた等しく人生なのだから。
明日世界が終わるなら…。
今日は物語ではない方が良いか。
さて。
人の寿命は普段わからない。
けれど、明日世界が終わると決まっているなら
この世界中に存在する人皆、等しく明日までの命となる。
それに伴う感情は言うまでもなく人それぞれだ。
喜ぶ人もいれば嫌がる人もいるだろうし、静かに迎える人もいれば最後だからとはっちゃける人もいるだろう。
沢山の選択肢の中で、自分はどんな選択をするだろうか。
多分仕事には行かず、普段の休日と変わらない事をする気がする。
家で好きな音楽を聞いて、好きな本を読んで、好きなお茶を飲む。
出来れば、世界が終わる日は晴れていて欲しい。
青空が好きだから、綺麗な空の色をこの目に焼き付けておきたい。
世界が終わる日の時間まで決まっているなら、最後にかける音楽は決まっている。
自分の葬式の時に流して欲しいと思っている曲をかけて、最後の瞬間を迎えたい。
最後の時は、苦しみなく一瞬でこの世界から消えてしまえたら尚良い。
ふふふ。
こうして考えると、あれこれと注文がやかましい。
注文=願望とするなら、願望の正体は欲だ。
もし、本当に明日世界が終わると決まったなら、人の根底にある欲が溢れかえるのだろう。
歯止めのきかない欲の狂乱こそ、本当の世界の終わりなのかもしれない。
長くなってしまった…(´・ω・`)
でも、書きたい部分が書けて満足(*´ω`*)
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人事異動の内示で、研究所に入社三年目の女性が入ってくることは知っていた。
今まで男性社員が入ってくることはあっても女性というのは初めてだ。
僕は、小さく華奢な女性を前に緊張していた。
彼女も緊張しているのか、或いは、研究所の割にお粗末とでも思っているのか──大きな目はキョロキョロと落ち着きなく研究室内を彷徨っている。
過去配属されてきた人たちにも散々言われたので、目の動きだけでなんとなくこのどちらかだろうと想像がつく。
余計な能力がついてしまったものだ。
内心で自己分析という名の逃避行をしても、心臓はまだバクバクと音を立て落ち着かない。
二人しどもどしながら、なんとかセオリー通りの挨拶を済ませる。
名前を名乗るだけなのに、どうしてこうも緊張するのだろうか。
でも、今回は噛まなかったし、これでご挨拶の儀式は完了だ。
ほっと息をついていると、それまで静かにしていた彼女が意を決したように言葉を発した。
「あの、…博士、ですよね」
博士?僕は所長と言ったはずだけど…。
首を傾げて疑問符を浮かべていると、彼女は慌て付け足した。
「あっ、あの。昔、ホームページで、夏休み企画で」
夏休み企画?夏休み…。
頭を捻り、昔の記憶を漁っていると企画書が映像になって現れた。
ああ!思い出した!
随分昔に受けた広報からの依頼だ。
確か、「夏休み企画!自由研究のお手伝い」とかいうタイトルが付いていたはずだ。
各研究所から一人選ばれて、文章を寄稿するというものだった。
しかし、蓋を開けてみると子供向けとは言えないような研究の話だったり、開発中の秘話であったりと本来の企画意図より自由に発展していた。
「色水を作ろう」なんて子供向けを執筆したのは、自分一人だけだった。
しかも、広報の悪戯なのか遊び心なのかそれぞれの名前の後ろに「博士」と付いていたのも思い出した。
周りがしっかりした文章の中かなり浮いていているだけでも大ダメージなのに、「博士とは!?」と羞恥に身悶えた記憶も蘇ってくる。
今すぐにでも過去の記憶に身悶えたいが、そんな事をしたらヤバい人だ。状況を考えろ。我慢だ。我慢だ自分。
グッと恥ずかしさを堪えていると、彼女はキラキラとした目で僕を見てきた。
「あの時の博士の文章わかりやすくて、花に興味を持てたのは博士のお陰なんです!一回きりしか登場しなかったの、寂しかったんですよ!」
興奮しているのか、頬を上気させ身振り手振り熱弁している。
まだ彼女の言葉は続いているが、頭に入ってこない。
羞恥の思い出しかなかった僕の文章が、誰かに届いている上に覚えてもらっている。しかも、良い方向に作用している。
どうしよう。
胸がぐっときてしまって言葉にならない。
なんか、泣きそうだ。
じんわりとした胸の温かさに浸っていると、彼女が恐る恐るといった感じで尋ねてきた。
「あの、所長ではなく、博士と呼んでもいいでしょうか」
「えっ」
「あっ、すみません!変なこと口走りました!ごめんなさい。忘れてください」
彼女は顔を真赤にすると、どんどん声が小さくなっていく。気のせいだろうか、体も小さく縮こまって見える。
その姿に過去の自分の姿が重なって見えた。
「いいよ」
「えっ」
「君の好きに呼んで」
僕の言葉に彼女の目はキラキラと輝きを取り戻し、宝石の様に輝いた。
「ありがとうございます!博士!」
そう言って彼女は、弾けんばかりの笑みを浮かべた。
まるで太陽に向かって咲き誇る向日葵のような笑みだった。
ピピッピピッピピッ
時計が鳴っている。
布団から腕だけを出し時計の頭を叩く。
僅かな残響を残してアラームが止まった。
のそりと頭を動かし、霞む目で時計の数字を追う。
午前五時。起床の時間だ。
随分懐かしい夢を見ていた。
彼女が研究所に来たのは、二年前だ。
二年という時間経過の事実に実感がわかないのは、年のせいだろうか。
もし、君と出会っていなかったら…。
起き抜けの頭は、先程の夢から離れられないようだ。彼女の顔を思い浮かべながら、もしもを考えてしまう。
君と出逢っていなかったら、僕は博士と呼ばれることはなかっただろう。
三時の休憩が楽しいことも知らず、研究だけが生き甲斐で、身体のことなんか考えもせず徹夜も平気でして、体を壊していたかもしれない。
想像に難くない有り得た未来に苦笑が漏れる。
それと同時に眉をしかめた彼女の顔が浮かんだ。
ごめん、そんな顔しないで。
彼女は頬をぷっと膨らませ、子どものような拗ねた顔をすると、姿を消してしまった。
君と出逢って僕は、今の僕になったんだ。
君が博士と呼んでくれるから、僕は博士でいられる。
来る未来は、過去研究所に配属されてきた人達が選んだ道のいずれかへと繋がるだろう。
それまで僕は、君の博士でいられれば十分だ。
僕は勢いよく布団から起きると、朝の支度へ取り掛かった。
耳を澄ますと…( ˘ω˘)
「最近文字数多すぎ。悪い癖が出ているわよ」
…初代の声だ。
確かに、最近文字数が多くなっている。忠告有り難く受け取っておこう。気をつけなくては。
「うーうー。僕は…、僕は…」
続いて聞こえてきたのは、一人混沌の海で苦しんでいる博士の声だ。
普段は穏やかで理知的な博士だが、助手からの過剰評価と自身の脇の甘さ、そしてよくわからない感情に、ほとほと困り果てているようだ。
博士は、つい、からかいたくなってしまうキャラクターをしている。けれど、混沌の海に溺れたままはいくらなんでも可哀想だ。
さて、どうしようか。
思案しようとした瞬間、荒れた声が響いた。
「俺達の場所に入ってくんじゃねえ」
屋上組の彼が、珍しく怒りを露わにして息巻いている。
冷めた感覚の持ち主なのに、こうも怒るとは珍しい。
ふむ。
穏やかで理知的と設定した人が混沌の海で苦しみ、普段冷めた感覚と設定した人が激昂している。
本来私が意図したところとは別に、キャラクターが個性を持つようになってきたようだ。
ともすれば、こちらがいくら意図を持ったとしてもその通りに動いてくれないのは、仕方がないことなのかもしれない。
彼ら自身で表現したいことがあるのだろう。
ならば、私は耳を澄まし、彼らの声を拾い上げれば良い。
そんな創作も面白そうではないか。