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3/18/2024, 12:16:51 PM

不条理。

この文字を見た瞬間、胸がざわついた。
ソレはどこか、暗いものに触れた瞬間と似ている。

頭の中では理不尽と言う言葉も浮かんでくるが、果たして意味はどうであろうか。
まずは、意味調べといこう。

不条理──物事の筋道が通らないこと。
     道理に合わないこと。
     実存主義的な考え方で、人生に意義を
     見いだすことの出来ない絶望的な状況を
     言う語。

理不尽──物事の筋道が立たないこと。
     道理に合わないこと。

実存主義──人間を主体的・自覚的な存在として
     とらえ、その視点から現実の人間的実存を
     明らかにしようとする思想的立場
     人間が自らの存在を定義し、
     自由に生きることを強調する哲学
     例:我思う、ゆえに我あり
     
なるほど。
こうして比べてみると、不条理の方がより重たいを意味を持っている。

さらに踏み込んで実存主義と不条理の関係も調べてみたが、なかなか面白かった。
実存主義の中でも、不条理に対して意見が分かれている。
「不条理を受け入れて生きる」という人もあれば、不条理を受け入れて生きることは「悪魔に取り憑かれた狂気」という人もある。

哲学の先生様達でさえも、不条理には手を焼いているといったところだろうか。

不条理は人間が起こす場合もあるが、
そればかりではない。
地震などの自然災害も不条理の中に含まれる。
(悪意もない)自然によって、無辜の魂が奪われる。これを不条理と言わず何と言うのだろうか。

凡人ではどうすることも出来ない、圧倒的な力のようなものが不条理にはあるようだ。

胸がざわついた原因は、コレだったらしい。

不条理の持つ、重く暗い原因がわかったところで、少々魔法の言葉を使用しよう。
私が気に入っている魔法の言葉だ。
それは「ただ、ある」。
この言葉は、自分と物事を切り離してくれる。
上手くいけば、バリアの役割も果たしてくれる。
使う時のポイントは、存在を認めても、心は動かさないこと。評価しないこと。

不条理という強い力が前では、逃げるくらいしか出来ないかもしれないが。

「不条理という、ただ、そういったものがある」

さあ、不条理に捕まる前に逃げよう。

3/17/2024, 12:46:25 PM

さて、今日のテーマは【泣かないよ】。

子供が強がっているような、そんなイメージが浮かぶ。
可愛い感じだなぁ。

ここのところ物語を作っているので、今日は雑談系にしようかなぁなんて思っていたけれど、テーマ的には物語向きだ。

さて、どうしよう。

昨日は暗めだったから、今日は軽いタッチにしよう。

────────────────────────
「あっ!」

隣の席から上がった突然の大声に、私は肩をビクリと震わせた。

私と博士しかいないラボは、小さな声でもよく響く。

次いで
「あぁ〜」
と気の抜けるような声があがった。

入力作業の手を止めて隣を見ると、パソコンを前に突っ伏す博士の姿がそこにはあった。

おでこと机が仲良くくっついてしまっている。

なんだっけ、このポーズ。
およそ中年男性というカテゴリーから外れた所で見た気がする。
確か、癒やし系的な…。

ああ!ごめん寝だ。

猫ちゃんや子供以外で初めて見た。
いい歳をした男性がこのポーズって、なかなかアレだ。

そんな事を私が思っている間にも、ごめん寝のポーズのまま博士は何事かをモゴモゴ言っている。

博士、何言っているかわかりません。

「どうしたんです?」

何でこうなったかはわからないので、取り敢えず刺激しないように優しい声を心がける。
普段の博士は温厚な人物だ。怒っているところなんて見たことがない。
それでもアクシデント時は、何が本人にとって刺激になってしまうかわからない。
博士の機微を察する事こそ、良き助手というものである。

私の声が届いたのだろう。
博士から、ギギギッと錆びたロボットのような動きが返ってきた。

ロボットなら注油すればいいけれど、人間の場合はどうすればいいのだろうか。

思考に囚われそうになった瞬間、自力で錆に打ち勝った博士と目があった。

目の下のクマが凄い。

中年にしては円らな瞳をしている博士だが、今は死んだ魚のような目をしている。

「どうしたんです?」

「…ああ。…。…うん…」

モゴモゴと口の中で言葉を濁している。
目もキョロキョロと落ち着かず、意味もなく宙や床を見ている。とても気まずそうだ。

「Errorでも出ちゃいましたか?」

博士の肩がピクリと動いた。
適当な推察だったが、どうやらビンゴのようだ。
この落ち込みようだと、Errorから強制終了でも食らってしまったのだろう。

「バックアップファイルはありますか?」

博士の首が力なく左右に揺れる。

バックアップが無い…。もし、データが壊れたら1から作り直しだ。ファイルが壊れていないことを祈るしか無い。
最悪を考えるのは後にしよう。
ファイルが生きていると仮定して、最終保存時間が今日のいずれかの時間ならば、失ったデータは数時間分だけで済む。作り直すのはそこまで難しくないだろう。

「…最後に保存したのは、いつですか?」

「…3日前」

ラボの空気が固まった。

そういえば忘れていたけれど、博士は夢中になると止まらない人だった。
思えばこの3日間、帰り際に声掛けても反応がなかった気がする。
まさか3徹してるなんて、知らなかった。

ファイル、壊れてたら1からやり直しかぁ。壊れてなくても3日分の作業のやり直しなんだ。へぇー。

そのまま現実逃避をし続けたかったが、私は博士の助手である。
有能な助手スイッチをONにしなければ。
現実逃避する頭を無理やり押さえ付け、私はスイッチをONに切り替えた。

出来る助手たるものまず必要なのは、観察だ。
先程まで落ち着きのなかった目は、若干潤んでる。
口元はキュッと結ばれている。
肩は下がり、手足に力はなく、項垂れた様子でオフィスチェアに身を預けている。

えっと、こういう時は…。

「…博士」

「…うん。なーに?」

「泣かないでください」

「…うん。…うん。…泣かないよ…大人…だからね」

蚊の鳴くような声でうわごとのように呟くと、博士は再びごめん寝のポーズに戻ってしまった。

3/16/2024, 2:06:48 PM

怖がり──ちょっとしたことにも怖がること。
     また、そのような人。

怖がりな人の特徴──想像力豊か、トラウマがある
          小心者で気が小さい、etc。

…なるほど。
今夜は、怖がりから恐怖へ。恐怖の文字に触れず恐怖の心理に触れてみよう。
────────────────────────

深夜、人通りのない道を一人歩く。

──こんなはずではなかった。

疲労で霞む頭がぼやいている。

本来であれば、まだ明るい夕飯時に帰れるはずだった。
しかし、就業間近にまさかのトラブルが発生した。それだけでも肝が冷えるというのに、そのトラブルがさらなるトラブルを発生させるという、非常に笑えない自体となった。
トラブル処理に奔走し、何とか両方のトラブルを収めることは出来たが、この有り様である。
何が悲しくて、こんな真夜中に一人歩かなくてはいけないのか。

──こんなはずではなかった。

安月給の身では、駅近の物件に住むことは出来ない。
駅前商店街を抜け、住宅街を通り、寂寞の僻地といもいうべき場所に我が家はある。

かつての農道の名残りがある道は嫌に狭く、くねくねと蛇行を描く。自分はこの道が嫌いだ。特に夜は大嫌いだ。

疎らな街灯は手入れが行き届いていない為に薄汚れ、チカチカと不安定な明滅を繰り返している。

壊れたストロボの様な明かりに、今夜もまた古いホラー映画が重なった。

白黒不明瞭な世界に長い黒髪の女が一人立っている。長い黒髪の間から恨めしげにこちらを見つめ…。

なんていうものを思い出させるのか。
トラブル続きで疲れた脳ミソは、余計な事しかしない。

忌々しげに思う一方で、心臓がキュッと握りしめられたように苦しい。
心臓を庇おうとした指先も氷のように冷たい。

ドキンドキンと嫌に自分の心臓の音が響いている。激しい運動をしたわけでもないのに呼吸がままならない。
ゾワゾワとする背中も気持ち悪くて落ちつかない。

視界は、白、黒、白、黒。
壊れかけの街灯が、壊れたストロボの世界を連れて来る。

恨めしげな目をした女は確か、あの後…。

白黒に傾く世界で、無数の黒く冷たい手が、闇の中から現れた。

二の足、腹部、背中、そして、心臓。
絡みつき、臓腑を冷やしてもまだ飽きたらないその手は、深淵へと引き摺り込もうとしている。

そう自覚する理性の存在に気がついたのか、絡みつく手とは別に闇の中から新たな手が伸びてきた。

無数の手によって動けない体を前に、最後の砦を壊さんと黒い手が緩慢な動作でやってくる。

慈しむかのように頬を撫で、その手が目を覆った。

3/15/2024, 2:57:14 PM

星が溢れる…。

うーん、実に情緒的。

情緒には情緒をお返ししたい所存だが、
…難しいな。

星…。星。

────────────────────────
「君の身体を構成する元素は、人から見れば悠久とも言われる時間、宇宙を旅してこの地球へと辿り着き、君の中へ宿った。己の中に悠久の時を知るものが宿っているだなんて、ロマンがあると思わないか」

双子座流星群の夜。
天体望遠鏡をセットしながら、貴方は言った。

機材の代わりに手渡された星座早見盤を片手にぼんやりと星を眺めていた私は、間抜けな声を上げてしまった。

作業が終わるまで話しかけられないだろうなんて油断をしていたから、頭と言葉がまだ追いつかない。
もらった言葉を咀嚼しようとした瞬間、甲高い金属音が耳を打った。

コロコロと転がったネジが、自分のつま先にコツンと当たって止まる。
どうやら先ほどの金属音はこのネジが上げた悲鳴らしい。
ネジが転がってきた先にいる貴方は、鏡筒を片手に微妙そうな顔をしていた。

悴んだ手ではネジを回すのも一苦労なのだろう。
いつも以上に不器用な動きをする指に苦笑しながら、グーパーを繰り返すその姿は、先ほどの言葉を言った人と同じとは思えない。

足元のネジ(多分、鏡筒固定ネジ)を拾って差し出す。

「ありがとう」

はにかみながらネジを受け取った貴方の瞳の中に光が流れた。

空を見上げると、沢山の流星群が空を駆けている。
冬の澄んだ夜空に光の軌跡を描いては儚く消えていく。
時に力強く。時に繊細に。
長い旅の果に辿り着いたこの青い惑星に証を残すかのように、美しい光の奇跡がそこにはあった。

儚く消えた星の原子は、この青い惑星に留まるのだろうか。
もし、留まったとしたならば、この青い惑星で他の分子と混じり合い、新しい命となっていくのだろうか。
そうして出来た新しい命は、この世界を循環し、私や隣り合う貴方とも出会うのだろうか。
途方もなく、長く短い出会いを何度も何度も繰り返していくのだろうか。

果てない旅路の軌跡と奇跡を思うだけで心が震え、涙が溢れた。

頬を伝う涙に手が触れようとした瞬間、白いハンカチが頬を包んだ。

「星が溢れてる」

光の軌跡を背に貴方が優しく微笑んでいた。

3/14/2024, 12:55:20 PM

安らかな瞳

…安らか。
…。

ちょっと意味を調べよう。

安らか:何事なく平穏無事であるさま。
    何の心配もなく心が穏やかなさま。

…なるほど。
安らかな瞳=穏やかな瞳、ということか。

…昨日書いた物語とニアピンな感じだ。
昨日の物語は今日生まれるべきだったのかPart2…。
…。
くだらないことを言っていないで、テーマに向き合おう。そうしよう。
今回のテーマは、物語向きだと思う。
物語を打つとしたら…。

────────────────────────
初めて君に出会った時、花のような人だと思った。

周囲を明るくするような笑顔に、鈴のような声。

穏やかで理知的な君の姿に、ひだまりで人を迎え入れる花々が頭の中を巡った。

蒲公英、白詰草、フリージア、ネモフィラ、向日葵、コスモス、ダリア、薔薇。

どの花もあまりに君にピッタリ過ぎて驚いた。
それと同時に、近寄り過ぎてはいけないという自分の声を聞いた。

自分にとって、花は清らかなものだ。
清らかなものは、神聖に繋がる。
花のような君の神聖さを保つには、壁一枚越しにそっと見るくらいが丁度いい。

だから、近寄り過ぎない。

そう、決めていたのに。

君の作るひだまりの世界はどこまでも穏やかで、色鮮やかだった。
初めは壁一枚越しから見ているだけで十分だったはずなのに、いつからかそれだけでは満足できなくなっていた。

そんな事を思っていたからだろうか。
それとも、もう少し…なんて欲をかいたからだろうか。
気づいた時には、壁から出てしまっていた。

慌てて壁に戻ろうとしたけれど、どうやら遅すぎたらしい。

君の安らかな瞳に、恥じ入る自分の姿が写っていた。

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