小さな頃は目に映る全てが不思議でたまらなかった。
どうして雨はふるの?どこから来たの?どうして何度もふったのになくならないの?
どうしておひさまを見てたらダメなの?どうしておひさまを嫌うひとがいるの?
どうして、なんで?
ひとつずつ積み上げたそれはいつか当たり前になって、口にする機会も減ってしまった。
世界が進むだけ、私の不思議は知識へと変わっていく。
疑問を解く。謎を明らかにする。
前へ、前へと進み続ける。
そして、時々あるがままを受け入れる。
私のわからないは、きっといつかのどこかで明かされる。
どうして?
たずねる声が尽きない限り、その道も力も尽きることがないと知っているのだから。
朝が来なければいい。
大切な仲間たちと語り合う将来は希望と夢が詰まった素晴らしいものだ。
どこまでも続く未来は果てのない海原のようで、輝く太陽を目指すようで。
現実から切り離されたその先こそが私の欲しいものなのに。
太陽なんて昇らなければいい。
未来なんて無くなればいい。
私は彼らと、終わらぬ箱庭で尽きぬ夢を見続けたいんだ。
そんなことすら夢なんだと、自分は知っていることがこんなにも悲しいなんて。
終わらなければいいのに。
つぶやく言葉に返事は無い。
悲しいくらい楽しくて、憎らしいくらい愛しい時間が終わってしまう。
大人になれば忘れてしまうかもしれないこの一瞬がとても大切で、誇らしくて、ああ、どうして。
このじかんが、おわらなければいいのに。
叶うはずもない願いばかりを何度も言葉に乗せていた。
いつも小さな箱を部屋の隅に用意している。
私にとって大切なものをしまい込むためのものだ。
中身は小さなシールだったり、プレゼントのリボンだったり、ほんのささやかなものだ。
きらきらとして可愛らしいそれらを、時々箱から取り出しては眺める。
それぞれが思い出の詰まったものだから、箱を開けるたびにその時のことを思い出す。小物と一緒に思い出をしまい込んでいるようで、開けるたびにわくわくしてしまう。
私だけの宝箱、私だけの宝物。
私だけが知っている、密やかな宝だ。
蝋の溶けていくさまは結構好きだ。
じりじりと微かな音を立てて芯が焦げていく様も、溶けた蝋がしたたり落ちていく様も、どこか儚く幻想的に見える気がする。
揺らぐ炎は時折色を、形を変えて消えてしまうその時まで小さなひかりの輪をつくる。
それを、目が眩んで光の影が目の中に残るまで見つめているのが、特に好きだった。
あかりの下で目に焼き付くあの光が、今も一等、すきなものだ。